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悪役になりたい王子の国づくり  作者: プルル二世
第一章
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謀略

 実に期待外れだった。

 まさか、この程度の実力だとは思ていなかった。俺が過大評価をしていたのだろう。

 

「国王様、大丈夫ですか?」


 貴族の男の心配する声が響いた。

 勝負に決着がついたわけではない。だが、国王が圧倒的に防戦一方の状況だ。魔力が使えない中で、複数人に囲まれるのは不利だと言える。それでも、不利を覆すほどの剣術があると思っていた。

 たしかに、剣術の能力は高い。ただ、周りに囲まれた途端に焦りが出始めた。


「お父様、無茶です。お下がりください」


「馬鹿なことを言うな。コイツら反乱軍を野放しにしたら、我が国は終わってしまうぞ」


「でも、このままだと、お父様が殺されてしまいます・・・」


 第一王女のミーシアは、戦いに混ざろうとはしなかった。今の状況では、足手まといにしかならないことを理解した上での判断なのだろう。この国に来た時も思ったが、感情に流されずに冷静な判断ができるようだ。

 俺は特に何かをしようとはしなかった。一応、ユリウスたちには、俺を護衛している演技だけをしてもらっている。

 ミーシアは悔しそうにしながらも、その場から動くことはなかった。その間にも、他の貴族たちが反乱軍に殺されていっているのに。

 このままだと、反乱軍が制圧するのも時間の問題だ。

 悩んだ末なのか、ミーシアは行動に移した。向かっていくのは反乱軍の方ではなく、俺たちの方だった。敵意を抱いている様子はないが、俺に何か言いたげな様子だ。


 

「客人である貴方方に、こんなことを頼むなんて礼儀知らずなのは重々承知の上です。その上で、この場の反乱軍を退けるのを、お願いしたい。謝礼ならば、出来るかぎりのことをしますから・・・」


 まさかの救援依頼だった。

 第一王女には一度だけだが、ユリウスの力を見せている。それを踏まえての判断なのだろうか。

 今の俺には、二つの選択肢がある。ミーシアからのは頼みを聞くか、聞かないかだ。どっちを選択しても、俺が損害を被ることはない。それならば、利益の大きい方を選べばいい。


「分かりました。謝礼のことは後で話すとして、今はこの場をどうにかしましょう」


 ミーシア王女からの頼みを受け入れた。

 俺からの返事を聞いた瞬間、ミーシア王女はその場に膝から崩れ落ちた。まだ解決したわけではないのに、安堵の気持ちとなったようだ。

 俺は剣を手にした。ユリウスたちも剣を手にして戦う姿勢をとった。


「お前たち、一人残さず殲滅してこい。一人も逃がすなよ」


「「ハッ!」」


 ユリウスを筆頭にして散らばっていった。

 俺はゆっくりと反乱軍の前まで足を進める。目の前では、防戦一方の状態で今にも殺されそうな国王が戦っている。戦うことに必死で、俺が近づいていることに気が付いていないようだ。

 戦い続ける国王を引っ張て後ろへと戻した。

 交代するかのように俺が前へと出た。


「な、なんで貴方が、俺たちの・・・・」


「何か言っただろうか」


 反乱軍の男が喋り切る前に、男の首を斬りはらった。

 他の反乱軍たちは、自分の仲間が死んだことに動揺が隠せていない。当然、俺はそんな隙を見逃すほど甘くはない。

 喋ることができないように、一人一人の首を斬りはらっていく。魔力が使えない中だからといって、俺たちが弱くなることはない。

 

「うわぁぁぁぁぁぁぁ、逃げろ」


「さっきまでの威勢は、どうしたんだよ」


 仲間が殺されていくのに恐怖を感じたのだろう。反乱軍の全員が背を向けて走りだした。 

 どうやら、完全に戦意が削がれたようだ。こうなってしまえば、後は作業に過ぎない。

 逃げる敵の背後から斬りはらっていく。

 

「これで、最後だな」


 目に見える敵を全て始末し終えた。

 同じタイミングで、ユリウスたちも殲滅が完了したようだ。

 

「あ、ありがとうごさいました」


 ミーシア王女が反乱軍の殲滅を確認すると、近くにきて深々と頭を下げた。

 俺は見逃さなかった。ミーシア王女の体が、小刻みに震えていることを。この状況での震えとなれば、俺たちに対するものに違いない。自分で頼んだとはいえ、ここまで派手に殲滅するとは思っていなかったのだろう。

 俺も今になって、少しやり過ぎたと思っている。ただ、ここまで怯えてくれると交渉がしやすくなる。



「それで、謝礼の件ですが、貴方たちには他国に気付かれないように今まで通り過ごしていてください」


「そ、それではアレン王子に何も利がありません」


「いえ、私が頼んだタイミングで、貴方たち王族には私の後ろ楯となってもらいます」


 国王やミーシア王女は首を横に振ることはなかった。

 これで、王位継承を争い抜くための材料を手に入れることができた。

 俺を歓迎する名目で行われたパーティーは、血みどろな形で幕を閉じた。一夜に起きた事件を、国民たちは何も知ることはない。

 まさか、他国の王子の手によって落とされたとは思っていないだろう。


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