表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
終わらないスタンピード  作者: ニシキギ・カエデ
第二章 王国の産声

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

66/126

第二十八話 前言撤回することもある



「おかえりなさいハヤト様。お仕事お疲れ様です」

「ただいまラーナ。お風呂の後に少し話がしたいのですが時間はありますか?」

「もう、夫婦なのですから時間なんていくらでも作りますよ。お茶を用意しておきますね」


 スタンピードの討滅が終わった翌日。

 オレはここ最近空ける事が多く、完成したばかりだというのに一夜も明かしたことが無い自分の城に帰宅していた。

 完成した数日前にスタンピードを発見したため、この城に寝泊りしたことが無いのだ。

 新しいラーナとの新居なのに…。

 と、軽く凹んでしまうが、ラーナの労いでそんな気持ちも吹き飛んだ。

 これから存分に満喫すれば良いんだ、今日は存分にスキンシップをしようと心に決める。

 早く風呂に入ってこよう。

 ラーナが入れてくれたお茶が楽しみだ。


 大浴場かと思うほど広い王族専用の浴槽に魔法でお湯を入れて浸かる。

 ふう。生き返る。やはり日本人は風呂に入らないと…。


 昨日は宴会からそのまま就寝に直行したので今日の朝は酷いものだった。

 軽く水浴びして戻ってきたので臭いは誤魔化せただろうけれど、やはり一日一回風呂に入らないとなんか気持ち悪いし、なんとなくラーナと一緒に居られない感じがするからね。


 さっぱりして湯を出て、王族居住スペースのあるエリアに足を運ぶ。

 作ったのは自分のはずなのに、なんとなく新鮮な感じがする。


 ラーナの部屋の前で立ち止まる。

 なんとなく緊張するな。

 まるで初めて異性の部屋を訪れる心境みたいだ。

 ……いや、まさにそれだ。オレ、城が建ってラーナの部屋を訪れるのは初めてだった。

 自分で作った部屋なのに、ラーナがそこに居るだけでこうも緊張するのか。


 ちらっと上を見る。

 …ルームプレートに日本語で『王后ラーナの部屋』と書いておいたのは失敗だったかもしれない。

 でもこの世界の文字だとラーナが読めてしまってなんとなく恥ずかしい。

 ならルームプレートなんて作るなという話なのだが、クラフトマンだったオレの血がルームプレートだけは譲れないと変なこだわりを発揮した結果だ。

 これがあると、何故か安心する。日本人的な意味で。

 同時に緊張もするけれど。


 それはさておき、気を引き締めてノックする。

 ラーナの声で返事があったので一応名乗ってから入室しようとしたところ、内側からガチャリとドアが開けられた。

 開けたのは足首まである丈の長いメイド服を着たルミだった。

 そういえばルミにラーナの補佐を頼むとお願いしてメイド服を作っておいたのだった。

 この世界ではメイドはいるが決まった制服等は無いとの事だったので、せっかくだから元の世界風メイド服を作ってみた。

 丈が長いのは、まあ、うん。短いとラーナに子どもたちに気があるのでは勘ぐられるかもしれないと、そんなことを思った結果だ。

 今はルミを見てもなんとも思わないが数年後ミニスカメイド服を着たルミが仕事をしている光景を考えたら、とても目のやり場に困る、と判断した。


「ありがとうルミ」


 側でドアを開けたまま控えてくれるルミに礼を言って中に入るとルミが音も立てずドアを閉めてくれた。

 ルミは【補佐見習い】の職業の影響か11歳にしてすでに立派なメイド風を吹かせていた。


「ハヤト様。お茶の準備が出来ていますわ。さ、こちらの席にどうぞ」


 ラーナが勧めてくれたソファーに腰掛けると、ティーポットから紅茶を注いでくれたラーナが前のテーブルに置いてくれた。

 このお茶はフォルエン王国からの交易品だ。というかティーセットとソファーやドアも交易品だ。

 さすがに城を全部石作りにするのは抵抗があったので、創作の参考資料の意味もかねて交易品で色々なものを仕入れている。

