第一話 『世界神樹ユグドラシル遠征』出発
読んでいただきありがとうございます(*- -)(*_ _)ペコリ
今日から第四章、『世界神樹ユグドラシル遠征偏』開始です。お楽しみいただければ幸いです。
朝日が昇る。
一夜明け、スタンピードはもうすぐそこまで迫っていた。
これ以上は留まれない。潮時だろう。
「では、出発します」
「はい」
城のバルコニーでオレは静かに宣言する。
後ろに控えるラーナの声がオレを支えてくれていた。
準備は十分。
忘れ物も無し。
子どもたち国民には、無用なパニックを起させないため壁の向こうの状況は見えないようにしてある。音も振動もほとんど起こらないので外側の状況は伝わらない。
ただ、『清聴』を使い、しばらく何かに掴まっておくようにとだけ指示を出した。
深呼吸して心を落ち着かせ、『拠点移動』発動する。
「――【移動術師】第十五の理術『拠点移動』!!」
透き通る空色のエフェクトが移動城砦サンクチュアリを包み込む。
静かに、振動も無く移動城砦が動き出した。
進路は北。
目指すは世界神樹ユグドラシルだ。
途中、道を阻むスタンピードはすべて粉砕し、押し通る。
『拠点移動』を操り少しずつスピードを上げていく。
移動城砦を動かす多脚は小さくスピードはそんなに速くは無いが、すさまじい力強さがある。
スタンピードでも留めることは出来ないほど、強大な質量とそれを支える強力な多脚だ。
スタンピードとの距離は見る見る近づいていく。
直撃する直前、移動城砦がほぼ最高速に達した。
――――――!!
――――――!!
音は聞こえない。
オレが張っている結界がすべてを遮ってしまうから。
だからスタンピードの恐ろしい雄たけびと足音は聞こえない。
でも多分、なんじゃこりゃーとか叫んでいるに違いない。
「突っ込みます!! 衝撃に備えてください!」
「「「「はい!!」」」」
『清聴』を使って皆に声を掛ける。
そして十数秒後、スタンピードと移動城砦都市サンクチュアリはぶつかった。
――――――!!!???
――――――!!!???
声は聞こえなかった。衝撃もほとんど来なかった。
そしてスタンピードは、ものの見事に粉砕されていった。
「よし。やりました。移動城砦がスタンピードの中を粉砕しながら駆けています。走行状態にもほとんど影響なし。ブレード装甲もその前に張った盾結界で十分弾かれているためダメージはほとんど受けていないみたいです」
『長距離探知』によるレーダーと“魔眼”による『千里眼』で状況を確認。
それはまるで除雪車で有名なラッセル車のようだった。
除雪される雪のように魔物が弾かれ、吹っ飛び、強制的に道が出来ていく。
移動城砦が駆け抜けた後には魔物は一切残っておらず、ちょっと直視するのがためらわれる様な大地だけが残っていた。
『拠点移動』をかけた移動城砦は止まらない。スピードも落ちない。壊れない。
そんなスタンピードの津波が押し寄せてきても沈む気配の無い、まさに箱舟だった。
作戦は大成功だ。
フォルエン要塞を見ると兵士たちが剣を上げて叫んでいる。どうやら歓声が上がっているようだ。
行って来るよ。フォルエンに住む人々よ。吉報を待っていてくれ。
オレも手を振って答える。向こうからではもう見えないと思うけれど。
システリナ王女と御付の従者さんも手を振るった。
よし、ここで少し小細工を発動しよう。
「頃合かな。――【狩罠工術師】第十四の理術『巨大地獄穴』」
オレは【罠士】が進化した【狩罠工術師】第十四の理術『巨大地獄穴』を発動した。
瞬間、大地に超巨大な落し穴がフォルエンを分断するようにいくつも出来る。
これは、この一年でコツコツ作ってきた超巨大落し穴だ。
去年はまだ『巨大地獄穴』は持っていなかったので罠を自作して回っていたが、『巨大地獄穴』が使えるようになった今、元々あった落とし穴も利用してまるで大陸を割るかのような裂け目が出来ている。
大地が裂けたかのような谷が突如できていき、フォルエンを目指していたスタンピードが次々と大地の裂け目に落ちていく。
深さは、測ってないけれど“休景の龍湖”より確実に深いので落ちたら間違いなく死ぬ。
唯一飛べる魔物だけが向こう岸に渡ってフォルエンに攻めることができるだろう。
ワイバーン十五万なんてものが来なければしばらくは持つはずだ。
とはいえ、これも時間稼ぎでしかない。
このスタンピードの量だ。近いうち落し穴も魔物で埋まって通れるようになってしまうだろう。それが数日後なのか、数十日後なのかはわからないけれど。
所詮は小細工でしかない。
だから、もっといっぱい小細工をしよう。
「セイペルゴン。準備はいいかい?」
「マスター。相手してくれなくて寂しかったぞマスター」
次に声をかけたのは全身から聖なる光を放っている聖竜帝のセイペルゴンだ。
昔は世界中から国殺しと呼ばれ恐れられていたが、オレとラーナに負けて浄化され、邪竜王だったのが聖竜帝に進化した存在だ。一度HPが0になったためか進化する前のことはほとんどすっかり忘れてしまい、幼児退行までしてしまった哀れな竜だ。
でもこちらの言うことは素直に従うし戦力にもなるため、討滅することなく今まで一緒に暮らしてきた。
とはいえセイペルゴンを仲間にしてからは忙しくなったし、セイペルゴンは少し甘えたがりで超巨大な身体と顔をガンガン擦り付けてくるので少し距離を置いていたのだが。
今回はそうは言っていられないので側に置いておとなしくさせていた。
そんなことを考えているとセイペルゴンの顔がこちらを向く。
「マスター。聞いているのかマスター」
「ごめんよ。忙しかったんだ、許して欲しい」
「知っているぞ。知っているから謝ったら許すつもりだったぞマスター。マスターを許そう」
邪竜王の時はプライド高い王だったためか聖竜帝の今になっても少し態度がでかい。
「作戦は覚えてるよね。やっちゃって」
「わかったマスター。やっちゃうぞ」
オレが指示を出すと、セイペルゴンがゆっくりと首を伸ばして結界から顔を出す。そして――。
――特大のブレスを放ち、スタンピードをなぎ払った。
すさまじい閃光が走る。
邪竜王時代よりさらに強力になった極太ブレスが地平線の果てまで飛んでいき、熱で近くにいた魔物が燃え上がった。
相変わらずのすごい威力だ。サンクチュアリを覆う結界がビリビリしている。
オレ、よくこんなのに突っ込んで行ったなぁ、とあの時の自分の行いを顧みて少し寒気がした。
ブレスが終わると、その周囲は焼け野原だった。
燃えているのは草ではないけど…。
だがおかげでフォルエンに向かう圧力が少しは低下しただろう。
ブレスはインターバルが必要だ。
一仕事終えたセイペルゴンが首を引っ込めて戻ってきた。
「ご苦労様、少し休んでいいよ」
「お言葉に甘えるぞマスター。ブレスは疲れるんだマスター」
セイペルゴンはそのまま伏せのポーズをして寝始める。
進化したてで低レベルなためかブレスは少し燃費が悪いみたいだ、しばらく起きないだろう。
しかしおかげで東側の魔物は数十万、もしかすれば数百万単位で一掃したかもしれない。
オレは西側に回り、“理術”を発動。
それなりの数の魔物を駆逐する。
今できる小細工はここまでだ。
あとはフォルエンに任せよう。
これより拠点移動に集中する。
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