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終わらないスタンピード  作者: ニシキギ・カエデ
第三章 託す希望と託された未来

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第七話 商談に集中する

評価ポイント平均がまた下がった…。残念。

戦闘回はまだ先なのでもう少しお待ちください。<(_ _)>ぺっこり



 その後、細々としたいくつかの事項が話し合われ、お昼を過ぎた辺りで解散した。


「システリナ王女――」

「ハヤト様、わたくしのことはどうかシアとお呼びください。仲の良いお友達はみんなシアと呼ぶんですの」

「わかりっ、いや、わかった。では―――シア」

「はい。なんでしょうか?」


 システリナ王女が花の咲いたような笑顔で答える。

 思わず敬語が出そうに成るが、まだフォルエン要塞の司令室だ。強気の性格を崩さないよう気を引き締める。


「これからハンミリア商会に向かう、ここで――」

「着いていきますわ」


 ここで待っていてほしいと言おうとして食い気味に同行すると言われてしまった。


「いや、少々不義理をしたので、その謝罪をしに行くだけだ。面白いことは何もないぞ?」


 不義理とは、例の軍のトップに直接交渉を持ちかけた件である。こういうのはなるべく早めに菓子折り持って挨拶に行くのが社会を旨く生きるコツだ。


「ハヤト様、別に面白そうだから着いて行くと言ったわけではありませんわ」


 システリナ王女から少しばかり心外なという空気を感じ取る。


「それはすまなかった。では何をしに行くのだ?」

「ハヤト様のこと、もっと知りたいのですわ」


 む、そう言われると男としてとてもうれしいが、オレはラーナがいる。

 だからお答えは……と思ったが、システリナ王女からはこの世界の若い女性特有の肉食獣のような浮ついた空気は感じない。

 本当にただ知りたいだけと言った雰囲気がした。


「ハヤト殿、すまないがシステリナ様の要望を聞いては下さらぬかのう」

「まあ、良いが。――本当につまらないぞ?」

「ええ、とても楽しみですわ」


 イガス将軍の口添えも合って連れて行くことになってしまったが、話がかみ合っていない気がする。

 うーん。システリナ王女は一体何を考えているんだ?




 △




「お久しぶりです、ハヤト様」

「久しぶりだな。ミリアナ会長が窓口にいるなんて珍しい」


 システリナ王女と共に、要塞内にあるハンミリア商会出張所に行くと珍しく窓口にミリアナ会長が座っていた。

 彼女は王家御用商会の会長をしているだけあってかなり多忙だ。いつもはオレとの交渉用に専門のスタッフが対応していた。

 こうして合うのは実に三ヶ月ぶりくらいになる。


「はい、あの子は産休に入りましたので、それにハヤト様に頼みごともありまして、今日はこの場に座らせていただきましたの」


 なんと、あのスタッフの子、産休に入ったのか。

 そういえば兵士の人たちにグイグイ行っていたのを見たことがあったが…。

 さすがはこの世界の肉食系女性。


「それはめでたいな。スタッフの子にはいつも世話になっていた。おめでとうと伝えて欲しい」

「受けたまわりましたわ。それと、ハヤト様はどのような…っ、後ろに居られるのはシステリナ様では!?」

「こんにちはミリアナ。先日は動きやすい服を仕入れてもらって助かったわ」


 ミリアナ会長の目が後ろに行き、そこにいた人物を見て瞳を大きくした。

 王家御用商会ということだから彼女たちは互いに面識があるのは当然だった。

 驚きの表情をするミリアナ会長に、着ているワンピースのような服をひらりと見せて微笑むシステリナ王女。

 その服はハンミリア商会で買ったらしい。


「気に入ってもらえて幸いです。これからも手を抜かず精進していきますわ」


 さすが王家御用商会会長、すぐに気を持ち直し、システリナ王女に対応する。


 とりあえず挨拶はここまででいいだろう。

 お得意様と予想外に出くわして困るだろうが、システリナ王女は今日は関係ないのだ、あまり気にしないでくれと言って本題を話しだす。


「今日、ここに訪れた経緯だが――」


 今日ここに来た説明と共に、勝手にハンミリア商会を通さず軍と直接やり取りしたことを謝罪する。


「ハヤト様は律儀ですわね。でもそこに好感が持てますわ。話は分かりました、ですが別にハンミリア商会への納品数が減る、というわけではないのですよね?」

「ああ。軍は別口だ。ハンミリア商会へ納品する分の武具やアクセサリーの類の数は減らす予定は無い」

「なら構いませんわ。ハンミリア商会が売る対象は軍ではありませんから」

「そうか、助かる。いつも通り、いやそれ以上に今日は買わせてもらおう」


 今日納品する分の商品を『空間(アイテ)収納(ムボッ)理術(クス)』から取り出し、さらに交易用にいくつか造った試作品のアクセサリー類をテーブルに並べる。

 オレが『空間(アイテ)収納(ムボッ)理術(クス)』を使った時システリナ王女からギラリとした視線を感じたような気がして振り向いたが、そこに居たのは驚いた風の表情をしたシステリナ王女だけだった。気のせいか?


