第二十九話 威力偵察
わ、わひゃ! レ、レビューいただきました!!
Kengo様、レビューありがとうございます\(^o^)/とってもうれしいです!
まさか、感想の前にレビューが先にいただけるとは思っていなかったのでとても驚きました。三度見した。
しかも、その影響でブクマ数が増えて『異世界転移・日間ファンタジー部門』で290位のランキング入りしました!?
ありがとうございます!ありがとうございます! おかげさまでやる気が漲りました!
記念に今日は三話更新します! 12時と18時に一話ずつ投稿します。よろしくお願いします!
それでは本日一話目、どうぞ!
「十五万の魔物、すごい光景だ」
シハ王国より北、徒歩で3日の場所。オレの足で約30分
雨に降られて濡れ鼠になっているのにひたすら行進する蠢く群集があった。
十五万という光景は、本当は無限ではないのかと思わせるほど彼方まで魔物が犇いているように見えた。
元の世界で言えば、テレビで見る東京ドームは約五万人を収容できるキャパシティがあるらしい、それの三倍だ。さらに相手は人間より遥かに大きいサイズの魔物が多く倍以上に見えるといえば、その光景がイメージ出来るか。
つまり、辺り一面が魔物だらけなのだ。それが動き、オレたちの住処に向かっている。
正直、初めてドラゴンに襲われたときより強く恐怖を感じる。
「ふう。いつまでも隠れていられないな。よし、やろう。――『奮い立つ心』!」
【英雄】第七のアーツ『奮い立つ心』は恐怖を打ち破り奮起させるアーツだ。
恐怖を忘れさせてくれるのは便利だが、危険なのであまり多用したくないアーツでもある。
「【竜槍楯理術師・戦技属】第二の理術、『流星気槍楯』」
いくつもの槍と楯の幻影が流れ星のように降り注ぐ。幻影というのは実際の槍や楯を降らせているわけではなく、おそらく魔力の塊みたいなものが降り注いでいるからだ。
威力は『彗星槍』より格段に低いが武具が使い捨てにならない利点がある。
現在使える理術で唯一の遠距離攻撃だ。消費MPは大きいが、そのかわり攻撃範囲は広いため戦果は大きい。
―――GYOOOOOOO!!!!!
―――TYAAAAAAA!!!!!
―――QOOOOOOOO!!!!!
突然の攻撃にいたるところから魔物の叫び声が上がる。
ログが大量に更新されていく、おそらく二百は倒しただろう。
手傷を負った者はその倍は居ると思われる。
なかなかの戦果だ、しかしこの数を見ると少ししょぼく感じてしまう。
魔物たちは、雨で視界が悪く臭いもわからず、さらにジョブの力でハイド全開にしているオレを補足出来ていないようだ。
これは好都合だ。『流星気槍楯』はあと十回は使えるので場所を移しながら打ち込んでいこう。
《職業【狂化魔法士】を獲得しました》
《職業【狂戦士】を獲得しました》
《職業【魔滅戦士】を獲得しました》
《職業【環境破壊工】を獲得しました》
色々試してみたが、『流星気槍楯』一発で倒せるのは最高五百くらいが限界だった。
それ以上は魔物があまりにも広範囲に展開していて届かない。
今回の倒せた数は三千強ほど。ものすごい数の魔物を倒している、おそらくこの世界に来て最も多いだろう。
しかし、十五万の数に全然届いていない。
スタンピードも最初はオレの攻撃に動揺が見られたが進行速度が少し落ちる程度の影響しか無かった。
それと遠距離攻撃はコスパが悪い。
理術や緋色のアーツ系は威力がとんでもなく高い分、MPの消費も高い。
『流星気槍楯』は見た目カッコいいし威力も範囲も良いがコストが悪い。つまり対スタンピードに向かない。オーバーキルすぎるようだ。
現在『周囲魔払結界』を初めとした結界を常時展開しているためMPの回復が遅い。
以前の魔物から魔力を奪えないかという案はなかなか難しく、職業取得には至っていない。ただ出来そうな気がするので今後も試していこうと思っている。
つまり回復手段は現在自然回復のみで、理術や緋色のアーツを連発するのは現実ではないということだ。
