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終わらないスタンピード  作者: ニシキギ・カエデ
第一章 子どもたちの聖域

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第十三話 ライナスリィル王女の依頼と覚悟

本日一話目

《ハヤトは“キングハイコボルト・人類災害”を倒した》


《特殊条件『人類災害個体撃破』を満たしました》

《特殊条件『上位職業解放』を満たしています》

《特殊条件『上位職業成長限界』を満たしています》

《特殊条件【勇者】【英雄】【賢者】のいずれかを満たしています》

――――――

《『理術位階解放条件』が満たされました》

《今後上位職業が成長限界に達した時、理術位階への進化が可能です》

――――――


《【結界魔法士】が成長限界に達しました》

《特殊条件【厄払士】【(ドラ)(ゴン)魔法士(マジシャン)】結合させることで特殊職業【結界理術師・魔払属】へ上位進化が可能です》

《上位進化しますか? Yes/No》


《【走者】が成長限界に達しました》

《成長限界を突破したため【移動術師】へ上位進化が可能です》

《上位進化しますか? Yes/No》


《【槍戦士】が成長限界に達しました》

《【大楯士】が成長限界に達しました》

《特殊条件と結合(ジョブ)進化(ニオン)条件が達成されています》

《特殊条件【槍戦士】【大楯士】【投擲士】【大戦士】【重装戦士】結合させることで特殊職業【竜槍楯理術師・戦技属】へ結合(ジョブ)進化(ニオン)が可能です》

《選択肢が表示されます。理術位階か結合進化か選択してください》

《【竜槍術師】or【竜楯術師】/【竜槍楯理術師・戦技属】/ No ?》




 勝った。と思ったのもつかの間。

 “キングハイコボルト”を倒した途端ログに奇妙なものが流れる。

 それを追って職業欄を開いてみると【結界魔法士】【走者】【槍戦士】【大楯士】のレベルが百に上がっていた。先の戦闘で大幅にレベルアップしたらしい。

 職業は使えば使うほど熟練度が上がるが、ゲームなんかとは違い、今回のように戦闘などの要因で熟練度を大幅に稼ぐことが可能のようだ。

 そういえば、ドラゴンとの戦闘後【結界魔法士】は大幅にレベルに上がっていた。


 さらに職業欄に“理術”という項目が増えている。

 開くと先ほどログで流れた選択肢が3つ並んでいた。

 ログ情報から推測すると、ゲームで言う職業(クラス)進化(アップ)転職(ジョブチェンジ)といったものだろう。

 しかし職業はわかるが、【結界魔法士】や【大楯士】なんかの進化先にある【魔払属】や【戦技属】というのがよくわからない。

 “属”からすると属性か?


 他にも【術師】と【理術師】系があるな。

 “理術”の項目にあるということはどちらも同じ系統だと思うが。

 これも違いがよくわからない。


 進化、本当にしていいのだろうか?

 この四つの職業はオレが最も使う職業、言わば生命線だ。

 安易に試すのは少しためらう。

 しかも結合という不安な文字。

 結合された職業は、消滅する可能性がある。


 迷う。

 迷うが、覚悟を決めよう。

 なに、他にも職業はたくさん持っているのだ。

 万が一が起きてもリカバリーして見せよう。


 ということで【結界魔法士】と【走者】はYesを選択。

 【槍戦士】と【大楯士】は、検証の意味を込めて結合進化を選択した。


《Yesが選択されました【結界理術師・魔払属】に位階進化しました》

《Yesが選択されました【移動術師】に位階進化しました》

《【竜槍楯理術師・戦技属】が選択されました【槍戦士】と【大楯士】が結合進化しました》




 ログが流れたが特に体調面で目立った変化はない。

 理術の項目に三つの職業が現れ、進化前と結合された職業が消えているのを確認する。

 もうちょっと、パワーアップしました的なエフェクトが出てもいいような気がするが、残念。

 画面を見ながらそんなことを考えていると、オレに近づいてくる存在に気が付いた。


「超越者様。申し訳ありません、よろしいでしょうか…?」


 護衛対象の少女が恐る恐る話しかけてきたのだ。

 憂いを帯びたその表情を見ると、戦いの高揚した気持ちが消え去り、先ほどの金色の伯爵たちが名誉を全うした光景がよみがえってきた。

 そうだ。戦果なんて確認している場合じゃなかった。

 自分の行動を反省し、少女に向き合う。


 護衛対象の少女を囲っていた『城砦結界』はいつの間にか解除されていたようだ。

 おそらく【結界魔法士】のジョブが進化したためだろう。

 見たところ、少女に怪我はなさそうだが。


「はい。大丈夫ですよ。怪我はありませんでしたか?」

「感謝します。超越者様が助けて下さったおかげで怪我はありませんわ」


 少女が会話に応じてもらった事と助けてもらった事の感謝を言う。


「申し遅れました。私はシハ王国、第三王女…、ライナスリィルと申します」


 ライナスリィル王女はそう言って丁寧に頭を下げ自己紹介してくれた。

 一部、第三王女の下りで間があったのが少し気になった。


「改めて、自分は放浪の旅をしているハヤトと申します」


 名乗られたら名乗り返すのが日本人の礼儀だ。

 しかし所属が日本と言っても恐らく通じないだろうし、ここ二ヶ月を振り返って放浪の旅人と名乗っておこう。

 苗字は、相手も省いているみたいなのでこちらも郷に従う。


「放浪…」

「はい。ここへは人探しに立ち寄りました」


 放浪の旅人がなんで滅びそうな国にいたのかについて、突っ込まれる前に適当に作っておく。完全に嘘ではないしね。そのせいか【交渉士】なんてジョブが手に入った。


「超越者様、無礼を承知でお願いがあります」

「どうかハヤトとお呼びください。話を聞きましょう。」


 名乗っても超越者様呼びが治らなかったので名前で呼んでほしいと示しつつ、小さな王女に真摯に聞く。

 話は恐らく、金色の伯爵が言っていた中央塔のことだろう。

 そこに、数十万単位のモンスターが犇めくこの国にたった20人ぽっちの護衛で突破しなければならない何かがあるのだと思う。


「ハヤト様に…、私の護衛をしてほしいのですっ」


 焦燥と決意を込めて告げるライナスリィル王女に黙って話を促す。


「私は、あの中央塔で《聖静浄化》の儀式をするために参りました。しかし、ハヤト様がいなければ志半ばで倒れていたことでしょう。私はこの世界のため、どうしても儀式をしなければなりません。そのためにはハヤト様のお力が必要なのです」

