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終わらないスタンピード  作者: ニシキギ・カエデ
第二章 王国の産声

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幕間 『職人街・とある少女の日常』

とある少女視点。

時系列:ラーナ妊娠期間中。



「すんごいの。服がたくさんあるの」

「好きな服着て良いって、一人一着までだけど、喧嘩しないようにだってさ」


 職人街に出来た服屋さん? ていう新しく出来た建物でハヤト様が作ってくれた服が貰えるの。

 すんごいの、こんなたくさんの服見たこと無いの。


 驚いて見回していると、服屋さんを任されているお姉さんが声を掛けてくれたの。

 服がタダで貰えるなんて、とんでもない事なの。


 今私が着ている服はもうずいぶん着っぱなしだからかなりボロボロなの。

 最近お腹いっぱい食べられるようになってキツくなってきて、換えの服が欲しいなと思っていたの。


 やっぱりハヤト様はすんごいの。


 毎日お腹いっぱい食べられるのも、魔物に怯えなくても良いのも、服が貰えちゃうのも全部ハヤト様のおかげなの。とってもすごくてカッコイイの。


「ほら、早く選ばないと良い服全部持って行かれちゃうよ」


 私の後ろに並んでいた二個歳上のお姉さんが感動で動けなくなっていた私をせっついてくれたの。


「あ、思い出したの。この中から好きな服を選んで良いって言われたの!」

「そうよ。服が貰えるだけでも幸運なのに、選んで良いなんてとんでもない強運よ。ちゃんと自分に似合う服を選ばないとハヤト様に申し訳ないわ」


 た、確かにそうなの。

 でも初めてだからどれを選べば良いのかなんてわかんないの。

 どうしよう。


「ね、よかったら見せ合いっこしない? 自分で似合うかなんて他人が見ないとわかんないじゃない、だからお互い相手が似合うか見て貰えれば良いと思うのよ」


 困っていたら後ろに居たお姉さんが提案してくれたの。

 さすが年上のお姉さんなの。見せ合いっこなんて考えた事も無かったの。

 もちろんやるって答えたの。



「お姉さんすごくよく似合うの!」

「ありがとう。そっちも良い感じじゃない。少しぴったりしすぎな感じもするけど、ここ(・・)じゃ服はどんどん作ってくれるらしいから、何年も着られるようにダボついた服を選ばなくても良いって聞いたしね」


 誰かが着たお古な服じゃ無く、新しい服を着たのは初めてだったの。

 すごく綺麗で、本当に私が着ても良いのか不安になるほどだったの。


 お姉さんの言うとおり、私は自分の身体に合ったぴったりな服を着ているの。

 普通なら服はとても手が出せないほどお高いの。だから何年も同じ服を着るの。

 私みたいな小さいうちは成長するから大きめの服を着るの。


 なのにハヤト様は、服はたくさん作れるからって言ってぴったりの服を着るように言っていたらしいの。

 服が作れるなんてとてもすごいの。


 そう思って二個上のお姉さんに言うと、驚きの答えが返ってきたの。


「まあね、年長組のみんなで頑張って作っているからね。私も【裁縫見習い】の職業に覚醒して何着かここに卸したんだよ」

「お、お姉さん職業に覚醒したの!?」


 しかも、ここにある服の一部はお姉さんが作ったなんて、すっごくびっくりしたの。

 職業に覚醒できる人はすんごく少ないの。なんだかお姉さんがキラキラして見えるの。


「ふ、ふふん。尊敬の眼差しを受けてしまった、なんだか照れくさいなぁ」


 お姉さんはニコニコしながらホッペをポリポリしている。なんだか、出来るお姉さんって感じがするの。


「ね、お姉さんの作った服見せてほしいの」

「え!? い、いやぁ、まだまだ出来が悪くてあまり見せたくないんよ、また今度、もっと上達したら見せてあげるから。ね?」


 お姉さんがハヤト様が作った服をチラチラ見ながらそう言うけれど、あれだけ自慢されたら見てみたいの、ちょっとで良いからみせてとお願いしたら、お姉さんは少し項垂れるようにしながら案内してくれたの。


「こ、これなんだけどね?」

「すごいの! ちゃんとした服なの! 服を作っちゃうなんてお姉さんはすごいの!」


 私は大興奮してお姉さんが作った服を見たの。

 ハヤト様が作った服と同じ形なの。私は服なんて作れないのでお姉さんのすごさがよく分かるの。でも、どうしてそんな気まずそうなの?


「う、初心者が作ったから少し(いびつ)な感じになっちゃっているのよ。何度か手直しも加えたから生地にもゆがんじゃっているし。形にはなったけれどまだ下手っぴなのよ私」


