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悪役になりたい王子の国づくり  作者: プルル二世
第一章
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開幕

 王位戦が始まるまで、あと少しとなった。

 この国で代々行われきた王位戦は、参加者の勝ち抜き方式で進めていくルールとなっている。ただ、行われる内容については、その時の王が決めるものとなっている。

 そして今回、王位戦へと参加を表明したのが、第三王女と第四王子以外の王子と王女たちだ。

 俺たちに出来るのは、過去に行われたことを踏まえた対策くらいだろう。

 部屋を出て通路を歩いていると、目の間に会いたくない女が映る。


「あら、誰かと思ったら出来損ないの王子じゃない。こんなところで、何してんのよ?」


「いえ、特に何かをしているわけではありませんよ。姉上こそ、こんな場所で何をしているんですか?」


「アンタには関係ないでしょ」


 数人の護衛を連れた姉の第二王女と出くわした。第二王女とは何度か会っているが、未だに慣れないでいる。その要因は、性格に問題があるからだ。

 俺は第二王女のミランダが、王族の中で一番気が強い女だと思っている。

 この広い王城内で、俺の部屋の付近を偶然歩いているわけがない。姉上は、気が強いのと同時に、無駄を嫌う性格でもある。弟の俺に対して牽制をしに来たのだろうか。

 王族が王城内で対面するだけで、いつも緊張感が漂う。護衛の騎士たちも、いつでも剣は抜けると言わんばかりの雰囲気だ。


「そういえば、アンタも王位戦に参加するらしいじゃない」


「姉上こそ参加されるそうですね」


「当然でしょ。これに勝てば、王になれるって言うのに、参加しないなんて理解できないわ」


「姉上ならば、そう仰ると思っていました」


 王位戦の話になると、いつも以上に場の空気が悪くなる。

 数分間の沈黙が続くと、姉は立ち去っていった。

 姉の後ろ姿が見えなくなると、俺も部屋へと戻った。今部屋の外を出ると、他の兄姉たちと会うことになってしまう。流石に、今会うのは面倒でしかない。

 部屋に入った瞬間、フレンから大きなため息と愚痴が聞こえてきた。


「相変わらず、嫌な女だよね」


「お前も大概だろ・・・」


 フレンの言っていることは理解はできる。ただ、フレンは俺以上に第二王女であるミランダのことを嫌っている。本人を前にして、よく感情を押し殺していたと褒めてやりたいくらいだ。

 とりあえず、イラついているフレンに菓子を渡して落ち着かせた。ユリウスもそうだが、俺に従っている者達は大抵のことは、俺が作った菓子を与えれば解決する。


「それで、あの女はいつ消すの?」


「消さねぇよ。今このタイミングで、暗殺者を送り込むなんて馬鹿のすることだ。あの姉でも、自分に利益がないことは理解しているだろう。心の底では、俺のことを今すぐにでも殺したいと思っているだろうがな」


 フレンとの会話が弾んでいる側で、一人沈黙している男がいる。

 何故かは知らないが、真剣な表情で俺の方を見ていた。何かを考えているようだった。

 会話が止まったタイミングで、ユリウスが口を開いた。


「ユリウス様、お願いしたいことがあります」


「どうしたんだ?そんなに改まって・・・」 


「ユリウス様に、一度手合わせを願いたいです」


 まさか、俺との手合わせを求めてくるとは予想していなかった。ユリウスの様子を見る限り、冗談ではないのは確かなようだ。

 俺は返答はせずに、側にある剣を手に取った。

 ユリウスは一礼をすると、俺の前で剣を構えた。


「えっ、もしかして、ここでやるつもりなの・・・・?」


 ユリウスが本気であることを察知したフレンはすぐさま距離をとった。

 ユリウスは既に集中モードへと入っている。

 俺はユリウスが攻撃を仕掛けてくるまで待った。


「ッ・・・・!」


 ユリウスの一撃は、俺の首を狙った攻撃だった。ユリウスの攻撃には魔力が宿っておらず、純粋に剣の力による一振りだった。

 ユリウスの思いに応えるために、俺も魔力は使わずに剣だけで受け止めた。

 追撃を警戒していたが、攻撃は最初の一振りで終わった。


「もういいのか?」


「ええ、満足です」


 対峙した後でも、ユリウスの真意は分からなかった。それでも、本人が何か吹っ切れた様子なのを見ると、それだけで十分だ。

 その後も、俺たちは部屋で時間を潰した。

 昼を過ぎた頃に、王族たちは一斉に街へとおりた。

 王族全員が一同に民の前へと並んだ。


「壮観ですね」


 数多くの民が押し寄せていた。

 民衆からは、それぞれの王子や王女を応援する声が聞こえてくる。

 騒がしくなる中で、国王が一歩前に出ると一気に静かになった。


「これより、王位戦の開幕を宣言する!」


 国王からの直接の言葉に、民衆は歓喜した。一方で、王位戦に参加する王族たちには一層の緊張感が走る。

 俺は、王位を手に入れる為ならば、どんなことだってやってやる。その覚悟が、改めて俺の心に強く刻みこまれた。

 

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