「…なるほど。話は分かりました。その《聖静浄化》の儀式をする間まで護衛を、つまりモンスターの排除を依頼したいということですね」

「そうです。儀式の間がある中央塔は先ほど確認したところ魔物であふれかえっていました。私一人ではとても進めません」


 悲痛な表情でライナスリィル王女が俯く。

 まあ、そうだろうと思う。中学生くらいの年の子に数百体のモンスターを同行するなんてできるわけ無い。


「質問をいくつかよろしいでしょうか? 《聖静浄化》というのは?」

「《聖静浄化》をご存じないですか?」

「はい。何分人里を離れ放浪していた身です。人の常識に疎く」

「いえ! 申し訳ありませんでした。こちらの配慮不足ですわ」


 慌てて手を振ってライナスリィル王女が謝罪する。

 そして、《聖静浄化》について正直に話してくれた。


「《聖静浄化》の儀式は魔を滅する浄化の聖炎で国中を満たし、王都に侵入した魔物をすべて焼き払うことを言います」


 ——え?


「それは――、塔の中も、ということでしょうか?」


 ライナスリィル王女が何も言わず静かに頷く。

 それはつまり、国全体を巻き込んだ自爆ではないか。

 思わず片手で頭を押さえてしまった。

 この儚げで、憂いを帯びた少女は、モンスターを道づれに死ぬと言っている。

 オレにその手伝いを依頼したことは置いておくとして。

 護衛二十人、決死の覚悟を持ってここに来たということだ。

 中学生くらいの女の子がすることじゃないだろう。


 そして思い出した。

 このシハ王国に来る以前に立ち寄った滅びた国々は、みな何かで焼かれたような跡やクレーターがあちこちにできていた。

 もしかしたらあれは《聖静浄化》が発動した痕跡だったのかもしれない。


 スタンピードで国が滅びた時、そのスタンピードを巻き込んで自爆するというのは、ライナスリィル王女の口ぶりからすると、この世界では常識的なことなのかもしれない。


「いいでしょう」

「――え?」

「お受けいたしますよ、その依頼」


 ライナスリィル王女が目を見開いて驚きの表情をする。

 逆の立場なら無関係な人に死んでくださいと言っているのと変わらないしな。驚く気持ちは理解できる。

 しかし、オレはみすみす彼女を死なせるなんてことはしない。

 話は決まった。


「ハヤト様に、最大の感謝を――」


 目に涙を蓄えてライナスリィル王女はお礼を言うがそれを遮る。


「まだ感謝は早いですよ。その言葉は依頼が完遂してから聞きましょう」

「ですが――」

「安心してください。聖炎からも王女様を守り切って見せましょう」


 勝算はある。

 進化したジョブ【結界理術師・魔払属】だ。

 進化した時は何も変化が無かったが、つい先ほどから強い囁きがガンガン頭に響いてる。

 使い方が手に取るようにわかる感じだ。

 これを使えば、脱出くらいできるだろう確信があった。



「では急ぎましょう。早くこの場を離れなければモンスターが集まってきます」

「はい。ですが少しでいいのです、護衛をしてくださった皆に祈らせてはいただけませんか?」


 それくらいなら構いませんと了承を告げ、ライナスリィル王女が一人一人の名を呼んで祈りを捧げているうちに、“キングハイコボルト”の腕に刺さったままだった“竜牙槍”を回収する。

 短槍は『彗星槍』で空の彼方に消えてしまったので武器はもうこれだけだ。

 『彗星槍』は奥の手だが、武器が使い捨てなので使いどころが難しい。

 くの字に折れてしまった“竜頭楯”は背中に固定する。何とか【修復魔法士】の『大破(リペア)修繕(ワーク)』で直らないか試しているが、修理にはつなぎの素材がいると囁きが教えてくれる。リュックは置いてきてしまったので、すぐに修理は無理そうだ。

 鎧は前半分がきれいに無くなっていて修復は不可。作り直したほうが良いと出る。

 右腕の籠手は至っては行方不明だ。

 ため息をついて軽く身だしなみを整える。


 “キングハイコボルト”の素材はかなりの価値があると【鑑定士】が教えてくれるがさすがにこの状況で持っていくことはできないので犬歯二本だけもらって後は泣く泣くあきらめた。


 準備なんてそんなもんなので早々に終わり、未だ祈りを捧げているライナスリィル王女の横に立つ。


「——、最後にファールン伯爵。—勇敢に散って逝った者達が無事ユグドラシル様の元へたどり着けますよう、シハ王国王女ライナスリィルが切に願う――」


 ライナスリィル王女が組んだ手をほどき涙を拭う。


「皆、ちゃんと弔えなくてごめんなさい。でも、使命は必ず果たして見せますから、皆の無念を晴らして見せますから、どうか見守っていてください」


 振り向いた彼女にはもう涙は無く、その眼には決意が灯っていた。


「行きましょう」


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作者、完結までがんばる所存ですが、皆様の応援があるとやる気が燃え上がります!

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