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終わらないスタンピード  作者: ニシキギ・カエデ
第二章 王国の産声

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第二十五話 スタンピード・レベリング



 ハヤトです。

 この世界に来て早くも五ヶ月。

 最初の二ヶ月弱は一人で寂しく狩人生活していましたが二千人の子どもたちを引き取ってからは建築に精を出していました。そして早三ヶ月、ようやく当初の企画通り城砦都市サンクチュアリの設計案、その第一弾が完成したのです。

 しかし、それを祝う祭りを開催しようと計画していたところ無粋な輩が現れました。

 そう、月に一度くらいのペースで進攻してくるスタンピードです。




「連絡する。スタンピードは現在、フォルエン要塞から視て北東の方角から真っ直ぐ南下してきている。人型、虫がメインの構成のようだ。オレの予想では約四日後に衝突すると思われる。数は推定六万だ」


 フォルエン要塞最高司令室でオレの報告を聞いたラゴウ元帥とイガス将軍が立ち上がる。


「連絡感謝する。今回のスタンピードは司令官を我よりイガス将軍に譲渡する。フォルエンの大壁にてその大群を受け止め、全戦力を持ってスタンピードを滅ぼせ」

「はっ! 身命に代えましてもこの大任を果たして見せましょうぞ!」

「任せたぞ。我はハヤト超越者と下に降り、強力な個体を中心に殲滅する。人種の命を無駄に落とすな。大壁を乗り越えさせることは我が許さん」

「「「はっ!!」」」


 最高司令室に重苦しい声が響き渡り、イガス将軍、そしてここに集まっている全ての将官士官が一斉に立ち上がりフォルエン軍式の敬礼を執った。




 スタンピードは足の遅い人型と虫の構成だったためか、いつもより襲来は遅かった。

 オレはここ十日ほど毎日のようにスタンピードが来ないか確認しに出向いていたのだが、三日前、城塞都市サンクチュアリを目指すスタンピードを見つけた。

 フォルエン王国より北にある城塞都市サンクチュアリはスタンピードに狙われやすい。

 今回はフォルエン王国ではなく城塞都市サンクチュアリに狙いを定めているらしかった。

 そうはさせない。


 フォルエン軍の動向に気を配りながら城塞都市サンクチュアリに向かおうとするスタンピードを東へと三日掛けて誘導し、狙いを城塞都市サンクチュアリから近いフォルエン要塞へと逸らすことに成功した。


