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星間戦争記  作者: 陽伊路
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1話–仮初めの平和

 300年前に発生した人類史上初の地球外生命体との戦争。それに辛くも勝利した人類は、異星人からのAI技術を吸収。

 それらと戦争中に蓄積された技術によって、版図を太陽系外にまで大きく広げた。


 西暦から宇宙暦へと時代を進めた人類は、当然の帰結として資源問題の解決策を広大な新天地へと求め、更なる拡大へと心血を注いでいった。


 だが、突如として発生したAIによる人類への反乱によって星系間の連絡は寸断、経済活動は完全に停止。銀河連邦はあっさりと歴史に幕を下すこととなる。


 各星系に取り残された人々は独自にAIへの抵抗を開始。徐々に勢力圏を回復していった。


 AIによる反乱は比較的早期に収束した。特にガーランド公国、マミリアス合衆国はそれぞれアーター地方、ハーツ地方にて勢力を拡大。周辺国を軍事的、経済的に次々と飲み込みながら拡大していった。

 殆どの周辺諸国はこの2大国に抗う術なく消えていったが、唯一、バーラト共和国のみがワルヘン地方で存続していた。

 だが、それも直ぐに脅かされることになる。


 AI動乱を平定したガーランド公国、マミリアス合衆国は、国名をそれぞれガーランド帝国、マミリアス連邦国へと改称。


 これにより、この2大国は周辺国への干渉をより一層強硬にし、更にはこの2大国同士の摩擦も大きくなっていった。


 ガーランド帝国の治めるアーター地方、マミリアス連邦国の治めるハーツ地方は互いにギャランツ地方にて接続されていたが、もう一つ、バーラト共和国の治めるワルヘン地方によっても接続されていた。


 これにより、バーラト共和国はガーランド帝国、マミリアス連邦国の双方から多大な圧力を受ける事になる。

 そしてついに10年前、ガーランド帝国はマミリアス連邦国へ宣戦を布告。最初の1週間で両国は合計1000隻もの軍船を喪失したが、両者ともにがっぷりと組み合ったまま、一歩も動かなかった。


 この状況に業を煮やしたガーランド帝国はバーラト共和国へ、ガーランド国籍艦船の無制限通行権を条件とした最後通牒を突きつける。


 バーラト共和国がこの要求を拒否した事で、ガーランド帝国、バーラト共和国間での戦争が勃発した。


 開戦となったものの、ガーランド帝国はバーラト共和国への大規模侵攻は実施せず、国境警備中の艦船同士の小規模な戦闘に終始していた。


 バーラト共和国もガーランド帝国へ大規模侵攻をするだけの軍事力はなく、また仮に初戦での勝利を収めたとしても、すぐにガーランド帝国の強大な国力を前に圧死することは明らかだった。


<><><><><><><><><><>


「哨戒ルートの最大進出ポイントまであと20分だ。各員、警戒をおこたるな」


 ドーリアン・シュルツは共和国の艦長としてこのバーバリアン級巡洋艦シーホークに搭乗している。

 この時、シュルツは齢28だった。


 バーラト共和国では自身よりも強大なガーランド帝国、マミリアス連邦に対抗するために、汎用性の高い単一艦艇を大量に運用することで効率的な運用を目指している。

 その艦艇がバーバリアン級巡洋艦であった。主砲は艦首に210Bレーザー砲を装備。


 Bはビルの略で、エネルギー単位である。数値は一度の射撃に必要なエネルギー量を示している。

 単純に、数字が大きいほど威力が高い。


 艦艇側面には2箇所のパイロンが設置されており、ここには追加の武装を取り付ける事が出来る。


 シュルツの乗る《シーホーク》にはハニカムと呼ばれるミサイル発射機が取り付けられている。各ハニカムには300発のミサイルが搭載されているため、《シーホーク》は合計600発のミサイルを追加装備している。

 更に艦首には200発のミサイルが標準装備されているため、《シーホーク》の装備するミサイル総数は0発である。


 また、計5機のアイギスが設置されている。

 アイギスはレーザー機銃でミサイル等の実弾兵器迎撃に使われる防御火器である。


 速度は2500ミリス。ミリスは距離単位。数値が大きいほど速い。


 前面装甲はチャリア装甲が前面12m、側面7m、背面2mほどである。

 チャリア装甲はチャリア研究所が開発した光学兵器に特化した装甲で、10mもあれば210Bレーザー砲の直撃を10発は防ぐ事が出来る。


 共和国の艦艇はほぼ全てがこのような性能のバーバリアン級巡洋艦である。無論、主砲に550Bレーザー砲を装備する大型のストライカー級戦艦や、4500ミリスもの快速を誇るモスキート級駆逐艦もいるが、その数は少ない。

 その分、バーバリアン級巡洋艦は2箇所のパイロンによる装備の多様性によって様々な任務に対応出来る用になっている。

 バーラト共和国はこのバーバリアン級巡洋艦を1200隻という国力からは考えられないほど多くの数配備していた。


「連邦方面に力を入れてるんでしょうね。こっちは静かなもんです」


 どこか気の抜けた言葉を漏らしたのは《シーホーク》の副艦長であるバイエル・ホーグである。

 まだ垢抜けない雰囲気のあるホーグは抜けが多く、シュルツからよく小言が飛んでいた。


「ホーグ、いつも言っていだろう。任務中に油断するんじゃない」


 ホーグには楽観的なところがある。艦長としては見過ごすことはできない。


「でも艦長、ホーグの言う通り共和国ではもう何年も小競り合いしか起きてませんよ」


 ホーグの軽口に乗ったのは《シーホーク》の操舵を担うミッドリー・ダニエルである。

 ヴォルはかつてレーサーをしていたが、スリルを求めて軍に転向したらしい。享楽的な性格で、ホーグと仲がいい。


「はぁ。任務は任務だ。帰ったら一杯奢ってやるから今は集中しろ」


 確かに、バーラト共和国はガーランド帝国からの宣戦布告を受けたものの、大規模な戦闘は起こっていない。だが、少数の艦艇同士の戦闘は起きているのだと思う油断はできない。


 艦長になって給料は上がったが、これじゃ前とあまり変わらないな


 確定した今日の出費を計算する。

 元凶の2人はシュルツの憂いはどこ吹く風とばかりに無視して喜び、任務に戻っていた。

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