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悪役になりたい王子の国づくり  作者: プルル二世
第一章
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第六王子アレン

 王子として生まれ変わって、七年の年月が経過した。

 俺は七歳となった。七年も経てば、前世と大きく違う自分の容姿にも慣れてきた。この七年間は、ひたすら本を読み漁った。この国の歴史や、魔力についての本を中心に。五歳になるころには、喋ることも可能となった。

 俺が喋れるようになって真っ先に行ったのが、自分の侍女や護衛の騎士を外すことだ。理由はシンプルで、俺が信用する者にしか任せるつもりはないからだ。当然、周りからは奇異の目で見られるようになる。しかし、そんなことは一切気にしていない。

 だが・・・・・・


「人手が欲しい」


 自分で侍女たちをクビにしておいて言うのもなんだが、七歳の俺一人では出来ることに限界がある。そして何より、忙しい。今は、全てのことを一人で行っているが、すぐにでも人手がほしいくらいだ。ただ、誰でもいいわけではないので、この件は保留とすることにした。

 人手不足に悩まされながら、俺は部屋に籠りっきりで勉強をしている。俺が勉強していることは主に二つで、魔力と、この国のことについてだ。

 この世界での魔力は、前世での電気にも等しい概念のようだ。生活の一部として、魔道具の作成や使用に欠かせないものとなっている。唯一残念だったのは、魔力という概念があっても魔法や魔術という概念は存在しないことだ。あるとすれば、魔道具による魔法攻撃だけだ。

 他にも魔力の興味深い点はある。


「可視化と、物質化か・・・」


 この世界では、魔力を使用した身体強化や魔力を武器に纏わせて戦うのが基本とされている。その時に、魔力を使用すると魔力がオーラのように可視化される。そして、魔力量は基本的に貴族が多いとされているのだが、魔力が多いと魔力を物質として形作ることができると本に記されている。それと同じページに、物質化ができる者は僅かだとも記されている。

 学んでいることの二つ目である自国については、魔力のことより学ぶ必要があると言っていい。特に王族・貴族のことについては前世でも関りがなかった全くなかったことだ。

 俺には、五人の兄と四人の姉がいる。だが、兄姉との関係は全員が全員仲良しというわけでもない。俺が思っていたより、王族という立場は壮絶なようだ。現に、それを証明する出来事が起きようとしている。


「貰うぞ!第六王子の首」


「来たか」


 俺の部屋に、黒ずくめの奴が三人侵入してきた。三人とも短剣を手にして構えている。何故入ってきたのかと聞く必要も無ない。奴の言葉から分かる通り、俺の暗殺目的だ。とは言え、これが初めてでもなく然程驚くこともなかった。襲われるようになったのは、俺が護衛を外したタイミングで何回か暗殺者が仕向けられている。当然、俺が生きているということは、全員返り討ちにした。しかし、仕向けてきた奴は諦めが悪く、こうして暗殺者を送り込んでくる。

 今回も、同じように一人も生かすことなく、しっかりと息の根を止めた。


「暗殺者が、姿を見せたら終わりでしょ」


 死体は誰にも見つからないように、焼き消すようにしている。血で汚れた部屋の掃除も俺が毎回やることになり、正直、暗殺者を送り込まれるのにも面倒に感じてきている。暗殺者を送り込んで来ている張本人に、問いただそうとしても、今の俺では良い方向に動くことはないだろう。何せ、相手が自分の兄なのだから。それに、兄は暗殺者を倒しているのが、俺だとは思っていない様子だ。どうせなら、俺のことを舐めている今の状況は、もう少し継続させておきたい。

 しかし、何もしないわけにもいかない。

 読んでいた本を片付けて、俺は外に出た。向かうのは、様々な店が並ぶ街中だ。


「アレン様、よかったらウチの商品を食っていってください」


「ありがとう。また、今度買わしてもらうよ」


「アレン様、ウチの娘が一才の誕生日を迎えたんです」


「そうか。元気に育つように願っておくよ」


 王族が、街中を護衛なしに歩くことは異例であり、市民も最初は驚いていた。だが、今では自然に会話ができるくらい馴染んでいる。俺は市民との交流の為に、度々街に遊びにきている。別に、彼らと仲良くしたいとは微塵も思っていない。何かあった時に、市民というカードは良い効果を発揮すると思っているからだ。

 ただ、今回は交流が目当てではない。俺が向かったのは、街の裏路地で営まれている奴隷館だ。

 店に入ると、奴隷商らしき女が客を待ち構えている。


「これはこれは第六王子様、いらっしゃいませ」


 女は、俺の顔を見てすぐに第六王子だと気付いた。流石は商人と言うべきか。おそらく、上客となりそうな相手は事前にチェックしている筈だ。それだけで、俺はこの商人の店なら大丈夫だと判断できる。

 奴隷商は俺を店の奥へと案内してきた。案内された場所には、たくさんの奴隷が生活していた。俺の想像と違って、この店の奴隷は人として最低限度の生活は送らせてもらっているようだ。子供から大人まで男女問わずの奴隷がいて、ほとんどの者が買ってほしそうな眼差しを向けてくる。

 残念なことに、ここには俺がほしいと思えるような奴隷はいなさそうだ。仕方がないが、今日は諦めて帰ろうとした。その時、俺の目に留まったのは、一人だけ部屋の隅に座っている少年だった。


「なぁ、あの子は何故あんなに汚い恰好をしているのだ?」


「あの子はですね、昨日売りつけられたばかりの子供でして・・・。売ってきた時には、既にボロボロで汚れまみれだったというわけなんですよ」


 少年に近づいてみるが、少年は顔を上げる以外の反応は見せなかった。少年の歳は、俺と大して変わらない七、八歳といったところだろう。

 少年は何もかも諦めて、死んだような目をしている。

 俺は、この瞬間思った。この男がほしい。この男なら俺のためとなってくれそうだと思ったから。

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