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終わらないスタンピード  作者: ニシキギ・カエデ
第二章 王国の産声

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第二章 切れる、簡単、超簡単

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次の投稿は数分後です! それではどうぞ!



「二人が同時に職業覚醒者に至るだなんて…ハヤト様、今度は何をされたのですか?」


 訊きたいのはオレの方なのだが、ラーナのこの反応からしてこの世界でもイレギュラーなことなのだと認識した。

 何故か驚きを通り越して呆れているラーナにワザとではないと説明する。


「覚醒」

「まさかわたくしが職業に覚醒するだなんて、夢のようですわ」


 職業に覚醒したのが相当嬉しかったのか、胸を張り高揚するメティと夢現のエリー。


 二人が職業に覚醒してすぐ、ラーナを呼んで状況を説明したらこうなった。


「そもそも他の誰かの手によって職業に覚醒するといった話は聞いたことがありません」


 困惑するラーナが教えてくれるが、ログが流れてすぐ二人同時覚醒したところから、オレの【大理術賢者・救導属】が何らかの作用をしたのは間違いないと思う。


「あ、いえ一つだけ方法が無いわけでもないのですが…」


 ラーナが何かを思い出した様子でオレを見つめてくる。

 流れからすると方法はあるとのことだが、難しいか、よくわかっていない方法なのか。


「ハヤト様にお聞きしたいのですが、ハヤト様は【王族】をお持ちですか?」

「【王族】、ですか?」


 ラーナの口から意外な言葉が出てくる。

 察するに他の誰かを覚醒させる方法というのが【王族】なのだろう。しかし、それは職業なのか?


「いえ、持っていませんね。その【王族】を持っていると職業を覚醒させることが出来るのですか?」

「はい。かなり限定的ではありますけれど。【王族】のアーツ『民兵覚醒』は未覚醒者を一時的に職業覚醒者に出来るのです」


 ラーナの話だと、【王族】は文字通り王家にのみ覚醒する特別(エクスト)職業(ラジョブ)なのだそうだ。

 一族で存命のうち五名までその職業に覚醒する可能性があり、その能力の一つ『民兵覚醒』というアーツは未覚醒者を一時的に職業覚醒者にするという。

 ただし、これは術者の寿命を対価に支払う必要があるそうだ。


「主に手に負えない規模のスタンピードが発生したときに使う奥の手です」


 シハ王国では五人の【王族】がいたそうだ。しかし7年のスタンピードの猛攻で全員がその命を燃やし尽くしてしまったという。

 ちなみにラーナは【王族】に覚醒していないそうだ。


「私のお兄様はたった一度の使用で美しかった金髪が白髪になってしまいました」


 辛い記憶を思い出したラーナが悲痛な顔をする。

 なんと声をかけたら言いかわからなかったので、ラーナの手を取って慰めると、少しだけ元気が出た様子だ。よかった。


 しかし、オレの身体には変化が無いところを見ると、寿命を対価にしているということはなさそうだ。それに【王族】で覚醒できるのは【民兵】という職業のみだという。


 それに対してメティとエリーは違う。


「【解体見習い】」

「わたくしもメティと同じ【解体見習い】に覚醒したようですわ。解体の作業に補正のかかる初級職ですわね」


 二人とも仲良く【解体見習い】だった。おそらく解体作業中に覚醒したからだろう。

 ちなみにオレの持っている上級職業の【解体技師】の三下位職にあたる。

 【解体見習い】が進化すると基本職【解体士】になり、そこから中級職の【魔物解体士】や【鳥獣解体士】、【道具解体士】などになり、すべてを修めると上級職業【解体技師】に至るそうだ。

 オレの場合何故かすべてを飛ばして上級職業を獲得してしまうようだが、それくらいのチートがないと二千人の子どもたちの保護なんてとても出来なかったため文句は無い。


 二人に関しては経過観察ということになった。

 オレの職業によって覚醒した二人が永続的に覚醒者でいられるとしたら、それはとんでもないことだ。

 職業を得るとLVが解禁されるし、ステータスに非常に大きな影響を与える。


 しかし、オレのログに発動中の表示は流れていないので、おそらく二人がまた未覚醒に戻るということはないと思う。


 今後は様子を見ながらレベルアップの手伝いをしていこうかな。


「もう、ハヤト様はご自分が何をされたのかわかっておりません」


 ラーナが頭を抑えて嘆いている。

 王女のラーナからすると職業覚醒者は国の命運を左右する重要な位置を占めているだろうから嘆くのもわかる。

 ごめんよラーナ。オレは元々この世界にとってイレギュラーな存在なんだ。

 心の中で謝罪しつつ慰める。


 しかし、そろそろ本格的に職業の検証をしないといけないかな。

 オレの職業欄も、いつの間にか戦闘系は全部結合してレジェンドジョブになっているし、理術っていうのもよくわかっていないんだよね。


 というかレジェンドジョブも虫食いのように読めない文字があるのはどういうことだ?

 まともなのは【賢者】しかいない。


 うーん。たぶんだが、結合した職業の数とか質とかが関係している気がする。

 【賢者】の時は十四職も食われてしまったが虫食いは無し。


 それに対して五職しか結合していない【勇者】は【■■槍楯勇者・聖■属】と虫食いだらけで読めない部分が目立つ。

 能力も限定的なようだ。


 とりあえずよくわからないものは置いていて、まずは【大理術賢者・救導属】の解明から手を入れ始めよう。

 もしかしたら職業を好きに覚醒できるようになるかもしれないしね。

 心躍るなぁ。


 その後、職業解放者になったメティとエリーには職業を早速試してもらうことになった。


「切れる。簡単。超簡単」

「これが職業のお力なのですね。切り難かった魔物の皮も難なく切れますわ」


 未覚醒の時と比べてあまりの違いに二人が感動している。

 あまりの感動にメティの言葉使いが弾けていた。

 エリーは力が弱くて解体がうまくいき難かったためか、簡単に捌けるようになってすごく楽しそうだ。


 二人の解体はいつもの十倍早く仕上がった。これが職業の力か。初級職でもとんでもないな。さらにこれでLV1だというのだから、職業覚醒者がいかに重要な存在なのか実感する。


「メティ、エリルゥイス。職業に覚醒したことを祝福いたします。おめでとう二人とも」

「ありがとう」

「は、はい。ありがとうございますわ!」


 職業の力を見て改めてラーナが二人を祝福する。

 シハ王国ではこうして職業に覚醒したものを祝い、祝福する習慣があるそうだ。

 オレも二人に祝いの言葉を継げる。


「あと、わかっているとは思いますけれど、ハヤト様に職業を覚醒させてもらったということは(みだ)りに話してはいけませんよ」

「了解」

「わかっていますわ。露呈してしまったら大変ですもの」 


 最後にラーナが注意を促し、二人が頷いたところで調理班の子達が集まってくる。

 日もだいぶ傾いてきていつのまにか夕食の時間だ。


「今日はここまで、また明日よろしくね」


 そう言ってこの場は解散した。


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作者、完結までがんばる所存ですが、皆様の応援があるとやる気が燃え上がります。

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