第十四話 塔の探索。人の温もりは心にくる
祝、投稿一週間!
本日二話目 それではどうぞ!
場所は中央塔と呼ばれた町の中心部にある三十階建てくらいの塔。その一階である。
オレとライナスリィル王女は塔の最上階を目指していた。
塔の中には長大な螺旋階段があり十階ごとに階段を乗り換えて上部へ登っていくようだ。
しかし、塔の中にはすさまじい数のモンスターうごめいていた。
その数、数百。
『長距離探知』では数が多すぎてまともに機能していない。
レーダーでいう全方位赤マークで真っ赤っ赤みたいな感じだ。
なぜこんな数のモンスターが一建築物にいるんだ?
まるで何かに誘い込まれたかのように塔に溜まっている。
「それは、《聖静浄化》を行うために駐在していた方に集まってきたのだと思います――」
ライナスリィル王女がその理由を教えてくれた。
モンスターは人を襲う。オレも何度も襲われたため分かるが、何故かモンスターは人に群がってくる性質があるようなのだ。
そして、塔で《聖静浄化》を使う担当者がいたけれど、モンスターに群がられてしまった。
そこでトラブルが起きた。
《聖静浄化》を使う担当者が恐らくモンスターにやられ亡くなった。
《聖静浄化》は行われなくなって、このままではスタンピードはシハ王国を抜け、シハ王国民が避難した南の“フォルエン王国”に魔の手を伸ばすだろう。
避難民で混乱している“フォルエン王国”にこの規模のスタンピードが突っ込めば、下手をすればシハ王国と同じ末路をたどることもありうる。
そして何らかの手段でそれを知った避難中だったライナスリィル王女が精鋭を連れて《聖静浄化》を発動しに中央塔に向かった。
というのが事の顛末らしい。
塔にモンスターが集中しているのは、すべての人が避難している中、恐らく現存している人間がこの塔にしかいなかったためだろう。とのこと。
「ですが、中央塔が完全に占拠される前に《聖静浄化》は発動できたはずなんです。そのために最上階に儀式所があるのですから」
何か要因があったのではないかとライナスリィル王女は言う。
その言葉に何か引っかかりを覚えたが、思い出す前にモンスターの大群が現れる。
「さっそくお披露目かな」
【理術】系の試運転だ。
「『円柱結界』」
「! これはっ」
「安心してください。先にもお守りした結界魔法です」
【結界理術師・魔払属】第一の理術『円柱結界』。
ライナスリィル王女を中心として円柱状の半透明の結界場が構成される。
見た感じ『城塞結界』に近い。
四角形はではなく円柱形だが、対象者に対して全体を囲むのは酷似している。
囁きによれば、耐久度は『城塞結界』の数倍もあるそうだ。
さらに【魔払属】の効果でモンスターに対して高い浄化作用を持ち、結界に触れたモンスターはHPをごっそり抉られる特殊効果を持つらしい。並みのモンスターなら結界に体当たりした瞬間お陀仏である。
この結界を破るには“キングハイコボルト・人類災害”クラスのモンスターが必要だろう。
「『双槍双楯突撃』」
続いて【竜槍楯理術師・戦技属】第一の理術『双槍双楯突撃』を発動。
これは【大楯士】第十五のアーツ『突撃城塞』の上位互換だ。
両手に持つ槍と楯の数分攻撃力と防御力が上がり、範囲攻撃を生む不可視の衝撃波を起こしながら突撃する必殺技。
どうも【戦技属】というのは単発の理術しか使用できない代わりに、非常に強力な威力を生み出す特殊効果があるようだ。つまりは使う理術が全て必殺技になるらしい。
あまりに強すぎて使いどころの見極めが大変そうだ。
現に“竜牙槍”一本しか装備していないのにもかかわらず、突撃の衝撃波だけでレベル一桁のモンスターは軒並み吹き飛ばされ再起不能の状態になっている。
これが両手に二槍二楯を装備して発動していたらと思うと少し躊躇してしまう。
「これが超越者のお力っ」
「片付きました。ライナスリィル王女様、参りましょう」
「さすが、ハヤト様、よろしく願います」
たった一回の理術でモンスターの大群の大半を食い破ったオレたちは、そのまま螺旋階段を上っていく。
十階まで螺旋階段その一を一気に上りきる。
そのまま連絡路を通り螺旋階段その二を目指すが、十階層はモンスターの大群で足の踏み場も無いほどだった。
さっきみたいに『双槍双楯突撃』で突破したいが、残念ながら通路が狭く下手に理術を使えば塔が崩壊する可能性すらありそうなので地道にアーツで倒していく。
統合進化で【槍戦士】と【大楯士】は消えてしまったがアーツは残っていたのが助かった。
「ライナスリィル王女様、お加減はいかがですか?」
「はい。ハヤト様が『体力回復』を使ってくださったおかげで大分回復しましたわ」
さすがに少女に十階分の階段を走って登り切るのは体力的に厳しかったらしく、途中で【神官】の『体力回復』を使っておいた。
疲れや体力減少時に効果のある魔法だが、SPの残量が減っているときも効果的だ。
《職業【指導者】を獲得しました》
《職業【王族教育係】を獲得しました》
お、おう。
得た職業のうち二つ目の職業は生かしかたがわからないんだが・・・。
ま、今はいい。
大体片が付き、ライナスリィル王女と話せる余裕が生まれてきた頃、螺旋階段その二を発見した。
螺旋階段の前に大きく破損した巨大な鉄の扉が横たわっている。
「本来侵入者用の備えとして城門と同じ扉を付けていたはずですが…」
「破壊されていますね」
破壊したのは恐らく“キングハイコボルト”だろうな。
裂き壊されたような跡だ。
普通ならこの先で籠城してモンスターを十分引き付けた後《聖静浄化》を行う手筈だったようだが、特殊個体が乱入したせいでモンスターの侵入を許してしまったのか。
「ライナスリィル王女、御手をどうぞ」
「あ、ありがとうございますわ」
足場の悪い倒れた門扉をライナスリィル王女の手を引いて乗り越え、螺旋階段をまた昇った。
ライナスリィル王女が手を引いてもらったほうが楽に走れると申していたのでそのまま右手は彼女と繋がっている。
久しぶりに触れた人肌は少し胸にくるものがあった。
それは彼女が真剣な表情をしていつつもうっすら頬が赤くなっていたのも要因かもしれない。
うっ、中学生くらいの少女相手に何考えているんだ。
あまり意識しすぎないように注意しよう。
華奢な手を強く握りすぎないようにだけ意識しながら、螺旋階段を駆け上った。
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