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夢見る絵本から始まるおとぎ話な探偵社  作者: 碧々
映ったのは死んだはずの姫
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6.白馬

 家族で集まって朝ご飯の並んだテーブルに座る。

 


 …………アーメン」」」



 俺らの家族はキリスト教なのだ。祈ってから食事をする。日本でいう「いただきます」みたいなものだろう。


 そ、それにしても、なんだこの食器は! 銀の物ばかりではないか!? まるで鏡みたいだ。

 おい! この食器に移るイケメンは誰だ!? お、俺か? 鼻が高くて、金髪で、目は透き通った藍鼠色で綺麗だ。 あぁ、美しすぎる(自分に見惚れるなっ)

 それになんだこのお洒落な食事は! 朝からステーキが出てきたと思ったら、サーモンやチーズが挟まれたパン、最後にデザートのティラミスまで…………豪華というのもそうだが、カロリーが高すぎやしないか?


 ユキが羨ましそうに俺を見てくる。俺はそれを煽るようにナイフで小さく切った肉片を口へ放り込む。



「お父様、今日はブリュッセル王国に何を贈るのですか?」


「この国で作った絹の布や。そんより、あの国の国王かなり機嫌が悪いらしいから気いつけろ。ついでに、この国へ国民が移住してけぇへんように言ってくれ」


「ふっ、それくらいなら心配するに足りません…………」


「お前、何言っとるんじゃ?」


「こっほほ、ほんっ! 何でもありません。どうぞ私にお任せください」


「ちゃんとせえよっ」



 危ない危ない、探偵という人格が出てしまうところだった(しっかり出ていましたが)。にしても、ウァーハエツの父は関西弁がきついな。



 「ごちそうさまでしたっ」


 ちょっと苦しい。さすがに食べ過ぎた……(探偵だったら食べる量くらい計算しなきゃ)

 現実では食べ終わったら自分でお皿をキッチンの流し台まで運んでいたが、この世界ではメイドがそれをしてくれる。


 しかしさっきから気になるのだが、みんなの視線が俺に集中している。転移していることがバレているわけではあるまい。

 恐らく、俺がいきなり性格が良くなったからだろう。さっきヒーサを殴っていた記憶が蘇ったのもそうだが、ウァーハエツはかなり短気で乱暴な奴だったらしい。でも、俺が転移してから素晴らしい性格になったのだ(遠回しに思い上がる)




 *




「ふははははっ、そんなにジロジロ見るでない! 白馬に乗って赤いマントを羽織っている我がいつも以上に高貴に見えるのは仕方がないことだが…………」


「……っはぁ、はぁ、……おまたせマァ君。何か喋ってた? 誰もいないけど…………」


「い、いやぁ、他の人じゃないか? 別に、俺はちょっとカッコいい服着たからって調子に乗ったりしないぞっ」

(自分で恥をさらしている訳だが)


「そうなの? じゃあ、マァ君。そろそろ行こぉ」


「おう」



 俺はユキと2人でブリュッセル王国へ贈り物を渡しに行くことになった。ユキの最強な記憶力を持つヒーサが先頭で馬を走らせる。


 馬の(ひづめ)が地面を叩く音と大きな白い体の上下運動がリズムカルに進む。

 馬というものはこんなに足が速いのか!? 車やバイクとは違う解放感と力強さがある。


 景色が次々と移り変わる。さっき城の門を出たと思えば、町、畑、林、池…………そして、森?



「あの、ユキ? あとどのくらいで着くのだ?」


「う~~ん。ユッキーは分からないのです」


「ちょ、ちょっと待て。ユキ、ブリュッセル王国までの道が分かるんじゃないのか?」


「そんなの分からないよ。馬に道は任せているの。でも多分こっちの方だと思うのです」


「えぇ! それただ適当に馬を走らせてるだけってこと?」


「そんな言い方はよくないのですっ」



 あ゛あぁぁぁぁ、そうだった!

 ユキは記憶力も最強だが、方向音痴も最強クラスだった!! (マコトと一緒じゃないと6年間通った小学校にもたどり着かないほど)



「俺としたことがっ! ここ、どこだ?」


「えっと、木と草しかないのです」



 笑えるほど森の奥へ来てしまったようだ。

 いや、笑えない。どうすればいいんだ?

 絶望に近い溜め息を吐くと、森の中から枯葉を踏む音が聞こえた。



「え!? さっきの音は何?? 熊とかでないよね?」


「そういえば、近くの森で熊を狩ったという話も聞いた気がするのです」


「いや、今に限ってはお前の記憶の情報は余計に怖くなるから言わなくていい!」


「マァ君怖いの?」


「そ、そんなことはないぞ」



 と騒いでいる間に、木の陰から黒い生き物が……!?


 あ゛ぁぁぁ、あ?



 なんだ、馬に乗った人間かぁ。はぁ寿命が縮んだぁ。


 そこから現れたのは鉄砲を担いだ若者だった。猟師だったらこの辺りの道にも詳しいだろう。



「ごきげんよう、猟師さん。私たち、ブリュッセル王国に行く途中で道に迷ってしまいまして。どの方角かだけでも教えていただけませんか?」



 俺はそんなに恐ろしいことなど言っていないが、その猟師は異常なほどに怯えている。



「は、はぁ、どこの方ですか?」


「おっと、失礼。わたくし、ルーベン王国のウァーハエツと申します」


「それは失礼いたしました。私は近くに住む狩人の者です。私もブリュッセル王国に行くのでご一緒しませんか?」


「感謝します」



 これは助かる。これで安心してブリュッセル王国へ行ける。

 しかし、俺はその猟師に対して大きな違和感を感じた。考えれば考えるほど怪しいのだった。

時々出てくる( )は中二病発言などの翻訳・説明、及びツッコミだと思ってください。


できるだけ毎日更新しようと思います。

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