 言われてみればそうかもしれないけど、私は気にならないの。

 前私が着ていた服の方が酷かったの。袖も右と左で長さが違っていたし、脇には穴がいくつも空いていたの。


「ま、これじゃあ着る人は居ないよね。もう少し上手くなったらまた見せるよ」


 そう言って苦笑いするお姉さんに私は少しムッとしたの。


「私、これ来たいの。ううん、着るの!」

「え!? おいやめておいた方が良いって、今着ているやつの方が何倍も良い出来しているんだから、無理にこっちに着替える必要は無いって」

「やっ、なの!」


 お姉さんの提案を私はバッサリと否定したの。

 今着ている服はハヤト様が作り、お姉さんが選んでくれた物だけど、なんとなくお姉さんが作った服の方が良いように思ったの。


「え、ええ? ええと。うんまあ、その、ありがとう?」

「うん、大切に着るの!」


 結局押し切ってお姉さんが作った服を貰うことになったの。

 なんだか、こっちの方が落ち着くの。

 前着ていた服にちょっと似ているの。


 服屋さんからの帰り道、仲良くなったお姉さんはずっとニコニコニヤニヤしていたの。


 途中、また何か建物を作っているハヤト様を見かけたの。


「すんごいの。みるみる出来ていくの」

「服だけじゃなく、何でも作っちゃうからねハヤト様は。本当、すごい人だよね」


 お姉さんのハヤト様を見つめる顔が色っぽい気がするの。

 私、すぐにピャンと来たの。これは噂の甘酸っぱくて女の子が大好きな奴なの。


 これはお姉さんのこともっとよく知るチャンスだと思ったの。


「もう少しハヤト様を見ていくの」

「え? ああ。そうだね。いいかもしれないね」


 お姉さんは私の提案に戸惑いながら頷いてまたハヤト様を熱い眼差しで見つめるの。

 これは間違いないと思うの。


 しばらく見つめていると建物が完成したようなの。

 こんなに簡単にパパッと作っちゃうなんてハヤト様はすんごいの。

 今度は建物の中を作るみたいなの、ハヤト様が中に入って見れなくなるとお姉さんが少し肩を落としたの。これは私の出番だと思ったの。


「中に入ってみようなの」

「え? ちょ、ちょっと待ちなさい、ハヤト様の迷惑になるでしょう!」

「その時は出れば良いの~」


 お姉さんの制止をスルーして私は建物内に入ったの。

 そこはとっても広い部屋だったの。でもハヤト様がいないの、どこ行ったの?


「待ちなさいって」


 お姉さんが追いついてきたので慌てて奥に進んだの、そしたら奥にもう一つ部屋が合ったの。


「音がするの、多分あっちにハヤト様がいるはずなの」

「い、いや、だからダメだってば」


 言葉では否定していてもお姉さんは私に追いつかないの。全力で追いかければ私くらい捕まえられるはずなの、それなのに捕まえられないと言うことは本心ではハヤト様に会いたいって事なの。私、頑張っちゃうの。


「あれ? 二人ともどうしたんだい?」


 奥にはハヤト様がいたの。相変わらずかっこいいの。

 そこは昔覗いたことのある食事処の厨房に少し似ていたの。

 ハヤト様はこの部屋を作っていたみたいなの。


「あ、いえ、私たちは、その」


 さっきまで強気だったお姉さんが弱々になっているの。これはいけないの。


「ハヤト様が何を作っていたのか見てみたかったの!」

「はは、そうだったのか。いいよ、見学していても。もうすぐこの部屋も終わるからね。でも普段は工事中の時は危ないから無闇に近づかないようにね」

「分かったの。ハヤト様、ありがとうなの」


 ハヤト様の作業の様子を見学させて貰えることになったの。

 でもすぐに作業は終わってしまったの。ハヤト様、仕事が早すぎるの。

 お姉さんもぽかーんとしちゃっているの。


 完成した部屋を見渡してみると、見たことも無い物がたくさんあったの。


「ここは何のお部屋なの?」

「ここは厨房だよ。台所って言った方が分かるかな? みんなのご飯を調理する場所だよ」

「ご飯なの!」


 その時、グ~っとおなかが鳴る音が聞こえたの。


「あはは、ごめんね作業を終えたら気が抜けちゃったみたいだ」


 音はハヤト様のところからだったの。

 ハヤト様はお腹が減っていてここは台所なの。これは大チャンスなの!

 私はまたピャンと来たの。


 お姉さんに素早く相談。お耳を貸して貰って内緒話なの。


「お姉さんビックチャンスなの、ハヤト様のお腹を掴むの」

「え、ええええ!? む、無理だってば!」


 お姉さんの弱々な部分が邪魔をするの。ここは少し強引に行くの。

 ハヤト様にお姉さんの思いを代弁するの。


「―-お姉さんがハヤト様に料理を振舞いたいと言っているの」

「ええええ!!??」


 お姉さんが驚いてどうするの。ほらハヤト様が苦笑いしているの。


 でもさすがはハヤト様。私たちの気持ちを汲んでくれて食料をどこからともなく出してくれたの。


 そこからお姉さんの挑戦が始まるかと思いきや、お姉さんは料理なんてしたことがないそうなの。これは誤算だったの。


 ここは私の出番だと思ったの。

 お姉さんを陰から支えるの。

 でも私もお料理はしたことがなかったから、ハヤト様に作ってもらったの。


 お肉がとってもおいしかったの。


 何か忘れている気がしたけれど、いいの。

 だってお肉は正義なの。


 ここは毎日がとっても楽しいの。 

 こんな日が永遠に続けばいいなと私は思うの。



誤字報告ありがとうございます! いつも感謝です!


サンクチュアリ内の発展の一幕を書かせていただきました!

今回の幕間は一話のみ。明日から第三章に入ります。

楽しんでくれたら幸いです!


作品を読んで「面白かった」「がんばれ」「楽しめた」と思われましたら、ブクマと↓の星をタップして応援よろしくお願いします!


作者、完結までがんばる所存ですが、皆様の応援があるとやる気が燃え上がります。

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