 フォルエン王国の交易品は高級なものが多く高値だが城の調度品としてはちょうどいい。

 ラーナも喜んでくれているのでちょっとくらい贅沢してもいいだろう。


 今日のラーナは白をベースとしたフワフワスカートのドレスを着ている。

 お気に入りなのか白バラの髪飾りを最近よく着けている。このチャームポイントが可愛らしいのだ。ラーナによく似合う。


 ラーナは白のドレスがこれ以上ないほど良く似合うので、オレが大量に作っておいた。

 すでに衣裳部屋が半分近く埋まり、ラーナが一年毎日違う服を着ても被らないほど作ってしまったのは少しやりすぎたかもしれない。


「今日もとても可愛いですラーナ。やはりラーナは白がよく似合いますね」

「ふふ、ありがとうございます。素敵な服が多くて、いつも何を着るか迷ってしまって大変なのですよ?」

「はは、ラーナがあまりに魅力的過ぎて作りすぎてしまいました」


 なんとなくラーナを想像しながら針を動かしていると、これがビックリするくらいポンポンと出来てしまうのだ。

 オレは職業補正もあって仕事が速い。ちょっと妄想に意識が持っていかれてしまうと気が付いたら十着くらい完成していたなんて事もあった。

 なのでこれは仕方の無いことなんだ。


 ラーナも困った風を装っているが好感度が上昇しているのをオレは感じ取っていた。

 ラーナは服が好きだ。やはり女の子は綺麗な服を着るのが好きな例に漏れず、ラーナも綺麗な服に目がない。

 服をプレゼントすると目をキラキラさせて頬を高揚させ、はにかみながら受け取ってくれるというたまらなく可愛いしぐさをするので服作りがやめられないのだ。



「あの、ハヤト様にお願いがあるのです」


 しばらくお茶と会話を楽しみ、その後今回のスタンピードの報告をしていたところ、聞き終わったタイミングでラーナが真剣な表情をつくる。どうやら真剣で重要な話らしいのでオレもしっかりと聞く体勢を執った。


「ラーナのお願いならいくらでも聞きますよ」

「ありがとうございます。実は、……わ、私を、ですね。その、…ちょ――」

「ちょ?」

「――ちょ、超越…者に、してほしいの、です」


 よほど言い辛かったのか顔を赤くして上目遣いでチラチラ視線を向けてラーナは言った。

 そんな可愛いしぐさをしても答えは一つ。


「――ダメです」

「そ、そんな!」


 何故そんなことを言い出したのか分からないがラーナにラゴウ元帥のごとく魔物を屠らせるなんてとてもではないが看過できない。


 そういえば初めてラーナの発言を拒否したかもしれない、呆然とするラーナを見て心が痛んだ。

 もう少し言い方があったかもしれない。

 つい即答で否定してしまったけれど、もしかしたらラーナには深い考えがあったのかもしれない。

 どんな考えかは分からないが、それを聞いてから否定するべきだった。とはいえ絶対そんな危ない真似はさせられない。

 どんな理由があろうともオレがその願いを許可することは無いだろう。


「すみませんラーナ。その、理由は何故でしょう?」

「あ、――酷いです酷いです! せっかく勇気を振り絞って言ったのに即答でダメだなんて酷いです! その、私はただ、ずっとハヤト様と一緒に居たくて…。超越者になれば寿命だって延びてずっとずっと一緒にいられると思っただけで」

「許可します」


 前言撤回。

 ごめんラーナ、オレが悪かった。

 安全に超越者に成れるプランを考えてみるね。




またまたまた誤字報告ありがとうございます! いつも本当に助かっています。

なんとか誤字を無くそうと見直しては要るのですが見逃してしまう! すみません。

本当なら反省すべきなのですが、ちゃんと読んで貰えているのだと嬉しさもあってついニヨニヨしてしまう! ごめんなさい<(_ _)>

よ、よーし。次こそ誤字無くすよ!


作品を読んで「面白かった」「がんばれ」「楽しめた」と思われましたら、ブックマークと↓の星をタップして応援よろしくお願いします!


作者、完結までがんばる所存ですが、皆様の応援があるとやる気が燃え上がります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