プロローグ
「もう一度…言ってくれるかい…?今…何て?」
Sランクパーティに当たる冒険者パーティ【ヘルメス】に所属している魔術師の俺"グラム“は聞き返す。
「だから、お前は、クビだ…そう言ったんだよ!ろくに魔術も使えず、雑用しか能のない雑魚を今まで置いてやってたんだぞ?感謝して欲しいものだよ…」
そう、俺はたった今【ヘルメス】のリーダーである"エンバー“にクビを告げられていた。パーティメンバーも全員揃っている。
「待てよ!お前達には迷惑をかけてないし、何よりお前たちも俺を頼りにしてたじゃないか!」
「何を言うかと思えば、そんな事か…確かに最初は当てにしてたさ…だが蓋を開けてみれば使える魔術は初級が限界じゃないか…存在する事が迷惑なんだよ、分かるか?」
その通りだ…俺は魔術師でありながら初級しか使えず人より魔力も少ない。
「他のみんなも…同じ意見なのか?」
俺はメンバー達を見渡した。
先ず口を開いたのはパーティのタンクである大柄の男"ダグラス“だった。
「俺はもちろんリーダーと同意見だ。このパーティーはSランクパーティだ。いつまでもお荷物を入れてる訳にはいかないんでな!恨むなら自分の弱さを恨めよ?」
ダグラスはアッサリと不要と言い切った。
「私はどちらでも構いません…魔術師はリースが居ますし、貴方が抜けた所で大きな損害はありません」
そう言って冷たい視線を向ける女性"レティ“は口を閉ざす。
「ん〜寂しくなるけどわたしに劣ってて役割被っちゃうグラムくんは可哀想だしね〜」
のんびりと間延びした声で思ってもいない事を口走って居るのは同じ魔術師の"リース“だ。
「なるほど…よく分かった。お前たちがそう言うなら俺は出て行くよ。世話になった。」
そう言って踵を返して出ていこうとするとエンバーに呼び止められた。
「待てよ、装備は置いていけ。それは俺たちがお前に貸し与えた物だ。だから返せ。金は手切れ金だ。くれてやる」
「ああ…そうかよ!」
装備を全てエンバーに明け渡し手切れ金を手に王都の拠点を後にした。
「コレから…どうするかな…」