当然魔法も同じ。
「そうなると、直接戦った方がコスパは良い。でも、リスクが高い」
ハイリスクハイリターンなら近接、ローリスクローリターンなら遠距離だ。
しかし、今回の戦果を見る限り遠距離では削っていくことは出来ても討滅は出来ない。
討滅する前にたどり着かれ、飲み込まれてしまう。
なら、と近接に心が傾くが、しかし近接は非常に危険だ。
“キングハイコボルト・人類災害”や“ギガントダッチョウ”などの強力な固体は必ずいる。
その強力な固体を相手にしてさらに十五万の魔物と戦うとなると一気に現実的ではなくなる。
土砂降りの雨が辺りに響く音だけが聞こえ、雨水が顔に当り頬から首に向かって流れる。
どうすればいい…。
そうだ、なぜオレは二択で考えているのか、もっと何か別の方法があるはずだ。
ステータスの職業欄を見る。戦闘だけではなく使えそうな職業をピックアップする。
そうだ。オレにはまだこれがあった。
最近は槍と楯ばかり使って戦っていたため忘れていた。
すぐにそれを使った作戦を練り上げる。
使えそうな環境は、そうだ確かシハ王国にはアレがあった。
そこへ誘導すれば、よしいける。
オレは思いついた作戦を実行に移すべく行動を開始した。
「遅かったです。みんな心配していました」
対スタンピード戦に備えて色々準備していたら気がつけば夕方だった。急いで帰還すると待っていたのは目をうるませた子どもたちとお怒りのラーナだった。
「ごめんなさい。遅くなりました」
こういうときは言い訳をせずに謝った方が良い。
確かに偵察に出ると行って夕方に帰ってくれば心配する。少し配慮が足りなかったかもしれない。
その後大急ぎで夕食を作って日が沈む前に食べる事が出来た。
日が沈んでしまうと今日は雨なので月明かりも無く真っ暗になってしまうため、オレのジョブをフル活用して超速で用意した。
「それで、どんな危ないことをしたのですか?」
夕食後、『火形成』で灯した寝室でラーナから問いただされてしまった。
確かに威力偵察は危ないことだけれども、言い方にちょっとトゲのような物を感じる。
「はい。まずスタンピードの状況ですが、昨日と変わりなく、雨でも侵攻が止まることはないようでした」
状況と今回オレが行った偵察の報告をするとラーナの気が引き締るのを感じた。
「一騎当千の活躍。さすがハヤト様です」
「ありがとうございます。しかし、これだけではスタンピードを倒しきれないでしょう」
オレの発言にラーナの顔が曇る。
MPが潤沢にあれば話は別だが、一日に『流星気槍楯』が撃てるのは多くて20回、五千を屠れれば良い方だろう。
油やらバリスタなどの物資も無いため打てる手は限られてくる。
「なので罠を仕掛けたいと思います」
「罠、ですか?」
ラーナが困惑している。
スタンピードに罠を仕掛けたとして『流星気槍楯』の戦果より良い結果が出るとは思えなかったのだろう。
物資も無く、辺りの環境は植物も生えていない荒野で起伏も無い平地。
どんな罠ならば十五万の魔物に有効になるだろうか。
たとえ落とし穴を掘ったとして焼け石に水レベルの話になる。
普通なら。
「はい。罠を仕掛けるのにとても良い場所があるのです。そこへスタンピードを誘導します」
今日帰りが遅くなったのはその罠の工事に時間を費やしていたからだ。
オレは一時間かけずに銭湯を作ることが出来る。それを約半日工事に費やしたら、いったいどれほどの罠が出来るのか。それを見て必勝を確信した。
「ですが罠で巻き込む数はなるべく多くしたいのです。そこで――」
これが、おそらく必勝の活路になる。何も戦う必要は無い。これは戦争では無く災害なのだから。なのでオレは自信を持って作戦を告げる。
「まずは遅延作戦をしましょう」
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作者、完結までがんばる所存ですが、皆様の応援があるとやる気が燃え上がります!
 




