第三話 遠征初日の終わり
ううっ、また評価2pt食らって評価ポイント平均が4.4に落ちてしまいました。悲しい。
精進いたします(*- -)(*_ _)ペコリ
“休景の龍湖”で一網打尽にした魔物は六百万にものぼった。
これは『大水流高速鉄砲水』で周囲の魔物を追い立て…、いやかき集めたのが功を奏した結果だろう。
『大水流高速鉄砲水』後の“休景の龍湖”一帯は不自然なほどぽっかりと空間が出来ていたほどだ。
六百万も魔物がいなくなったから相当圧力は減ったはずだ。
魔物素材も大量に確保できたし、“移動城砦”の装甲の要である骨素材も補充できたのは良かった、今後これだけの大規模討伐はできないかもしれないからね。
「シハ王国から北のレイオン公国領土へは徒歩で十日の距離にあります」
「どこかで夜を越さなくてはいけませんね」
出発してからすでに数時間、シハ王国は小国ではあるが領土はそれなりに広く、移動城砦の足では抜けるのに2、3日は掛かる。そろそろ夜の準備をしなければならない。
「移動城砦はハヤト様がお休みの間は動かさないのですよね」
「ええ。能力的には動かすことは可能ですが、何が起こるか分かりませんから。夜の間は結界理術と物理的な遮蔽物を用意して乗り切ります」
居眠り運転で事故でも起こしたら目も当てられないからね。
周りはだだっ広い荒野とはいえ、崖や岩山といった遮蔽物がないわけではない。
夜の間は移動城砦も止め、周りに骨鉱山で作った物理壁を建てて結界理術との双璧で乗り切る予定だ。
前もってラーナとシステリナ王女たち幹部組には伝えてあったが、システリナ王女がわざわざ確認したのは、オレに負担が掛かりすぎていないか、想定外が起こっていないかの確認のためだろう。
移動城砦は何かトラブルがあったら、それがどんな小さな問題でも死活問題になりかねないから。
なので、オレも安心させる意味で想定内だと意味を込めて答える。
ちなみにラーナはセトルのご飯の時間なのでここには居ない。
「場所に関してはいかがしますか? どこかスタンピードの圧力が少ないところを探しますか?」
「いえ、スタンピードは人の居る場所に集まってきます。どのみち変わらないでしょう。時間がもったいないので休憩場所は進路上のどこか適当な場所にします」
何しろ見渡す限り魔物だらけなのだ。
どこで休んだところで同じだろう。
なら、なるべく進路を逸れるようなことはしないで北に向かっていき、時間がきたらそこを休憩場所とした方がロスがない。
とはいえ時間ばかりに気を取られて安全を無視するなんて事はしない、安全第一だ。
「今日は初日です。移動城砦の点検をしたいので、少し日が沈むには早いですがそろそろ移動城砦を止めようかと思います」
「わかりましたわ。わたくしは何か不備がなかったか、周りから情報を集めて参ります」
「頼みます。――セイペルゴン、またブレスでやっちゃって」
「お~う、やっと出番かマスター。じゃあやっちまうよマスター」
システリナ王女にサンクチュアリ内の物事を頼み、セイペルゴンに指示を出す。
まず移動城砦を止めるために周りに張り付いているスタンピードを除去する作業が必要になる。そこをセイペルゴンのブレスで辺り一帯をなぎ払いしてもらいある程度駆逐したらオレが結界理術を移動城砦を中心に大きめに張り巡らせる手順を組んだ。
セイペルゴンがのっそりと結界の外に首だけ出し、地平線に向かって極太ブレスを放つ。
大地が燃え、一瞬で多くのスタンピードが屠られる。
セイペルゴンが倒してもログが流れないのでどれほど倒せているか不明だが、もしかしたら数百万いっているかもしれない。
ブレスを放ち終わったセイペルゴンはその足で移動城砦から外に出て、そのまま周囲にいる魔物を食べ始めた。
それを追いかけるようにしてオレも外に出る。
「がはははは、旨い。旨いぞマスター!」
「良かったね。食べられるだけ食べても良いからね。ただ、移動城砦に侵入されないよう見張りも頼むよ」
「任されたよマスター」
元々進化前は超大食いだったセイペルゴンは進化しても大食いだった。
普段は燃費を抑えるためか寝転がってばかりいるが、ブレスを放つととんでもないエネルギーを消費してしまうため、撃ったら寝るか食わなくてはいけないらしい。
というわけで、ちょうど良かったので夜の見張りはセイペルゴンに任せることにした。
昼間あれだけ寝溜めしていたので夜間の見張りは大丈夫だろう。
オレはセイペルゴンがバクバクモリモリ食べている間、結界を張り巡らせて簡易的な聖域を作り移動城砦を停止させ、魔物が近づかないうちに『空間収納理術』からたくさんの城壁を取り出して施工していく。
作業中に近づいてきた魔物は結界に阻まれて中に入って来られない。レベルの高い魔物に注意しながら組み立て、数分で壁が出来上がった。
こんな簡易壁でも素材と職業が良いのでそう簡単に魔物は破壊できないだろう。
万が一破壊されたら結界を張っているオレはすぐにわかるので、その時はオレが直接出向けばいい。
「さて、簡易城壁が組み上がった。次は移動城砦の点検かな。計画通り移動は上手くいったけど、負担が来る多脚の部分は毎回チェックしておかないと、壊れたら大変だしね」
まあ、多脚は十五万本もあるので多少壊れたとしても大丈夫だ。
予備もそれなりの数用意してあるので交換もすぐに終わる、今のところ万全の体制を整えてある。
移動城砦の前方部、山形のブレードは、大変真っ赤な状態になっていたので『大水支配』と【洗濯技師】の『洗浄』を組み合わせて洗い流し、汚水を『空間収納理術』に放り込む。
「うん。ブレードの方は部分的に歪みが出来ているけれど、そんなにダメージはない感じだね。これなら――『歪修復』! っとこれだけで大丈夫かな」
元【修復魔法士】第十の魔法『歪修復』でブレードの歪みを修復する。
この職業は【理術大賢者】に組み込まれているので伝技級の性能を誇る。
あっという間にブレードは元の形に修復完了だ。
次に足回りの方を確認したが、こっちもブレード同様真っ赤なのでさっきの手順で洗浄する。
「――『大破修繕』!」
大きさと数的に一個一個調べるのが不可能なため、元【修復魔法士】の『大破修繕』を使い、反応があった足を『空間収納理術』に収納、新しい足と交換する。
あとは全体的に不備がないか確認し、“修復”系の魔法を重ねがけしておく。
これで明日の朝には新品同様に成っていることだろう。
一日走行してみた結果、足への負担は想定の範囲内に収まっていた。
これなら、毎日メンテすれば相当持つだろう。
作業が終わった時、外はもう夜だった。
「じゃあ、あとは任せたよ」
「はむはむ、ゴックリッ。――うむ、任されたよマスター」
見張りはセイペルゴンに任せ、帰還する。
長い遠征になる最初の一日目が終わった。
誤字報告ありがとうございます。 漢字の変換ミスが多くてすみません。いつも本当に助かっています。今後も少なく出来るよう頑張ります。