 これは別に押しつけたわけでは無い、ラゴウ元帥を育成するためにスタンピードをフォルエンに向かわせる必要があったのだ。

 準備期間を設けて、さらにオレも殲滅に協力するのだからあの時のフォルエン軍より酷くは無いと思う。


 準備期間は四日しかなかったが、通例からそろそろスタンピードが襲来してもおかしくないと準備を進めてきたフォルエン軍は三日でほぼ準備を完璧に終わらせた。

 フォルエン軍の兵数は八万。少ないとは思うが、今まで他国に男を送ってきたためこの数も仕方が無い。

 それに、兵の質の面では優秀だ。前回大壁を抜かれたのに士気はかなり高い。

 これもラゴウ元帥の薫陶のたまものだろう。


 スタンピードがフォルエン要塞に到着する前日。

 今日はいよいよラゴウ元帥を連れてスタンピードへ奇襲を掛ける。


 この日を選んだのはいくつか理由はあるが、一番はスタンピードの進路をフォルエン要塞に固定するためだ。

 つまり囮役も兼ねている。

 僅かに進路が逸れるとサンクチュアリに行く場合もあるからね。

 あと要塞から離れすぎると移動に体力を使ってしまいラゴウ元帥の負担になってしまうと言う理由もあった。


 ラゴウ元帥の腕前はこの一ヶ月手合わせなどをして熟知している、レベル30帯の魔物なら一人で倒せるレベルだ。

 このスタンピードはレベル20ちょいが多く、30以上は少数。

 そのため数をこなせば良い感じにレベルが上がっていくだろう。

 うまくいけばこの一回のスタンピードで超越者に至るかもしれない。


「ラゴウ元帥よ、準備は良いか?」

「無論だ。我が超越者に至れねば、フォルエン王国が崩壊するのも時間の問題。人種が生き残るか否かがこの戦いで決まるのだ。――ハヤト超越者、頼むぞ」

「……わかっている」


 重い言葉だった。

 ラゴウ元帥の言葉はいつも重い。

 それは人種の未来を背負っているからこそなのだろう。

 オレも二千人の彼女たちの未来を背負っているが、それとは比べられないほど、この人の背負っている物は大きく、そして重い。

 気を引き締めていこう。




 ラゴウ元帥は馬を、オレは“走術”でスタンピードに接近する。

 オレの作戦はシンプルだ。

 結界で隔離してラゴウ元帥に戦って貰う。

 オレが捕まえ、結界の中に弱らせて投入、そこで結界の中で待ち構えていたラゴウ元帥が狩る。

 今までの経験でトドメを刺す行為は経験値の獲得量が多いことはわかっているのでこういった戦法を執った。


 ラゴウ元帥はオレの弱らせた魔物を狩るという、見方によれば屈辱的に映る方法でも、人種のためだと言って何の文句も言わず受け入れてくれた。

 体力回復系のスタミナチャージなども併用し、出来れば日が暮れるまでレベリングをやり続ける予定だ。




 スタンピード、推定六万。

 やはり万を超える魔物というのはいつ見ても恐怖を感じる。

 広大に広がった魔物が地響きのように足を鳴らして接近してくる。

 こっそり『奮い立つ心』で恐怖を和らげた。


 しかし、そんなオレとは違い、ラゴウ元帥に恐怖の色は無い。

 ラゴウ元帥はただスタンピードを睨み付け、一人闘気を漲らせていた。

 さすがだ。この大戦力を見ても躊躇しないとは。


「ラゴウ元帥はここで待機を、早速生きの良いのを見繕ってくる。『結界(バリアク)構築(リエイト)』!」


 オレはラゴウ元帥をその場に残し、『結界(バリアク)構築(リエイト)』で三重の結界で囲む。

 『結界(バリアク)構築(リエイト)』は余り強くは無い結界だが、三重に囲むことで強度は増し、さらに魔物を中に入れるとき自在に形を変えられるので便利だ。


 『瞬動走術』で素早くスタンピードに接近し、殺さないよう気をつけながら“長剣ワイバード”を叩き付けて無力化し、『山積運搬』で数十匹纏めてラゴウ元帥のところへ持って帰った。


「“変形”! ラゴウ元帥!」

「ご苦労。――ふんっ!!」


 結界を一部変えて中に魔物を放り込むと、ラゴウ元帥がただの横薙ぎに大剣を振るう。

 それだけで数匹の魔物がログに流れた。

 力強い剣技だ。


 最初は低レベル帯の魔物を持ってきてラゴウ元帥のレベルを上げる。

 ラゴウ元帥の【大剣士】のレベルは23、レベル20以上の魔物を送り込んで万が一が遭ってはいけないのでレベル40を超えるまではレベル10帯の魔物でレベリングだ。


 魔物を運搬して放り込むとき『体力(スタミナ)回復(チャージ)』もしてあるので疲れず作業に集中できる。

 これを繰り返し、一時間に一回は休憩と移動したスタンピードを追いかける時間に充て、それ以外はレベリングに費やした。


 しかし、オレはやはり過保護だったらしい。いや、日本人らしく安全に気を遣いすぎだったのかもしれない。

 ラゴウ元帥はおそらくこの世界の人の中ではトップクラスに強い。

 あっという間に要領を掴み、敵を多く仕留める剣技を見極め、夕方頃にはピンピンしている状態のレベル20帯の魔物を数十匹相手にしてもラゴウ元帥は楽に屠れるように成っていた。

 オレは少し、心配しすぎていたらしい。




誤字報告助かります! 毎度お世話になりますすみません! な、なるべく無いように頑張ります!


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作者、完結までがんばる所存ですが、皆様の応援があるとやる気が燃え上がります!

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