第三十一話 第五波、第六波、討滅戦
レビュー&初ランキング入り記念祭を開催中。本日三話更新。
本日三話目!
前に一話更新してあります。そちらをお読みになってから読んでください。
それでは本日最後ですが、どうぞ!
遅延作戦を初めて七日が過ぎた。
昨日までに罠の最終準備を終え、スタンピードの数を削りつつ侵攻を阻害している。
スタンピード第五波はその数を十万まで減らし、時間をかければスタンピードも討滅出来るのだと確信した。
しかし、今回はその時間が無い。
スタンピード第六波が侵攻してきたのだ。
その数約二十万。おそらく今日にでも第五波と合流するだろう。思ったより早かったな。
魔物の群集はまた広範囲に広がり、『双槍双楯突撃』で側面から抜く事が出来なくなってしまう。
「今日、作戦を実行し三十万の敵を一網打尽にします」
「ハヤト様、解りました。ご武運をお祈りしています。――ですが、絶対に無事に帰ってきてください」
「もちろんですラーナ。怪我一つ負わず無事な姿で帰ると約束します」
最近恒例になりつつある指切りをラーナと交わす。
ラーナは心配性なのでいつも出かける前にはこうして約束をする。
「・・・・・・まだ不安です」
「では、その不安が無くなるまで自分の胸をお貸ししましょう」
それでも不安なときは安心するまで抱きしめる。
今日はスタンピードを討滅させる決戦の日ということで、ラーナの心配も大きいようだ。
スタンピードは今日の昼頃には元シハ王国の東側“休景の龍湖”に到達する。そこからこの場所まで魔物の足で半日もかからない。作戦が失敗すればスタンピードは、夜、子どもたちやラーナの居るここに到達するだろう。
絶対に成功させようと心に誓う。
だが、それはいいとして抱き合っているオレたちを覗く七つの視線を感じる。
11歳組の三人と10歳組の四人だろう。見なくても気配で分かる
ドキドキとした熱い視線が飛んできている気がするがオレは紳士。やましいことは無いのでスルーする。何故かラーナがこれは渡しませんと言わんばかりに回した腕に力を込めた気がしたが気のせいだろう。
その後、ラーナが外で子どもたちを叱っているうちに完全装備に着替え出発の準備を整えた。
「すみませんハヤト様。子どもたちにはよく言って聞かせます」
「いえいえ、大丈夫ですよ。それと、もしかしたら今日は遅くなるかもしれませんから夕食用のお肉を置いておきますね」
「あ、ありがとうございます」
子どもたちのおかげでラーナの不安は払拭できたようだ。仲良く座ってお叱りを受ける子どもたちにありがとうのジェスチャーをして調理場へ向かった。
今日は大仕事、どのくらい時間が掛かるかも解らないので火を通した焼き肉を大量に作り置きしておく。これで夕食には困らないだろう。
全ての準備が整った。
ラーナが七人の子どもたちを連れて見送りに来てくれた。
「いってらっしゃいませ、ハヤト様。絶対に帰ってきてくださいね」
「はい。約束ですからね。いってきます」
「「「いってらっしゃい」」」
ラーナと子どもたちが手を振って見送ってくれるのを背中に、オレは『三歩走術』を使って駆けだした。
「『奮い立つ心』」
恐怖心を押さえ奮起する強力なアーツを使い、スタンピードを見る。
相変わらずすごい数だ。
縦に伸びた隊列をしたスタンピード第五波。そしてその最後尾に追いついたスタンピード第六波。総勢、約三十万。
これを一網打尽なんて不可能に思える。
しかし、オレには強力なジョブの力がある。うまくやれば出来ないことは無い。
「『巨壁結界』」
最後の誘導を行う。幸いにも後方の第六波は第五波に追随する形で侵攻しているため、第五波の進路を変更さえ出来れば第六波もそれに続いてくれる。
第五波は散々壁に誘導されているので面白いように素直に進路を変える。
目指すはシハ王国、東にある湖“休景の龍湖”。
その昔、水龍が作ったと逸話のある巨大な湖だったが、今はほとんど水が残っていない。
ここにスタンピードを誘導した。
この“休景の龍湖”は面白い地形をしている。
まず、深い。水龍が作った寝床と言うだけあって深いところでは平地から三百メートル以上の深さがある。
そして上から見ると北へ向いた水滴型をしていて北側は細く、南側は丸みを帯びている。
水龍は細い北側から湖に入り、丸い南側の中心地で寝ていたとされており、南の中心地に近づくほど水深は深かった。
水の引いた湖では、北側は河川の入口なだけあって浅く、南に行くほど緩やかな坂が現れている。
そこをオレの工事によって谷底の道のように改造した。
谷の斜面は切り立っている上につるつると滑りやすく上れない。
つまり“休景の龍湖”に入ったら道沿いに進む以外脱出できない作りになっているのだ。
スタンピード第五波はオレの誘導により北側から“休景の龍湖”へ入っていった。
そこが冥土の入口とも知らずに。
広範囲に広がった第六波を湖に押し込むのは少し大変だった。
『流星気槍楯』を湖に打ち込んでスタンピードをある程度被害を与え簡易的な餌場を作って、なんとか全てのスタンピードを湖に誘導することが出来た。オレの存在がバレて第六波がこっちに来そうになったときは焦ったよ。
だが、作戦は無事成功。
スタンピード三十万は、オレの力ずくの誘導により、その全てが“休景の龍湖”へ入っていった。
そしてスタンピードがある程度湖に入ったところで罠を発動させる。
ここからが勝負だ。
「『高速空間解放理術』! 『土形成』! 『大鉄砲水』!」
北の入口に陣取ったオレの周りに現れる六個の魔方陣から、大量の水が流れ出る。
『土形成』で壁を崩すとそこから大量の水が溢れてきた。
さらに【水魔法士】第十一の魔法『大鉄砲水』が合わさって濁流を生み、魔物たちを飲み込んで押し流す。
―――GAAAAAAAAAAAA!!!
