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終わらないスタンピード  作者: ニシキギ・カエデ
第二章 王国の産声

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第十七話  定例の連絡



 結婚式の翌日。

 目を覚ますと横に一糸まとわぬラーナが寝ていた。

 それを見て昨日の夜の光景が甦る。


 ラーナは14歳との事だったが後悔は無い。捕まって箱の中で一生を過ごすことになったとしても絶対後悔はしないだろう。そんな一時だった。


 ラーナも昨日の事で疲れただろう。今日はゆっくり寝かせておいてあげよう。

 軽くラーナの髪を撫でて、ゆっくり身を起こした。


 ラーナを起さないようにゆっくりベッドを出て自分用の部屋に戻り、勇者装備一式に着替える。

 今日はフォルエン軍との定例の連絡を行う日だ。


 外に出るとルミがいた。顔を真っ赤にしてオレを見つめている…。


「おはようルミ」

「お、おはようごじゃりましゅ!」


 かみかみだった。

 きっと昨日のオレとラーナが何をしていたのか想像していたに違いない。


 最近分かってきたけれど、彼女は意外とそっち系に興味津々なお年頃らしい。

 彼女の立場的によくオレとラーナの抱擁シーンに出くわすのだが目をそらしたことは一度も無い。むしろ顔を赤くしてマジマジ見つめている。


 それはさておき、ここにルミがいたのはちょうど良かった。

 今日くらいはラーナを休ませて上げたかったからね。


 ルミにラーナの事を頼んで、調理場に赴き、食材を取り出して自分の分だけ先にいただく。

 そうしていると調理班の子どもたちがやってきたので食材と改良済みの“ゼリーオイル改”を渡して後を任せる。


 各地水場に水を補給し、裁縫班用の毛玉を取り出す。

 城塞都市サンクチュアリの中を見回って問題が無いか確認しながら起きてきた子どもたちと少々スキンシップを楽しんだ。


 朝のルーチンが終わったので、少し早いがそろそろフォルエン要塞に赴こう。

 時間の指定は無かったが、早いに越したことは無い。


 手土産を持って要塞を飛び越え『瞬動走術』で突き進む。


 程なくしてフォルエン要塞が見えてきたので『稲妻の化身』を使って【勇者】アピールをしながら門前で止まった。

 オレを見て門の前で警備を行っていた兵士全員が直立不動になる。


「よ、ようこそ勇者様! お待ちしておりました!」


 警備隊長と思われる男が前に一歩踏み出しフォルエン軍式の礼を執ると兵士全員がそれに習う。よく訓練されているなぁ。

 しかし、出来れば勇者様はやめて欲しいのだが…、この格好では無理かなぁ。


 そんな事を考えていると兵士の何人かが要塞内に走り、オレは警備隊長に案内されて例の最上階の一室に向かうことになった。


 今日は定例の連絡に来ただけだ。連絡体制がないと困るということでオレが三日に一回、フォルエン要塞に顔を出すことになっている。

 今日はその初日なのでおそらく何かしらあるだろう。

 室内の気配は三つある。

 強大な気迫を放つラゴウ元帥、静かな闘気を持つイガス将軍。さて後一つは誰だろう?


