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終わらないスタンピード  作者: ニシキギ・カエデ
第四章 世界神樹ユグドラシル遠征

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第二話 休景の龍湖・掃討する

読んでいただきありがとうございます(*- -)(*_ _)ペコリ



「フォルエン要塞が見えなくなりましたね」

「はい。もうすぐシハの王都です」

「本当にスタンピードの海を構わず突き進んできましたわね、非常識な光景でしたわ。…ようやく慣れてきました」


 拠点移動は順調だった。

 事前に問題ないと計算できていてもスタンピードの海は怖い。怖いものは怖いのだ。

 ここまで順調に来ていてみんなでやっと胸を撫で下ろしたところだった。


 それまではシステリナ王女がその光景に何度も立ちくらみをしてはラーナに支えてもらっていたほどだ。しかし、この非常識な光景にもやっと慣れてきたらしい。


 落ち着いたところでオレは二人に次の作戦の開始を伝える。


「予定通り、“休景の龍湖”の罠を発動させてきます。おそらく数百万の魔物を狩ることができるでしょう」


 去年“国滅の厄災”の半分を屠った罠、シハ王国の東に位置する“休景の龍湖”を利用し、また魔物を殲滅しに行こうと思う。

 “休景の龍湖”は非常に低コストでスタンピードを一網打尽にできるため非常に重宝している。


 少し手を入れて湖の南側は切り立った崖に作ってあるので北から侵入した魔物は“休景の龍湖”の中から出ることが出来ずその場に溜まり続けることになる。

 あとはもう煮るなり焼くなり、水攻めするなり崖崩しするなりして屠ってしまえば数十万、場合によっては数百万もの魔物が殲滅できるだろう。


 すでに魔物が大量に溜まっているはずだ。

 今回はそれを屠るだけの簡単なお仕事である。



 それに物資の補給も兼ねている。

 今後、世界神樹ユグドラシルまでどれほど掛かるかわからないので、食料の確保はきわめて重要だ。

 一応“移動城砦”で跳ね飛ばした魔物も回収できる奴は回収してあるし、もうすでに数十年食べ続けていけるだけの食料が『空間(アイテ)収納(ムボッ)理術(クス)』に入っているが、念には念をである。


 『長距離探知』と『千里眼』によれば“休景の龍湖”はその一割が魔物で埋まっているらしい。数に直すと百万ほどの魔物が犇めき合って潰し合っているようだ。


 たった一日でこれだけ溜まるのか…。

 なんだか、思っていたよりもこの小細工は焼け石に水かもしれないが、やらないよりましだろう。

 それにLVも上げたい。MPの総量も上げておきたいし、無駄ではない。


「ハヤト様なら大丈夫かと思いますが、くれぐれも気をつけてくださいね」

「行ってらっしゃいませ」

「うん。行ってくるよ」


 ラーナとシステリナ王女に見送られて、オレは魔物を殲滅しながら“休景の龍湖”へ走り出す。

 ついでに外側から移動城砦の状況もチェックしておいた。


 外側から見た移動城砦は相変わらず力強い走りで魔物を排斥して突き進んでいる。

 結界のおかげでダメージもほぼ無いようだし、突然壊れたり動きが止まったりなんて事も無いだろう。そのための多脚だしね。

 チェック、問題無しだ。


 オレの『拠点移動』はある程度操者自身が離れても効力が切れないけれど精密な操作は出来ないので、シハ王都跡地と“休景の龍湖”の間を通って北へ進むルートを選定し、あとは前へ進むだけにしておく。

 この辺の地形も完全に理解しているので事故を起す心配も無い。


 オレはスタンピードを殲滅するのに集中しよう。


「――『巨壁(ジャイアン)結界(トバリアー)』『巨壁(ジャイアン)結界(トバリアー)』『巨壁(ジャイアン)結界(トバリアー)』『巨壁(ジャイアン)結界(トバリアー)』」


