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悪役になりたい王子の国づくり  作者: プルル二世
第一章
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反乱

 扉を開けると、中ではパーティーが始まっていた。

 俺たちが、パーティー会場に足を踏み入れると、全員の視線が向けられた。当然、良い目とは言えるものではない。だが、何か言ってくる者は一人もいなかった。近くで、国王が見ているからだろう。

 

「アレン王子、周りの者たちは気にせず楽しんでいってくれ」


「ええ、そうさせてもらいます」


 国王が一言発するだけで、場の空気感は一気に変わる。権力と実力を備えた国王なのだから、反論できるものはいない。この場にいる貴族たちが好意的になるわけではないが、下に見るような目線を送ってくることはなくなった。

 貴族のパーティーというたげあって、豪華なものとなっている。

 至福の時間を過ごす貴族たちは、気が抜けた状態だ。何かが起こるとは、微塵も思っていないのが伝わってくる。


「ユリウス、開始の合図を」

 

 俺の一言にユリウスが即座に反応を示す。ユリウスは、懐から小さな笛を取り出して鳴らした。笛の音が、室内に響き渡ったのは言うまでもないことだ。

 急に笛の音が響けば、周りの者たちは真っ先に耳へと手を当てた。そして、音が鳴った方へと視線を集めるのは、当然の反応だ。


「い、今のはアレン王子が指示をしたことなのか?」


「そうだが、どうかしましたか?」


「何の意味があったのかを聞いても宜しいかな?余興にしては、盛り上がりに欠けると思うのだが」


「すぐに分かることですよ」


 流石の国王も、ユリウスの突然の行動に理解が追い付いていなかった。単純に、笛を鳴らして終わりだとは思っていないようだ。

 もちろん、俺たちは笛を鳴らしただけで終わりではない。

 

「た、大変です」


「何だ急に、パーティーの最中だぞ」


「そ、それが、裏通りの住人と思わしき連中が押し寄せてきました。反乱と思われます」


 騎士と見られる男が、息を切らしながら情報を伝えに来た。その様子を見ただけで、国王は只事ではないと察したようだ。

 ただ、残念なことに、ここには馬鹿な貴族たちしかいない。

 

「そんな連中など、お前たち警備兵で何とかしろ!」


「しかし、何故かは分かりませんが奴らと相対した時に、魔力が使えなくなり我らは押される一方です」


 騎士の必死な言葉を聞いても、大半の貴族たちは気に留めることはなかった。この貴族たちの判断が、この後起こることに結び付くのだろう。

 国王は危機を察しているようだが、一国の王が簡単に動くことは出来ないのだろう。

 騎士が情報を伝えに来て、数分が経った頃には事が動き出していた。

 この部屋に向かって来ている複数の足音が聞こえてくる。

 騎士の男の言葉通り、この部屋へと向かって来ていたのは裏通りの住人たちだ。


「貴様等、何をしに来た。いや、それよりも、どうやって此処まで入ってきた」


「今から死ぬアンタたちに、何を教えても無駄だろう」


「死ぬのはどっちだろうな。ここまで侵入しておいて、生きて帰れると思うなよ」


 貴族たちは油断をしていた。正確に言えば、自分たちは油断しているとは思っていないのだろう。普通に考えれば、魔力量に圧倒的な差がある両者では、多少の油断があっても結果は覆らないからだ。それは、反乱軍の彼等も承知のことだろう。しかし、彼等には焦りが一切ない。その様子に疑問を感じていない貴族たちは、真正面から向かっていった。


「いいか?これが、我々貴族とお前たちの差だ!」


「そうか。それじゃあ、その差がなくなったらどうだろうな」


「な、何を言って・・・」


 反乱軍の先頭に立つ男が、懐から取り出したのは丸みを帯びた道具だ。道具を手にすると、その場に投げつけた。

 貴族の男は一瞬警戒していたが、何も起こっていないと思ったのか変わらず向かっていった。

 結果として、貴族の男は反乱軍に斬り捨てられた。

 貴族の者たちは、何が起きたのか呑み込めていないようだった。それは国王も同じようだ。ただ、流石国王と言うべきだろう。冷静さを取り戻し、咄嗟に指示を出す。

 

「お前たちは逃げろ」


「国王様、こんな奴等相手に逃げるなど恥でしかありません」


 人が一人死んでも、貴族たちのプライドは微塵も揺らぐ様子はなかった。それに、反乱軍の連中も簡単には逃がそうとはしないだろう。

 貴族の者たちは、次々に向かっていく。だが、その分の貴族たちが次々に斬り殺されていった。

 一人の貴族が、斬り殺される間際に叫んだ言葉が部屋に響く。


「どうして、魔力が使えないんだよ」


 馬鹿な貴族たちでも気付いたはずだ。反乱軍が投げつけた道具によって、魔力が封じられてしまったことに。

 魔力を封じられた影響は大きく、貴族たちは成す術なく斬り殺されていく。

 実力主義を謳っているが、その実態は魔力に頼りきりの者達に過ぎないようだ。単純な剣術勝負なら、反乱軍の連中の方が上と言っていい。

 例外はいるようだが・・・


「反乱軍よ、刃を納めよ。さもなくば、我に斬り殺されることになるだろう」


 やはり、この国王は魔力だけではないようだ。剣を手に取った国王が、反乱軍の前に立ちふさがった。

 楽しませてもらうとしよう。国王がどんな戦いを見せてくれるのかを。

 

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