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悪役になりたい王子の国づくり  作者: プルル二世
第一章
12/47

パーティー

 一通り観光を終えると、王城に戻ってきた。

 外は暗くなり、俺たちは王城で用意された部屋に寝泊まりすることとなった。用意された部屋は、誰もが喜ぶだろうと感じるくらい豪華な部屋だ。

 あまりの豪華さに警戒心が緩みそうになるが、周りいる人の気配で気が引き締まる。


「四人ですね」


 十中八九、俺たちを監視するための人間だろう。誰からの差し金なのかは不明だ。

 部屋の中での会話は、聞かれても問題のないことだけに絞った。

 監視役の者たちは動きを見せることはなかった。だが、念のために、俺が寝ている間も監視役を監視するように命じた。

 ユリウスたちを信頼しているからなのか深い眠りにつくことができた。


「おはようございます」


 目覚めの挨拶が、ベッドの側にいるユリウスから聞こえてきた。

 警戒するように命じたのは俺だが、よく朝まで寝ずにいてくれたと思う。それは、ユリウス以外の者も同じだ。何より、眠たそうな様子を一切見せないことに、彼らの忠誠心を一層感じた。

 俺が起きた頃には、監視役の者たちは姿を消していた。


「アレン王子、よく眠れたでしょうか?」


「お気遣い感謝致します。残り僅かではあるが、この王国で楽しませてもらうとするよ」


「そうですか。是非、私たちの王国でしか見れないものを見ていってください」


 部屋の外に出ると、第一王女のミーシアが挨拶をしにきた。昨日の出来事は忘れて気にせず話しかけてくる姿は流石だと思う。いや、感情を押し殺しているのかもしれない。それが、彼女にとっての王族の務めなのだろう。

 だから、俺は去り際に一言残した。

 

「ミーシア王女、頑張ってくださいね」


「は、はい。ありがとうございます」


 ミーシア王女は俺からの言葉を素直に受け取った。彼女が、どんな表情をしていたのかは俺の知るところではなかった。後ろを見ることはせずに、その場を離れた。

 俺は朝食をとるための部屋へと向かった。

 他国に来ても、俺の日常のルーティンが変わることはない。唯一、違うことを挙げるとするならば、俺が座る目の前に、国王が座っていることだ。

 

「ご一緒しても良いかな?」


「もちろん構いませんよ」


 断ることなど出来るわけがない。出来るのは、よほどのアホくらいだ。国王も、それを分かっているからこそなのだろう。良い男なのか悪い男なのか判断に困る人間だ。

 朝食が、それぞれのテーブルの上に並べられた。国王の朝食は、王室お抱えの料理人が作った物だろう。俺の物は、ユリウスが作った物だ。料理が並べられたことで、ユリウスの料理がプロにも劣らないと確信する。

 国王の反応も、それを証明している。


「それは、君に仕える者が作ったのか?」


「ええ、そうですよ」


 ユリウスが作った料理を、物珍しそうに見てくる。無理もないだろう。ユリウスが作る料理には、俺の前世の記憶を用いた物もある。この世界の者は初めて見るのは当然のことだ。

 会話を交えながら、食事を進めていく。何気ない会話の中で、国王から予想していなかったことを提案される。


「今日の夜、アレン王子を歓迎するためのパーティーを開く予定なので、是非とも参加してほしい」


 この王国に来て直ぐに、この国の貴族たちからの印象は最悪となった。だからこそ、普通なら行われるであろうパーティーも行われないものだと思っていた。

 それが、行われるというのであれば、俺は断る気はない。

 特に迷うことなく、国王からの提案を承諾した。

 

「タイミングは、パーティーの時としよう」


 目の前に座る国王に聞こえない声で、側に控えるフレンに囁いた。

 フレンは、一瞬だけ俺と目を合わせてきた。その一瞬で、俺からの言葉が伝わった合図だと理解した。

 パーティーの話以外は、これといった話はなさそうだった。それが分かると、早々に国王との朝食を終わらせた。国王には、夜のパーティーの準備のためだといって部屋を出た。

 国王との食事は気分が乗らなかったが、得られる情報のことを思えば、我慢した甲斐がある。その考えは、俺だけではないようだ。


「良かったですね。まさか、今以上に都合の良い方へと動いてくれるとは・・・」


「そうだな。あの国王を見ていても、善意の行動からなのは高確率だろう。とは言え、罠の可能性があるかもしれない。そこの警戒だけは怠るなよ」


 側で話を聞いていたフレンも、俺と同じことを考えているようだった。

 国王に言ったように、夜までに準備を整えておく必要がありそうだ。

 俺は、パーティーの時間まで、部屋で時間を潰して過ごした。何もしていなわけではなく、準備もあるが、この国の本を読んで、この国についての一定の知識は得られることが出来た。

 俺が部屋で時間を潰していると、時計の針がパーティーの時間である十八時を指した。


「よし、行くか」


 パーティーの為、俺は正装をしてパーティーに相応しい恰好とする。ユリウスたちは、護衛の為、動きやすい恰好となっている。

 パーティー会場である部屋へと向かっていく。このパーティーの重要性を理解したうえで、一歩一歩と部屋の前まで足を進めていった。

 広いとは言っても、王城内だ。数分もしないうちに、扉の前へに着いた。

 これから起こることに期待しながら、俺は扉を開いた。

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