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悪役になりたい王子の国づくり  作者: プルル二世
第一章
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思惑

 突如現れた男は、一瞬でその場の空気感を変えた。男は、俺と目が合うと、護衛の騎士を引き連れて近寄ってきた。

 ユリウスたちは警戒心を強めた。

 俺の目の前にまで近寄ってきた男は、早々に深々と頭を下げた。


「我が王国の者が失礼をしたようだ。大変、申し訳ない」


「貴方は・・・?」


「そうだった。名乗るのを忘れていたな。我は、この王国の現国王であるリーデッドだ」


 何となくそうではないかと思っていたが、改めて名乗られると迫力が伝わってきた。それに、見た瞬間に俺たち全員が分かった。この男が、この国で一番強い人間だと。

 国王が直々に頭を下げたことに、俺たちも含めたこの場にいる者全員が驚いた。

 この状況で謝罪を受け入れない程、俺も馬鹿ではない。俺が謝罪を受け入れると、お互い何もなかったかのように、王城の中の一室へと案内された。

 ユリウスに腕を斬られた貴族は、気付いた頃にはいなくなっていた。おそらく、治療を受けに行ったのだろう。


「それでは改めて、ようこそユーリシア王国へ」


「こちらこそ、よろしくお願いします」


 ようやく、落ち着いて話をすることが出来る。

 丸いテーブルを、四人の王族が囲って座った。その後ろには、それぞれの護衛の騎士たちが控えている。

 案内されるがままにテーブルに着いたが、特に話すことが決まっているわけではない。誰が口を開くのか待つ状態となっている。 

 数分前に色々なことがあったせいで、静かな時間が生まれると、場の空気感が張り詰める。そんな中、最初に話を切り出したのは、リーデッド国王だ。


「それにしても、君の護衛の騎士は大した強さだな。立ち姿を見ただけで、腰を抜かしそうになったわ」


「ご冗談を。強さと言うのであれば、リーデッド国王も相当な実力者でしょう」


「何を言うか。君に敵わないのは流石に理解できるさ」


「私なんか護られているだけで大したことはありませんよ」


「では、私と訓練所で手合わせをしてみないか?」


 会話をすれば雰囲気が和らぐと思っていたが、話の内容的にそうはいかなかった。言葉では、お互い謙遜しているような感じだが、雰囲気はピリつきが増していた。

 そんな様子を見かねたのだろう。ミーシア王女が、話に割って入ってきた。

 

「お二人とも、そこまでにしてください。戦いのことではなく、お互いの国について話し合いましょう」


「それもそうだ。アレン王子、そちらの王国について話してもらえないだろうか」


 それから、互いの国のことで会話は何とか弾んだ。ただ、お互い完全に信頼しているわけでもないので、話すことは慎重に選びながら話を進めた。

 一時間ほど話し込んで、この場での王族による話し合いは終わった。唯一、第二王女の彼女は、話し合いの中でも口を開くことはなかった。国王や第一王女よりも、考えが読みにくい人間なだけに、話し合いの最中は常に意識は向けていた。しかし、気にするのが無駄だと思うくらい何かをする様子はなかった。

 話し合いが終わり、部屋を出ようとすると、ミーシア王女に呼び止められた。


「よろしかったら、私たちの王国を観光していってください」


 何を言うかと思ったら、観光を勧めてきただけだった。俺たちとしては、勧められなくても視察を兼ねた観光はするつもりでいた。第一王女に勧められたのならば、堂々と見て回れる。

 王城を出た俺たちは、街中へと降りていった。

 街中は活気に満ち溢れている。自国とは違う雰囲気に物珍しく感じてしまう。道行く人の大半が、満足な暮らしをしている様子だ。ただ、そうでない者も存在している。

 俺たちの国でも、満足に生活を送れていない者もいる。ただ、この国とは大きな違いがある。この国では、実力が無い者は誰であろうとも、虐げられる仕組みとなっている。

 その様子の一部が、俺の目に映る。


「オイッ、しっかりと歩けよ!」


「すみません、すみません」


 普通に見れば、酷い扱いだ。しかし、この国では当たり前と捉えているのか誰も見向きをすることはなかった。実力主義とは分かっていたが、ここまでとは思わなかった。

 少し街を視察していく中で、この国についての理解が深まっていく。

 街中を見て回っていると、高級そうな料理店を発見した。休憩と俺たちだけで話し合いをするために、中へと入った。思っていた通り、高級店のため個室の店となっている。密会をするには、これ以上の場所はないかもしれない。

 椅子に座ると、『影』が目の前に現れた。


「おおよそ、順調に進みそうです」


「そうか。それならば、予定通り進めてくれ」


 『影』が個室にいた時間は僅か数十秒だ。俺に用件だけ伝えると、すぐに姿を消した。

 俺が、この国で何かを進めているのはユリウスたちは察しているようだ。ただ、まだ何を行うのかはユリウスたちにも伝えていない。

 伝えるならば、今が良いタイミングだと思い、隠すことなく進めている内容について伝える。


「お前たち、任務だ」


「何でしょうか」


「一度この国を落とすぞ」


 俺からの言葉に、ユリウスたちは何も聞くことはなく頷いた。

 この話のすぐに、俺は食事をとった。数分前の話の内容が嘘だと感じるくらい自然に振る舞った。

 プランは出来上がっている。後は、実行に移すのみだ。

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