第三話 イージーのようでイージーではない
本日一話目
次話は十分後くらいに投稿します。
落ち着いたら喉が渇いてきた。
しかし、ここは荒野にある起伏の頂上。
自販機の一つも無い。当たり前か…。
まあ、財布も持ってないからどっちみち買えなかったけど。
夢なら飲み水の一つでも作ってほしいものだ。
いや、もしかしたら作れるのかもしれない。
【職業】で何か水の作れるものが無いか念じてみる。
何も起こらなかった。
そこまでイージーではないらしい。
ならば魔法のように水が出せないだろうか?
魔法使い的な職業はありそうだが、どうやったら手に入るだろうか?
【投擲士】は石を投げたら取れた。
【神官】はよくわからないが祈ったら取れた。
なら魔法使いは魔力的なものを操ったら取れる?
それってどうやるんだ?
メニューのアーツ項目を目で追ってみると【神官】のアーツに『回復』というものを見つけた。
これはたぶん魔法だろう。
とりあえず自分の体に使ってみた。
初の回復魔法発動だ!
直後何かが抜けていくような感覚がする。いや何か流れてくるような?
ステータス画面を見てみるとMPが3減っている。つまりは魔力を消費したということだが。
結局よくわからなかった。しかし考えてみたら当たり前で自分に使ってたら魔力が抜ける感覚と回復する感覚が混ざってしまっただけだった。
今度は何か別のもの、とりあえずポケットに入っていたボールペンに『回復』をかけてみる。
さっきの山崩れで伏せたときに破損してしまったようなので、回復魔法で直らないかなと一縷の望みをかける。
《職業【修復魔法士】を獲得しました》
思ったよりすごいものを得てしまった。
とりあえずそれはおいておく、今は魔法の感覚を掴むのだ。
やはり体の中の何かが抜けるような、へんな感覚がする。
この感覚をアーツに頼らず自分でやってみる。
《職業【魔流躁士】を獲得しました》
【魔流躁士】は魔力の操作を補助してくれる職業のようだ。
よし、体の中にある魔力を操る感覚に慣れてきた。
だがそれだけだった。魔力を放出することは出来るようだが水への変換のやり方がよくわからない。
うーん。これはダメだな、何か別のアプローチが必要そうだ。このまま続けていても水魔法は使えそうに無い。
となるとまずこの場所から脱出しなければならないが。
崖下を覗くと相変わらずモンスターの大群がいる、さっきの山崩れで巻き込んだのはほんの一部で巻き込まれなかったモンスターは崩れた土砂を避けるように進行している。
降りればすぐ見つかりそうだ。
いや、まずどうやって下に降りるか。
ロッククライムで降りれば職業は手に入りそうだが、さすがにこの崖を降りるのは遠慮したい。
ならば【崖崩士】で崖を崩しながら下に降りるというのはどうか? 山崩れを断続的に起こせばモンスターも離れていくはずだ。その混乱に乗じて離脱しよう。
そうと決めれば即実行する。
巻き込まれないよう端のほうを崩しつつすぐに離脱できるよう心構えをしておく。
だが、オレが想定していたより【崖崩士】のジョブは強力だったようだ。
地面に拳骨を入れたとたん地面に大きく伸びる蜘蛛の巣状の亀裂は止まることを知らずにオレのいる起伏の頂上すべてに及んだのだ。
そういえばと思い出す。ここはオレがちょっと体重をかけただけで崩れるような脆い崖だったと、さらにまだあの時は職業補正すらなかったのだから、ジョブを使って崩落を起こしたら規模がでかくなるのは自明の理だった。
蜘蛛の巣状に入った亀裂はすぐに大規模な山崩れに発展した。
オレのいた足場も当然のように崩れる。
「うわ! ちょ! タンマ――!」
《ハヤトは“サーベルタイガー”を倒した》
《ハヤトは“レッドリザード”を倒した》
《ハヤトは“オオハサミムシ”を倒した》
――――――
――――――
――――――
視界の端にまたまた大量のログが流れるがそんなことにかまっている暇は無く、オレは一か八か崖を飛び降りた。
このままでは間違いなく崩落に巻きこまれモンスターと同じ道を歩むしかない。ならばもう跳ぶしかなかったのだ。
《職業【軽業士】を獲得しました》
職業愛してる!
職業を獲得した瞬間【軽業士】の補正で共に崩れ落ちる岩石が足場にしか見えなくなる。
そのおかげで何個かの岩石を足場にして命からがら地面に降りることに成功した。
ただ30m近く落ちてきたため足がすごく痛かった。『回復』で足を癒しつつ、まだ終わらない崩落とモンスターの群れから早々に離脱した。
《職業【走者】を獲得しました》
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