 まずは誘導だ。

 スタンピードの進路を『巨壁(ジャイアン)結界(トバリアー)』で無理矢理変更し、“休景の龍湖”へ向かわせる。

 上から見るとピンボール台のような姿形に成るよう整える、上(北)から来たボール(スタンピード)は壁に沿って穴(湖)へ落ちていくのだ。


「――『大賢者の理術極意』! ――『大水支配(ジ・アクア)』『大水支配(ジ・アクア)』『大水支配(ジ・アクア)』!」


 スタンピードが“休景の龍湖”へ集まって来る間、『大賢者の理術極意』でバフした『大水支配(ジ・アクア)』を連発して湖に水を放水する。



 進路を変更され集まってきた魔物は目の前の光景、でっかい湖を見ても止まらない。

 だってスタンピードだから。スタンピードは止まらないのだ。

 そこが湖だろうがでっかい穴だろうがそのまま進んで落っこちる。


 たまに我に返って止まる奴もいるが、後ろからせっつかれてどっちみち落っこちる。

 魔物たちはもう止まれないペンギンみたいなものだろう。

 その光景は、シャチが口を開けて待ち構えていても止まらないペンギンの光景を思わせた。


 オレは水を溜めているだけでいい。


 視界の端で勢いよくログが流れていく様子を確認しつつしばらく作業に没頭した。


 結局一時間で二百万もの魔物のログが流れた。

 え? スタンピードを倒すのこんなに簡単なの? と思われるかもしれないが、簡単なのはノウハウがあればこそだ。

 スタンピードの特性をよく理解したうえで最も効率のよい罠を仕掛けた結果、これほど簡単に屠ることが出来る。


 なので正直、これがあるから絶対スタンピードに負けないと思っていたんだけれどなぁ。

 大陸がスタンピードで埋まるとは思わなかった。


 そんなことを考えながら、オレは次の一手を発動する。


「――『大水流高速鉄砲水アクアジェットストリーム』!」


 『大水流高速鉄砲水アクアジェットストリーム』は地面にあるものを根こそぎ押し流す高速の鉄砲水だ。

 飲み込む津波ではなく、押し流すに特化しており、スタンピードでも押し流すことが可能な強力な理術だ。

 しかも今回は『大賢者の理術極意』で相当底上げされているのでかなり強力だ。


 オレはこれを四方八方から“休景の龍湖”へ向けて発動した。

 結界により纏まって移動してしまったスタンピードは悲鳴を上げながら、まるでトイレに流されていくかのように“休景の龍湖”に押し流していった。


「――『渦潮』!」


 『渦潮』で湖を掻き回すと絵面(えづら)的にやばかった。

 しかし効果は抜群だったようで大量のログが流れていく、あまりにログが流れるスピードが速すぎて強化したオレの目でも読むことが適わないほどだ。


 ――頃合を見て(しめ)に入る。


「――『六連陣高速収納理術シックスゲート・アイテムボックス』!」


 『六連陣高速収納理術シックスゲート・アイテムボックス』は『高速(オープン)空間(・ザ・ア)解放(イテム)理術(ボックス)』の反対で超高速で収納する理術だ。

 空中に幾何学模様の魔方陣が六個現れ、それぞれで分担し物を超速収納する。

 その収納スピードはただの『空間(アイテ)収納(ムボッ)理術(クス)』のなんと64倍だ。すごい。


 ただ、普段そんなに速く収納したいなんて事は無いので、使いどころが無い理術だったのだが、今回初めて役に立った。


 湖の中の魔物や水を高速で収納していく。

 ――おお、眼に見えるスピードでどんどん水位が下がっていく様子が面白い。


 ものの数分でほとんど湖の中のものを吸い込むと、またどんどんスタンピードが湖の中に落ちていった。

 またすぐに魔物でいっぱいになるだろう。


 “移動城砦”の位置を確認すると、結構先にいることがわかった。『拠点移動』の効果範囲はまだまだ圏内だが、そろそろ戻るとしよう。


「結界解除。――『高速(オープン)空間(・ザ・ア)解放(イテム)理術(ボックス)』」


 誘導するために張っていた『巨壁(ジャイアン)結界(トバリアー)』を解除する。

 そして“休景の龍湖”で蠱毒などのイレギュラーが発生しないよう『高速(オープン)空間(・ザ・ア)解放(イテム)理術(ボックス)』で今吸い込んだ水を放出し水で埋める。また魔物が沈んでいく様子を確認してオレは“移動城砦”へ帰還した。



作品を読んで「面白かった」「がんばれ」「楽しめた」と思われましたら、ブクマと↓の星をタップして応援よろしくお願いします!


作者、完結までがんばる所存ですが、皆様の応援があるとやる気が燃え上がります。

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― 新着の感想 ―
[一言] スタン「オレタチ、オブツアツカイ?」
[一言] >北から侵入した魔物は“休景の龍湖”の中から出ることが出来ずその場に溜まり続けることになる。 >すでに魔物が大量に溜まっているはずだ。 先に進むことを優先して休景の龍湖を放置していってしま…
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