「元帥殿、勇者様をお連れいたしました」

「…入るがいい」


 ドアを叩いて警備隊長が伝えると中からラゴウ元帥の重たい声が返ってきた。

 警備隊長がドアを開き、横に直立する。どうやら彼は入らないらしい。

 礼を伝えて中に入ると、ラゴウ元帥、イガス将軍の他に燕尾服のようなフォーマルな格好をした初老の男が立っていた。

 しかし執事というよりももっと格式高そうな雰囲気を感じる。


「ハヤト超越者、待っていたぞ」

「ラゴウ元帥、三日ぶりだ」


 相変わらず思わず背筋が伸びそうなくらいの闘気を放つラゴウ元帥に軽く挨拶を交わす。

 世間話などは一切無く、そのまま連絡事項に移った。


「スタンピードの気配は無い。現在我が軍が哨戒に出て打ち漏らしを殲滅している。今までの特性から次のスタンピードまで一ヶ月は持つだろう」

「この近辺の高レベルの魔物はいない。オレがすべて討伐した。兵士たちも安全マージンを意識すれば余計な犠牲を出さずに済む」

「我の糧に成るのはいないか」

「次のスタンピードまで待つしかない。超越者にいたるためには膨大な経験値が必要だからな」


 以前に交わした依頼の内容はラゴウ元帥を超越者にすること。

 ラゴウ元帥は今【王族】【司令官】【将軍】【大剣士】の四つの職業を持っていると教えてもらった。この中で最も超越者に近いのは【大剣士】だ。【大剣士】だけが上級職業で【司令官】と【将軍】は中級職に当たる。なので育てるなら【大剣士】だ。


 ただ、上級職業はレベル50からとんでもなくレベルが上がりにくくなる。

 レベル一桁の魔物では経験値がほぼ増えなくなるため、レベルアップにはそれなりの強さを持つ相当数の魔物が必要になる。


 スタンピードはおそらく共食いしながらここまで来る、その関係上レベル20を超える大物は少なくない。魔物はレベル20を超えると爆発的に強くなる。これを倒すことでレベル50以上の上級職業でもレベルアップしやすくなるのだ。


 旅をしていた頃そのことに気が付いたときは見かけ次第倒しまくっていたっけ。お陰で【槍戦士】や【大楯士】などがカンスト寸前までレベルが上がっていた。


 しかし、軍のトップという役目を負っているラゴウ元帥に旅なんてさせられないので、レベルアップはスタンピードを利用するつもりだ。つまり一ヶ月近く先になる。


 その話はそこで終了し、次にイガス将軍が簡単に連絡事項を話してくれた。


「前払いの品がいくつか届いていたわい。しかしすべて揃うには後十日ほど掛かるの」

「了解した。揃っているものだけ貰っていく」


 初の定例の連絡が大体の話が終わった。


 今回、サンクチュアリのラーナが【王】に覚醒し、オレも【王太守】に覚醒したという大きな情報がある、がこれはまだ報告しない。

 そこまでフォルエンを信用したわけではないからね。


 一息ついたタイミングでこれまで微動だにせず見ているだけだった燕尾服の男が動き出した。

 イガス将軍が燕尾服の男の隣に立ち紹介してくれる。


「ハヤト殿、この方はホムラデン・ガリルロッサ卿。フォルエン王国宰相を勤められておる」

「紹介に預かりましたホムラデン・ガリルロッサです。以後お見知りおきを」


 宰相とはまた大物が来た。

 しかし、何でここにいるんだ?

 確かフォルエン要塞からフォルエン王都まで早馬で二日くらいの距離があったはず。往復を考えればとても間に合わないと思うのだが、もしかしたらオレの知らない移送手段があるのかもしれない。


 ホムラデン宰相が軍式ではない、頭をやや下げる礼をしてきたのでオレもそれに返す。

 この人は軍属ではないのかな?


「【勇者】の超越者ハヤトだ。して、今日は何用か?」


 軍人ではないなら(わだかま)りはあまり無かった気がする、しかし今更態度を変えるのも変なのでフォルエン軍に対応するときと同じく強気にいくことにした。

 フォルエン王国宰相がオレに何の用なのか。大体想像は付くけれど、あまり良い予感がしないと思いつつ、ホムラデン宰相に促した。


「はい。フォルエン王国は現在孤児の受け入れ準備を進めております。我が国は自然にあふれた楽園のごとく美しい国。決してひもじい思いはしないでしょう。つきましては城塞都市サンクチュアリ住民、そしてハヤト殿、我がフォルエン王国に移住する気はございませんか?」


 と、ホムラデン宰相はとんでもないことをのたまった。




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作者、完結までがんばる所存ですが、皆様の応援があるとやる気が燃え上がります!

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 取り込むつもりでもすでに王になっちゃってるんだよな。
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