―――DYAAAAAAAAAAA!!!
―――GYOOOOOOOOO!!!
『高速空間解放理術』は『空間収納理術』で収納した物を六個の魔方陣から高速で吐き出す理術だ。残念ながら武器を方向性を持たせて射出するなんてロマン砲は出来なかったが、溜め込んでいる雨水を勢いよく吐き出す事は出来た。
『土形成』で崩したところからも同じく雨水を溜め込んでいた地下水が勢いよく流れ落ちる。
全ては作戦を思いついた日、土砂降りの雨を見て思いついた。水攻め作戦だ。
あの日遅くまで大量の溜め池を作って土砂降りの雨水を溜め、それを『空間収納理術』に収納して今回の作戦に利用したのだ。
さすがに湖を満たすことはできないが、魔物を溺れさせるくらいの水深があれば良い。
勢いよく坂を下っていく鉄砲水が道に居た魔物をどんどん押し流し、湖の中心地に向かっていった。
鉄砲水作戦は成功だ!
次の作戦に移る。
素早く追いかけると、流された魔物三十万が“休景の龍湖”の中心地に貯まっていた。
南側は当初急斜面のすり鉢状だったが、オレが工事しまくって切り立った崖に変貌しているため、そう簡単には上ってこられない。
南側の崖上に移動して確認すると、湖の水深は三十メートルにも達したようだ。
魔物が次々と沈んでいき、これまでに経験したことの無いスピードでログが流れていく。
死んだ魔物を踏み台にして助かろうとする賢いやつもいたため、【水魔法士】第十の魔法『渦潮』を【魔流躁士】の助けをかりて湖を巨大な洗濯機みたいにして水を荒れさせることで妨害した。
すごい勢いでMPが減っていく荒技だが、効果はてきめんだった。魔物が次々飲み込まれ沈んでいきログが更新されていく。
MPはこの作戦に全て注ぐつもりなので問題ない。どんどんやる。
この作戦で人型、獣型を初めとした大部分を殲滅することが出来た。
残っているのは溺れにくい爬虫類型、虫型、植物型の魔物だ。
特に飛べる虫型の魔物が厄介極まりない。
【風魔法士】第十の魔法『下降気流』で打ち落とす。
全ての魔物が水流に巻き込まれているのを崖の上から確認すると。
オレは最後の一手を発動した。
「――しめるよ。【崖崩士】第十三のアーツ『崩壊大層』!」
オレの持つ最強の職業【崖崩士】。そのあまりある破壊力を足の裏に展開し、そして緋色のエフェクトを発するそれで大地を踏み砕いた。
オレを中心に南側全ての壁に巨大な亀裂が入っていき、切り立った崖が崩壊した。
“休景の龍湖”の中心地に向かって崩れていく崖崩れ。
すぐにその場を離れ、警戒しながら崖崩れが収まるのを待った。
三百メートルの崖崩壊の威力はすさまじく、中心地を簡単に飲み込んでしまう。
足りないようなら『空間収納理術』に溜め込んだ土砂も降らせて追撃しようと思っていたが、必要は無かったようだ。
“休景の龍湖”は岩石で埋まり、ログの流れがストップする。
『長距離探知』を発動するが、反応する魔物は、ほぼ消えた。
こうして、スタンピード第五波、第六波の討滅はなされた。
《特殊条件を満たしたため特別職業【勇者】を獲得しました》
《特殊条件を満たしたため特別職業【賢者】を獲得しました》
今日はレビュー&初ランキング入り感謝祭ということで三話更新させていただきました!
いかがでしたでしょう、満足していただけたら幸いです。
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追伸、またレビュー貰ったら感謝祭を開いちゃうかも!?
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作者、完結までがんばる所存ですが、皆様の応援があるとやる気が燃え上がります!