「ふふ、ありがとうございます。査定させていただきますね」


 ちらりとシステリナ王女を気にするミリアナ会長だったが、気を取り直して一つ一つ試作品や納品した武具の類を見ていった。

 一応、武具以外の納品というのは政府に詳しく知られていない。

 宰相が指示したのはサンクチュアリ製長剣ワイバードの交易だけなので、政府の文官だったシステリナ王女が気になるのだろう、…多分。


 とはいえ、彼女はフォルエン王国を出るため心配はいらないと思う。

 しかし当のシステリナ王女が興味深そうにアクセサリーを横から見てくるのは確かに気になる。


 あまりシステリナ王女の事を気にしないようにして商談に集中しよう。何しろ今日の作品は自信作なんだ。


「すばらしいですわね。特にこの宝石の中が星のようにきらめく“星のしずく”は精製方法が見当もつきません、美しさも大きさも一級品、高値で取引されることは間違いありません」


 それは最近新しく得た【錬成魔法士】第十三の魔法『粘成融合』という素材と素材を粘土のように捏ね合わせて新しい素材を生み出す魔法で作ってみた試作品だ。

 どんなに硬い素材でも混ぜられるが、素材にしか使用できず、道具などすでに完成している物には効果が無いなどの制限はあるが、その活用法は幅広く夢が広がる魔法だ。


 最近はこの魔法で何が出来るのか検証することに凝っていて、その過程で生まれた作品は多い。

 ちなみにその “星のしずく”と命名された宝石は、とある昆虫系魔物の眼とその辺にあった石を『粘成融合』した物だったりする。

 その組み合わせで何故か、複眼がダイヤモンドのカットのごとく妙な采配で美しく映り、石が透明になって宝石のように透き通って見え、中にはキラキラと火の粉が舞っているような光を反射する傷がついている“星のしずく”が出来上がってしまうのが『粘成融合』だ。


 このような変な素材から豪華な品物ができるので『粘成融合』は面白い。

 とはいえ、そのまま出すのでは芸が無いので【造形技師】に仕事してもらって形を整えた上でネックレスに加工してあるが…。

 見た目はいいんだよ、すごく高そうだ。

 材料は絶対に言えないけれど。


 品評会のように作品を評価された後、しばらくして査定が終わり、金額を提示してもらう。

 最近は物の価値というのが分かってきたつもりだったが、例の“星のしずく”と名付けてしまったアレがワイバードとほぼ同じ値段がついているのを見て再び物の価値が分からなくなってしまった。

 あれが七桁で取引されるのかぁ、と内心ドキドキする。


 文句はないので了承して口座に入金してもらい、そのままハンミリア商会が借りている倉庫まで移動して今日の商品を物色。

 ここ最近来ていなかったのだが、生野菜などは普通にある、自分が来なければ軍に売るので足の早いものも毎日入荷しているとのことだ。すごい。

 せっかくなので野菜類は全部購入。

 他にも食料品はあって困るようなものでもないのでほぼ全品購入を決めた。

 他にもサンクチュアリでは手に入らない木材やら鉱石やら、その他小物類や木製馬車なんかあったのでこれも購入しておく。

 結局、口座に大量に溜まっている金がそこをつきそうな勢いで大量購入し、倉庫の商品の九割が無くなった時点で買い物は終了した。

 ミリアナ会長は頬を若干引きつらせていたけれど、システリナ王女は楽しそうだった。



誤字報告、いつもありがとうございます!! もっと書き方旨くなりたい!(切実)


作品を読んで「面白かった」「がんばれ」「楽しめた」と思われましたら、ブクマと↓の星をタップして応援よろしくお願いします!


作者、完結までがんばる所存ですが、皆様の応援があるとやる気が燃え上がります。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 一見散財だけど、養う人口が人口だからなあ…。 むしろ一商会の在庫でそれが出来るのがスゴいと褒めるべきか。
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