表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
夢見る絵本から始まるおとぎ話な探偵社  作者: 碧々
映ったのは死んだはずの姫
7/38

7.端麗な王妃

 深い森へ迷い込んでしまったが偶然にも親切な猟師に出会い、行き先が同じブリュッセル王国ということなのでついて行かせてもらうことになった。



「ねえ、ウァーハエツ。なんでそんな険しい顔してるの?」


「う~~ん。なんかあいつ臭うなぁ」


「そう? 確かに汗だくだけど」


「そういうことじゃなくて! 怪しいんだよ。まず、俺たちと会った時の反応。すごい怯えていたし、俺たちの身元を気にしていた。そして、身元を言うと安心していた」


「それがどうしたの?」


「つまり、俺たちの国以外の誰かを恐れているのだろう。

 そして、あいつの姿と持ち物。服に少し血がついているから動物を殺したみたいだけど、その動物が見当たらない。仮に動物を売ったとしても遠くに行かないとそんな場所は無い。なのに日帰り分くらいの荷物しかない」


「ということは?」



「つまり、狩猟以外の目的の可能性が高い」


「その目的って、なぁに?」


「それはぁ…………まだ内緒だ」


「ふぅ〜〜ん、まあ、分からないみたいだから一緒に考えてあげるよっ」


「うっ……、おい助手よ、俺がまるで真相までたどり着いていないみたいな言い方するな!」


「ふふふっ、そうなの? ……でも、たまにはユッキーを頼ってほしいのです」


「そ、それはもちろんだ! なにしろ、この俺が選んだ助手なのだからなっ」




 *



 俺たちのルーバン王国に比べて、このブリュッセル王国の町を見るとかなり貧しい。壁に座り込んで飢えている人さえいる。だから移住しようとする民がいるのだろう。

 そんな平民の間を、王族の俺が馬に乗って歩く。なのとも心苦しい。


 森から林、畑、町………そして、ブリュッセル王宮の城壁の門の前に来た。物騒な形相をした兵士が4人ほどいるが、俺の胸の称号を見ると道を開けてくれた。


 重たい音をしながら門が開き、道案内してくれた猟師と一緒に城壁の中へ入る。それと共に目の前に広がったのは、美しい庭園と王宮だった。

 白い石が敷き詰められた道の両脇には花と木々たちが明るく輝いている。ヨーロッパで多く見られる左右対称のデザインだ。

 その庭園をずっと行ったところに王宮が白くそびえ立っている。


 それらの美しい風景の中を白馬に乗って進む王子の俺。映えるとはこういう状況で使う言葉なのだ。(ナルシストが入っていてすいません)


 その王宮の中央に何人か人がいる。その中で最も気高く美しい女性がこの国の王妃の「カタリーナ・フォン・ハッツフェルト」である。

 王妃が顔をしかめて猟師に小声で叱る。



「他国の王子様の前でなぜお前のような平民が馬になっているのっ?」


「申し訳ありませんっ」



 猟師が怯えながら馬から降りて王妃と俺に頭を下げる。

 王妃は小さくため息をついてから口角を上げ、俺に話しかける。



「ようこそお越し下さいました! ケヴィン・デ・ウァーハエツ様!」



 え? 叱ってる時と声がすごい変わった。メリハリが恐ろしい……



「わざわざ迎えてくださり感謝します、王妃殿」


「いえ、ウァーハエツ王子とは初めてお会いするので、ぜひお顔を見たいと思いまして」



 カタリーナ王妃はいかにも王妃みたいな雰囲気が漂いまくっている。赤みがかった紫色のドレスに身を包み、かなり派手に装飾が施された銀髪に、真っ白な肌と真っ赤に塗られた唇、少しつり上がっている目。表情からは美しい中に、誇り高さのようなものも見て取れる。



「では、夫のところへ案内いたしますわ」


「ありがとうございます」



 馬をここの使い達に預け、品良く歩く王妃について行く。ヒーサの手をとって王宮に入る。


 にしても、なんか王宮の中が騒がしい。鏡のように磨かれた石の壁に、叫んでいるような声が響く。

 後ろにいるヒーサが震える手で服の裾を握ってくる。



「王妃様、なにか声が聞こえますが大丈夫ですか?」


「申し訳ありません。ただ今、娘の行方が分からなくなっておりまして」


「本当ですか? でしたら、私など気にせず探してください」


「お気遣いに感謝します。ですが、私はただの家出だと思っておりますので、それほど……」



 本当に家出なのか!? まあ、母親である王妃がそういうのならそうだろうが。

 廊下を進めば進むほど叫び声のようなものは大きくなる。そしてその声が1番よく聞こえるドアの前で王妃が立ち止まった。



「こちらでございます」


「は、はい。ありがとうございます」



 俺がドアを開けた瞬間、その部屋の中が静かになった。そこの数十人が涙目でまま俺を見つめる。



「は、はじめまして。ルーバン王国のウァーハエツと申します。王へのお土産をお持ちしました……」


「…………っ、あぁ、そうか。ご苦労」



 王はやはり娘の行方不明で気が動転しているのか、俺に冷たい。



「あのぉ、私のような者でよければ娘様を探すお手伝いをいたします」


「あぁ、あぁ、聞いてくれよ! 俺の唯一愛する娘が、『白雪姫』が………私の前から消えるなど、信じられるかぁぁっ!!」



 これがさっきから王宮に響いている叫び声か。やはり娘のことなのか……『白雪姫』ね………



 え?



 『白雪姫」?? えぇえ゛ぇーー




 まさか、ここは、『白雪姫』の世界!?

時々出てくる( )は中二病発言などの翻訳・説明、及びツッコミだと思ってください。


できるだけ毎日更新しようと思います。

ブクマや評価、感想が励みになります。ありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