4・固有名詞の説明・描写
固有名詞の説明・描写は「覚えるまで、忘れていても思い出せるように」何度でもする。
ここで読んでいるとよくあるのが、「誰? この人???」「この国、何だっけ?」と分からないまま話が進んでしまう現象です。
とくに、現実でも人の名前を覚えられない私は、顔の分からない人間のことなんて、ちっとも覚えられない。子供の頃、映画に出てくる違う人種の見分けがつかなかったように、登場人物の見分けがつかないまま話が進んでいってしまいます。
編集さんなど他人の目が入らないせいか、書籍化したものよりも頻繁に起こっているように感じます。
☆よくある現象1・容姿が決まっているわりに、説明がないから忘れる
二百話ぐらいで主人公の髪が金髪だと言われ、脳裏で茶髪だった主人公の髪色が突然変わる。
または、見た目と性格のギャップがあるキャラなどは、見た目の描写がないと、気がつくと性格に合わせた容姿に脳内変換されてしまう。
最初の方でさらっと描写があるくらいじゃ、意外と忘れる。
実際、ある活動報告のコメントに、小説で「薄い色素の~」とヒロインの説明があったのに、書籍化したイラストを見た読者が「黒髪が良かった」みたいなコメントをしていたから、私だけじゃないはず。
☆よくある現象2・呼び方が複数あり、覚えられない
キャラによって名字で呼んだり、名前で呼んだりするため、誰の話をしているのか分からなくなる。
――「山田 太郎」と「鈴木 次郎」だっけ?
――「山田 次郎」と「鈴木 太郎」だっけ?
――何話を見れば、名前が分かるんだっけ?
首を傾げたまま読み続ける。
☆よくある現象3・複数人の新キャラが判別できない
突然、現れた四人組。全員が職人だったり、全員が騎士だったりすると判別不能。
名前という記号では判別できないのに、どんどんキャラの肉付けがされていく。
性別、スキルなどの情報と、発言による性格の情報が積み上がるのに、どこに割り振っていけば良いのか分からない。
せめて、剣士と魔法使い、拳士、奴隷の子供の四人のパーティなら、なんとか判別できるのにっ!
☆よくある現象4・国名を言われても、今までにどんな説明があったのか覚えてない
突然、説明される四カ国。
「カナティほにゃらら国」「トュナカティ国」「ほにゃティルル国」「むにゃらナティ国」がどうのこうの……と最初に説明があって、その後、当然のように会話に国名が飛び交う。
――誰がどの国出身だっけ?
――国の位置関係が分からない
――どの国が砂漠で、どの国が魔法が盛んなんだっけ???
――「タティトゥテト」が全部の国に入っているから、覚えづらいっ!
☆よくある現象5・物(?)の名前がどんどん増えて、覚えきれない
次々と現れ、どんどん増えていく一方のモンスターの名前、ファンタジー食材(果物や魚)、アイテムの名前が、読者は覚えているものとして話が続けられる。(予習復習は当然されているものとして進む授業がきっと、こんな感じに違いない)
正直、普段使わない単語なんて時間が立ったら忘れる。覚えてて当然、みたいな態度を取られても困る。覚えても、必要ない情報は忘れる。
☆よくある現象6・珍しい名前、読み方複数の名前(の読み方)が覚えられない
とくに、一人称で一人転移後の森で彷徨っていると、主人公の名前はめったに出てこない。
それなのに、数話に一度しか出ない名前にルビがないから、毎回、1話かあらすじに確認に行く。
例1_明
《訓読み》
あかす,あかり,あかるい,あかるむ,あからむ,あきらか,あける,あく,あくる,あき
《他の読み》
あか,あかり,あかる,あき,あきら,あけ,きよし,くに,てる,とおる,とし,のり,はる,ひろ,みつ,よし
※ひどいやつは一度もルビがない。
勘で読んでいたら、数十話目にして、「〇~〇~○~」と友人に泣きつかれて初めて正しい読みが発覚。合っていれば嬉しいけれど、間違っていた場合、不愉快な案件。
