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悪役になりたい王子の国づくり  作者: プルル二世
第一章
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王族

 第二王子のサイス兄さんは困惑している。無理もない。本人からすると、意味も分からずに民衆から非難されているのだから。

 ただ、同情の目を向ける民衆は一人もいない。

 第二王子を推薦する者として、貴族の一人が出てきた。その貴族が演説をしている間にも、民衆からの非難は続いた。


「なので、皆さんからの一票を・・・」


「下がれ、下がれ!」


「「そうだ。そうだ」」


 演説が終わるまで非難の嵐が起こっていた。とても王族がいるとは思えないような光景だ。普段の生活で、こんなことがあれば不敬罪として咎められてしまう。

 しかし、今は王位戦の最中だ。この期間の王族への非難は、ある程度許されている。

 第二王子が民衆の前から姿を消すと、再び民衆は静かになった。

 

「クソッ、どうして僕が、こんな目に・・・・・・」


 サイス兄さんから漏れ出た言葉が聞こえてきた。

 このタイミングで、サイス兄さんを気遣う者など彼の周りにいる者たちしかいない。兄妹たちは、サイス兄さんに起こったことを好機と見たに違いない。

 決して良いとは言えない雰囲気の中、第三王子のギール兄さんが民衆の前に立った。

 数分前とは打って変わって、民衆たちは大いに沸いた。


「俺が、第三王子のギールだ。今から、このおっさんが話をするから静かに聞いてくれ」


 ギール兄さんを推薦する者として、年老いた男が登場した。

 民衆の半分以上が、年老いた男の登場に疑問を抱く表情だった。だが、男が名乗った瞬間、分かりやすく驚いた反応をした。

 皆が驚く男は、この国で宰相を務める人間だ。普段は、滅多に顔を見せることがない。そのため、名前しか知らない民衆の方が多数だ。


「私は、彼を王に推薦することにした。王に求められるのは、人を統率していく力だ。君たちも知っているかもしれないが、彼は武力と知力で高いレベルを有している。そんな彼が王になるのを想像してみてくれ」


 流石は、国の宰相を務める男。話す内容もそうだが、話し方が上手い。どうすれば人に興味を抱かせ、盛り上がってもらえるのかを理解している演説だ。

 民衆たちの反応が、それを示している。

 宰相の演説が終わると、今日一番の拍手が送られた。

 拍手の余韻が残る中、出てきたのは第五王子のグレントだ。第五王子を推薦する者は、事前の調べ通り、下級貴族の一人だった。


「お、お前たちは、グレント王子に投票すれば良いんだ!そ、そうしたら、我輩とグレント王子から、褒め言葉の一つでも送ってやるよ」


 宰相の演説とは対極で、最悪な演説の見本のようだった。そんな演説を民衆が真面目に聞くわけがない。それでも、男は話し続ける。

 非難をされることはなかったが、拍手の一つもなかった。

 長く感じた演説が終わると、満足そうに民衆の前から立ち退いていった。


「グレント王子、完璧でしたよ。これで確実に勝ち抜けですね」


「当然だ。俺の威厳に圧倒されて、民衆は終始黙っていたからな」


 演説を終えた直後の、二人の会話が聞こえてきた。自分自身に、相当の自信を持っているようだ。

 そして最後の、俺の順番へと回ってきた。それに合わせて、彼女がやってきた。

 

「お待たせしました」


「来ていただいて、ありがとうございます」


「いえ、私たちが受けた恩を返すためにも、これくらいのことは、やらせてください」


 俺を推薦する者として、隣国の第一王女であるミーシア王女に来てもらった。事前に、『影』たちを通じて頼んでいた。だが、ここまで簡単に一国の王族が来るとは思っていなかった。

 あの時のことに、よほど恩義を感じているのだろう。

 そんな彼女と共に、民衆の前へと立った。  

 数えきれない程の視線が一気に向けられる。


「皆さん、初めまして。隣国のユーリシア王国からやってきた、第一王女のミーシアです」


 真っ先に、ミーシアが民衆へと挨拶を行った。名前を聞いて、彼女が誰なのかを理解したようだ。隣国とは言え、王族ともなれば、この国にも名は知れ渡っている。

 他国の王族が来て、驚かない者の方が少ない。

 そして何より、ミーシア王女に対する好感度が高く、人望の厚い人物である。

 

「アレン王子は、ここにいる大半の方々よりも年が下ではあります。しかし、彼の考えることや行動力は、私たちの想像を越えてきます。現に、今この場に私がいるのも、その証だと思います」


 長いこと話を続けた。だが、彼女の話を退屈そうに聞く者は一人としていなかった。

 最後には、宰相の時に負けないくらいの拍手が送られた。

 彼女の演説を、俺は側で聞き続けていた。だからこそ思う。流石だと。

 会っている回数は僅かな筈なのに、常に俺を見てきたかのような演説だ。一つの恩だけで、ここまでのことをするのには、王族としてのプライドがあるのだろう。王族としての在り方としては、彼女が正解なのかもしれない。

 そんな彼女に推薦される者として、俺が思う正しい王族の在り方でいよう。それが、悪であっても、善であっても・・・・

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