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夢見る絵本から始まるおとぎ話な探偵社  作者: 碧々
映ったのは死んだはずの姫
3/38

3.探偵社

<解説>

 コナン・ドイル作 シャーロック・ホームズ シリーズ 世界的に今でも人気がある探偵小説

 モーリス・ルブラン作 アルセーヌ・ルパン集 世界的に今でも人気がある怪盗小説

 ホームズとルパンは小説の中で闘ったりもした名探偵と怪盗紳士である

「ごきげんよう。三山シノさん。わたくし、射露玖(シャーロック) 鳳武頭(ホームズ)と申します」


「…………」



 シノは俺を認識しているがシカトする。無反応に困りながら話も続ける。



「失礼ながら、わたくしの裏情報でシノさんが文芸部を作ると伺いましたが、本当ですか?」


「…………どなた?」



 そ、そんな「え??」と今にも口から出てきそうな顔で見つめられても困るのだが……(初対面で探偵と言われた方も困ると思うのだが)



「あ、すいません……」



 予想外の反応にショックを受け、一旦引き下がるしかなかった。

 と、シノがまた口を開く。



「…………あなた、あともう1人の子。放課後、図書室に来てくれない?」


「……了解です」



 と呟きながら自分の机へ戻る。


 うわ〜〜〜〜〜。らしくないこと言っちゃったぁ。いつもだったら「おい! 世界に名をとどろかせている名探偵と話しているというのに無礼だぞっ!」くらい言い返せるのにぃ!

 なんて後悔しながらも今さら何をできるということでもなく、膝の上に拳を作って静かにすることにした。




 *




 新入生ということで色々な準備やらをする4時間が終わり、みんな帰り始める。シノは特にこっちを見るわけでもなく教室を出た。



「マァ君、今日は何するの?」


「ユキ! 図書室に行くぞ」


「また? どうして?」


「まあ着いて来い!」



 ユキは少し不思議そうな顔をしながらツインテールを揺らし、俺の後ろを歩く。

 あぁ、なんで一年生の教室は一階なのだ? 最上階の図書室に行くのに階段を100段以上上らなければならない。はぁぁ



 手を震わせながら図書室のドアを開ける。うまく言い表せないが好奇心に近い緊張感みたいなものがある。

 棚の手前にある長机の椅子に座っているのがシノだ。歴史を感じる重い茶色の図書室に、昼間の光が差し込む。その光でシノの髪はいっそう透明感を増して見える。

 微笑んでいる様にも見える引き締まった唇や、ページを捲る白い手からは品の良さと優雅を感じる。



「マァ君、どうして止まってるの?」


「あーごめんごめん」


「あ、いるね! シノさん」



 ユキがシノに駆け寄る。



「シ〜ノさん! こんにちは!」



 おいおい、馴れ馴れし過ぎるだろっ



「こんにちは。ユキさん」


「名前、覚えてくれたの!? 嬉しいなぁ〜」



 まずい、俺が入らないまま会話が弾んでいる。このままでは俺だけ蚊帳の外状態になってしまう。



「こんにちは。決して貴様に命ぜらたから来た訳ではないぞ。こ、こんな偶然に会うとは……」


「……何を言ってるのか分からないけれど、あなた、シャーロック・ホームズもどき(・・・)の人ね」


「本物だぞっ」


「ふ〜〜ん、面白い人ね〜……」



 すると、シノが生徒手帳を読み出した。

 自分のか?



「ふ〜〜ん。あなた達って仲良しなのね。カレンダーのところにちゃんとユキの誕生日って書いてある」


「ふぁっ!? いつの間に俺の生徒手帳をっ!」


「あれ? 探偵さんなのに気づかなかったの?」



 俺が気付かぬ間に胸ポケットの生徒手帳を取ったようだ。さすが、アルセーヌ・ルパンを読んでいるだけある。



「う、うるさい……」


「私は三山シノ。アルセーヌ・ルパン集が好き! よ、よろしくね」


「こんな所で会えるとは!」


「え!? あなたと会ったことがあるかしら」


「誤魔化すでない。我が目に曇りは無いのだ! 貴様は、怪盗アル()()()・ルパン!」


「……アルシーノ? それって、今付けたあだ名みたいなもの? センスが感じられないからやめて欲しいのだけれど……」


「おお、よろしく、我がライバルよ!……ところでアルシーノ、親が医者だろ?」


「な、何で分かるの!? って、恥ずかしいからその名前やめてっ」


「探偵の勘みたいなものさ」


「はいはいそうですか……。どうやらあなたの頭では妄想の世界と現実世界が混ざってしまっているらしいわね」


「ふっ、お前が何を言っているのか俺には分からないなぁ! シャーロック・ホームズなら世代を越えてここにいるではないかっ」


「…………もうご勝手にどうぞっ。でも一つ言っておくわ。絶対アルセーヌ・ルパン集の方が奥が深くて面白いわっ」


「はぁぁ!? そんな訳無いだろっ! ルパンなんてほとんど恋愛小説じゃないか!」


「はぁ……分かってないわね。ミステリーと恋愛が混ざっているから面白いのよ!」


「違うっ。本当に面白いのは純粋なミステリーだけだっ!」


「うっ…………まぁ、何を面白いと感じるかは個人の自由だけれど、この素晴らしいアルセーヌ・ルパン集を馬鹿にするのは許せないわっ。時間がかかったとしてもこれからあなたに________ 」



 シノはピンと伸ばした人差し指を俺に向けた。



「________恋の素晴らしさと面白さと奥深さを分からせてあげるわっ!!________ 」



 えっと…………つまり恋を俺に教えてルパンが面白いと証明する、というわけか。顔は真っ赤だし、手も少し震えてるし、かなり熱くなっているようだが…………まあ、この俺を中学一年生ごときが諭すことなどあり得ない(お前も中学一年だ)



「…………ふっ。望むところだ! かかってくるがよいっ」


「…………もぉ二人ともっ! 会ったばかりなのにケンカしないでよぉ」


「すまんユキ、つい熱が入ってしまった……。

 こほんっ。そろそろ本題に入ろう。アルシーノ、なぜ俺たちをここへ呼んだのだ?」


「だからその名前やめてっ。まぁいーや。マ、マコト……

 これを見て」



 シノは俺の目の前に「新規部活動登録書」と書かれた1枚の紙を突き出した。



「おぉ、この契約書に署名すれば文芸部が作れるのか」


「…………まあそうね、新しい部を作るには最低3人の部員が必要なの。だからあなた達に入ってもらいたいの」


「分かった、でも条件がある」


「条件?」


「そうだ、1つは俺を部長にすること、もう1つは君がシャーロックホームズ探偵社に加わることだっ」


「探偵社ぁ?……うーん、まあいいわよ」



 断ると思いきや、結構あっさりと受けた。逆に疑わしくなる。

 が、怪盗がすぐ傍にいるのもなかなか面白い。



「では……これより、三山シノをシャーロックホームズ探偵社の一員として迎えるっ! そして、文芸部の活動を開始する!」




 それは、これから世界を驚愕させる(可能性が僅かながらある)我らのストーリーの始まりだった____

時々出てくる( )は中二病発言の翻訳、及びツッコミだと思ってください。


できるだけ毎日更新しようと思います。

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