*対処法*(実例含む)
★何をするにも、容姿の描写をさり気なく入れる。
例1_鏡の中の自分は情けない顔をしている→鏡の中には黒髪の少年が、情けない顔をして立っている。
例2_その時、強い風が吹いた。→その時、強い風が吹き、金の長い髪を乱した。
例3_見た目と性格のギャップに驚いたのか、目の前の少年は目を見開いた→金髪碧眼の優しげな顔から卑屈なセリフが飛び出し、少年は驚いたような顔をした。
※「ルル」は誰だか分からないけれど、「金髪で巨乳のルル」なら誰だか分かる。
★他人のセリフで説明。
「そこの銀髪の坊や!」「この信号トリオめ……」など。
★名前は主人公の呼び方以外は、地の文かルビで補足する。
「山田!」クラスメイトが太郎を呼んでいる
山田はクラスメイトに呼ばれた
★あだ名をつける。ルビをふるのもあり。
「ミシェルは……」「ニックは……」「レオンは……」
→「陰険騎士は……」「脳筋騎士は……」「マッチョ策士は……」
※実際、ずっとあだ名で呼んでいたのが、仲良くなった頃に名前呼びになったときは、すっと覚えられました。
★名は体を表す方式
黒木 虎太郎→黒髪で、虎のように獰猛
銀 龍翔→白銀の髪で、虎太郎とライバル
※龍虎はライバル関係を意味する
赤井 将→転移したら、アバターと同じ赤い髪と瞳の将軍になった。
★話し方を特徴的にする。
とある人気作品のように、謎語尾をつけるなどして強烈な印象を与え、忘れさせない。
「~なのだっ!」「~ですわっ!」「~じゃん」「~なのです!」「で~す~の~」「~やねん」
→マリア? だれ? ……あ、この話し方はあの子か。
★主人公がひたすら同じ反応をする。
例1_燃えるような赤い髪を見つけ、慌てて逃げようとするが捕まった。脳筋マッチョで声のでかいギルドマスターは苦手なのだ。身長の低い僕は首が痛くならないよう少し後ずさりし、遥か上にある顔を見上げた。
例2_ああ、可愛いっ! プラチナブロンドの波打つ髪に、優しげな緑の瞳。転生した私の妖精のような妹は毎日見ても、発狂しそうなほど可愛いっっっ!!!
……というような反応を、毎回させる。
★修飾語+名詞で表記する
団長のアレンは……
リーダーのリックは……
南国の「カナティほにゃらら国」から来た〇〇王子は……
※ギルド→ダンジョン→ギルド、と移動したら、ギルドに戻った時に「職員唯一のエルフ、〇〇は……」など説明が欲しいです。名前だけだと、誰だか分からない……。
★アイテム・素材には手に入れた場所、シーン、味、効能の説明を入れる。
例1_取り出したのは〇〇の実。回復の効果がどうの、というより、ほのかな酸味と歯ざわりの良い食感が好きでよく食べている。
→主人公の好物で、回復効果があるのが〇〇の実。よし、覚えた。
例2_〇〇と行ったダンジョンで手に入れた、〇〇の核を取り出す。
→あぁ、この間行ったダンジョンで手に入れたやつね。はいはい、思い出した。
★毎話、漢字の名前には最初だけルビをふる。
★毎回、主人公が名前を間違える。
→訂正により名前が強調され、訂正の仕方でキャラの性格、主人公との関係性が強く記憶に残る。
★主人公の物覚えが悪い。忘れっぽい。
→毎回、主人公への説明が入るため、読者に優しい。
主人公たちが犯人を追い詰める緊迫のシーン。
黒い影が振り向き、顔が見え、主人公(たち)が驚愕の声を上げる。
「嘘だろ……。なんでだ、ニック!!!」
私「え? ニックって、誰だっけ???」
台無しです。
最後にせめて一行、足して欲しい。
「そこにいたのは〇〇の少年だった。」とか。
「『~~~~ですね、先輩』可愛がっていた後輩の少年は、いつもどおりの屈託のない笑みを浮かべた。」みたいな。
犯人がどのくらい主人公に近い人間で、登場回数がどのくらいにもよりますが……。