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終わらないスタンピード  作者: ニシキギ・カエデ
第一章 子どもたちの聖域

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第二十八話 行ってきます。

「ハヤト様、お風呂ありがとうございました。とても心地よかったです」


 湯上り姿でラーナが礼を言う。

 しっとりと濡れた金髪と肌が妙に色っぽい。

 オレは自分に紳士であれ紳士であれと念じて心を静める。


「喜んでもらえてよかったです」


 今回完成した水浴び場もとい銭湯は大好評だった。

 一番風呂はオレとラーナがもらった。

 一応ラーナやオレが入るようとして個室と男用を作っておいたので混浴とかは無い。

 はずだったのだが、ルミやメティを初めとした孤児たちはお風呂に入った経験などは無く、エリルゥイス以外は入り方がわからないとのことだったのでオレがレクチャーしつつ風呂に入れることになってしまった。エリルゥイスは料理中だったので説明できる人が居なかったのだ。


 なお、オレは紳士なので小さい子に邪な気持ちを抱くことは無いとここに明記しておく。


 料理組の子たちが作ってくれた夕食を食べる。

 “マンモー”の肉を使った焼き肉。これが焼いただけなのにすごくうまい。

 水浴び場を作るため料理組の子たちをほったらかしにしてしまったが、もうこの子たちは自分たちで食事を作れるようになっていたようだ。

 子どもの成長ってすごく早い。「これからも任せてください」と言う料理組の子たち。なら、この子たちの自主性に任せてみよう。

 でも心配は心配なので、何か問題があったら遠慮なく呼んでほしいと言い聞かせておく。


 半数が風呂に入ったところで日が落ちてしまったので、続きはまた明日と水浴び場を閉める。子どもが間違えて入って溺れたら大変だからね。


 そして、今日もラーナが抱きしめてほしいと言って来たので、抱きしめてそのまま朝まで就寝した。




「チカとシノンには風呂係を頼むね」

「わかったわ!」

「任せといてー」


 翌朝、お風呂を準備して、お風呂の入り方を説明してくれるお風呂係を決めた。

 立候補してくれたのは以前手伝ってくれた四人組10歳児の残り二人、チカとシノンだった。

 チカは面倒見がよくて子どもたちの面倒を良く見てくれるし、シノンは明るい子で一緒に居ると自然と子どもたちが笑顔になる。


「ハヤト様も入りに来てね」

「待ってるよーん」

「一緒には入らないからね?」


 と冗談をよく言うので困ったものだ。

 何故かすごく残念がっているように見えるが、これも冗談の範疇だ、と思う。


「私のボディで悩殺する計画が」

「チッパイじゃ無理」

「あんたも変わらないでしょうが」


 うーん。他の子がおとなしい子が多いのでチカとシノンの騒がしさが目立つ。

 でもこれが子どもたちを明るくするムードメーカーというやつなのだろう。

 見ていて楽しい。


「さあさあ、冗談はここまでにして、昨日は入れなかった子達を洗ってあげて」


 二人を促して見送った後はスタンピード対策の会議をするためラーナが待つ寝室に向かう。

 いつもオレとラーナが眠っている建物は個室なため会議するのに向いているので、いつもここにテーブルを設置して会議をしている。


「今回のスタンピードはおそらく第五波だと思います」

「では、同じ規模のスタンピードがこれを含め後六回来ると?」

「シハ王国は第三波で瓦解しました。《聖静浄化》で討滅したのは第四波だと考えられるので、おそらく…」


 言いづらそうにラーナが予想した規模を伝えてくる。

 今回のスタンピード、パターン“国滅の厄災”は十五万以上の魔物が十回侵攻してくるスタンピードだ。


 第四波までの完全討滅を果たしているので、残りは六回。

 次の接触は四日後と思われる。これを打ち破る、もしくは回避するのが今回の主題だ。


「まず回避するにはどうすればいいのかを…、いえスタンピードはまず回避できるものなのでしょうか? たとえば結界で壁を作り進路を変更させるなどです」

「出来なくは無いと思います。ただどういうわけかスタンピードは人間の居る方へ向かってくる性質がありますから、例えそらしたとしても迂回しながらこちらに侵攻してくるでしょう」


 やっかいな性質だな、回避するのは無理そうだ。

 最悪フォルエン王国に擦り付けるとしても、フォルエン王国の要塞は割りと近い。徒歩一日か二日くらいのところにある。スタンピードを逸らしたとしても戻ってくる可能性が高い。


「では、動きを止める。進行を阻害するというのはどうでしょう?」

「それも推奨されていません。“国滅の厄災”はスタンピードの間隔が空いているのが最大の弱点ですから、下手に遅延作戦で間隔を狭めると合流したり、間を空けず進攻して兵が休む時間を取れなくなったりとデメリットが多いのです」


 遅延作戦も厳しいか。


「ならばやはり、打ち破るしか無さそうですね」

「はい。最終的に、百万を超える魔物を倒さなければいけません」


 となると、まずオレのスペック、オレに何がどこまで出来るのかを調べる必要があるか。


「作戦を考えるためにも、まず威力偵察をする必要がありますね」

「え? あの、打って出るのですか?」

「はい。情報を集めてきます」


 ラーナが目を見開いて驚いている。

 そういえば普通この規模の魔物を相手するときは野戦ではなく防衛線をするのが普通だと言っていたっけ。

 そうか、さっきのラーナの意見も防衛線を前提としたものだ。

 となると、野戦に出向ける俺には通用しないことになる。

 もしかしたら活路が見つかるかも。


「ではラーナ早速行って来ます」

「も、もう行くのですか!?」


 慌ててラーナが俺の服の裾を掴んだ。

 どうやら、また情緒不安定になりかけているらしい。


「大丈夫ですよ。遠方から攻撃して、危なければすぐ戻ってきます。約束しましょう」

「……本当ですね? 約束は守らないといけないのですよ?」

「もちろんです」


 ラーナが差し出す小指に小指を絡ませ約束する。

 それで幾分かラーナが落ち着いてくれたようだ。


 完全装備に着替えると『周囲魔払(バリアサークル)結界(エリア)』を後にした。

 外は珍しく雨が降っていた。しかもわりと土砂降りの雨だ。

 マントを外套のようにして雨を防ぎ、ヘルムを換装して毛皮のフードを被る。

 雨用装備だ。この世界に来てあまり雨には降られていなかったが、たまに雨の中活動しなければいけないこともあったので装備は作ってある。


「んじゃ、行きますか」


 軽く、散歩に行くように軽く言う。自分にこれは軽い散歩なのだと言い聞かせ、恐怖を誤魔化した。

 『三歩走術』を発動し走り出す。

 目標はスタンピード、パターン“国滅の厄災”第五波。魔物の数、十五万。


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作者、完結までがんばる所存ですが、皆様の応援があるとやる気が燃え上がります!

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