第三十三話 さようならフォルエン
読んでいただきありがとうございます(*- -)(*_ _)ペコリ
章タイも回収しましたので、この話を入れて後二話で第三章も終了です。
ラゴウ元帥と最後の言葉を交わしたあと、イガス将軍やサイデン補給隊長といった面々に挨拶をして回り、お互いに発破を掛け合った。
「ハヤト殿に限って万が一ということはないと思うが、北は未知で溢れておる、十分に気をつけて行くのじゃぞ」
「ハヤト殿、御武運を」
「そちらも、スタンピードなぞに負けたら許さないぞ」
「ほっほ。わかっておるわい。これでも昔は火竜の将と呼ばれた男じゃ、スタンピードなどに早々遅れは取らんよ」
「姪っ子にも会えなくなるからな。昔火竜を落としたときもシステリナ殿下に会いに行きたいとかほざいて暴れた結果だろう。――イガスは姪のことになるとバーサーク化するのです」
イガス将軍は姪バカだったらしい。
システリナ王女が生まれたばかりの時、前線にいて何日も帰れず、火竜をほぼ単独で打ち落として勲章を貰いに帰国する名目を作って姪に会いに行ったという偉業を打ち立てたのだとか。
ちなみにバーサーク化するというのは比喩ではなく本当のことらしい。イガス将軍は【戦士】系の中級職【狂戦士】LV89の持ち主だと魔眼が教えてくれた。
レベルがかなり高い。
さすが、フォルエン軍の№2である。
――そして最後に、彼女に向き直った。
「システリナ王女はここに残りますか?」
出来れば彼女の意思を尊重したいと思い声をかける。
イガス将軍からは彼女をシハヤトーナに任せたいと言われているが、シハヤトーナからフォルエンに避難する人たちを見て考えを改めさせられた。
そして、残りたいなら残ってもいいのではないかと結論付けた。
祖国と運命を共にしたいというのは、地球人の自分にはわかり辛い感覚だが、この世界にはかなり一般的な感覚のようだ。
そう思っていたのだが、意外にも彼女の答えはノーだった。
「いいえ。わたくしには役目があります。ここでそれを投げ出すわけには参りませんから」
そう言うシステリナ王女が気丈に振る舞っているというのは察するに余りあった、しかしそれが彼女の選択なら、それもまたオレは尊重しようと思う。
システリナ王女の御付きのうち二人は任期を全うしたためフォルエンに帰国した。
では補充の人員は来るのかと思えばそうはいかないらしい。
「わたくしに付き合う必要は無いもの。それに、もう教育係も護衛も要らないでしょう?」
まあ護衛は確かに要らないと思う。多少の護衛で守れるレベルを遥かに超えているしね。
言葉遣いに少し険があるのは寂しさの裏返しのようだ。
その言い方からして、もしかしたらシステリナ王女が二人に残るか否かもちかけたのかもしれない。
ちなみに最後の子は自分で選択してシステリナ王女に付いていくことを決めたらしい。
システリナ王女がそれを話すときずいぶんとうれしそうだった。
フォルエン要塞を後にする。
もう、ここに来ることは出来ないかもしれないと、残る彼らと要塞を眼に焼き付けておく。
「行きましょうか」
「はい。帰りましょう。私たちの国シハヤトーナへ」
四頭引きの豪華な馬車を促すと、システリナ王女が気丈に振る舞いながらそう答えてくれた。
これは、彼女なりの決別なのだろうか、自分の国はフォルエン王国ではなくシハヤトーナ聖王国だと、システリナ王女は言葉に出すことで明確に意思表示をしたのかもしれない。
馬車が動き出し、それに合わせて併走する。
馬車の中には一人、システリナ王女だけがいつまでもフォルエン要塞を見つめていた。
「ただいま帰りました」
「ハヤト様、お帰りなさいませ」
「「「お帰りなさいませ」」」
移動城砦サンクチュアリに帰還すると、門の側でラーナと最年長組のルミ、メティ、エリーが出迎えてくれた。
側にお茶会用のテーブルがセッティングされているのを見るにわざわざここで待っていてくれたらしい。
「子どもたちの様子はどうでしたでしょう? 不安に怯えたりしていませんでしたか?」
「ええ。フォルエン要塞に近づいたとは言ってもサンクチュアリ周りは外壁に囲まれて外が見えませんから、子どもたちはいつも通りに過ごしていたみたいです」
「職人街の工房も問題なく稼動しているです。たぶん移動城砦が動いても、ほとんどそれを感じられないからだと思います」
ラーナの答えにルミが補足を入れて説明してくれる。
移動城砦は15万本の足で動いている。これが少なければもう少し振動が来るものだが、ここまで多いと逆に振動が来なくなり、動いているのかどうかわからないのだ。結界で音も遮断しているしね。
そのおかげも有って国民の子どもたちはパニックを起すこともなく、いつも通りに過ごしているらしい。
懸念材料が一つ消えてよかったよ。
ホッとしていると今度はオレの後ろに眼を向けたラーナが質問してきた。
「ハヤト様、ずいぶん大きな馬車ですけれど、あれはなんですか?」
ラーナの言葉に後ろを振り返り見てみると、ハンミリア商会の騎竜が引いた特注馬車が次々車庫に入っていくところだった。
騎竜を初めて見た年長組が若干怯えてラーナと自分にくっ付いてくるのを、頭を撫でて宥める。
「あれは以前報告したハンミリア商会の馬車ですよ。どうやら商会ごと移転してきたみたいです」
そう答えているとこちらに足を運ぶ者がいた。
ハンミリア商会のトップであるミリアナ会長だ。
たぶん、車庫に入れた後の打ち合わせをしたいのだろう。馬車をどこに止めるかも含めて彼女を案内し忘れた自分の責任だ。ミスった。
彼女の方から王族の話し合いに割り込むことは出来ないので自分の方からミリアナ会長に話しかける。
「ミリアナ会長、良い所に来てくれた。――ラーナ紹介します。フォルエン王国一の大商会、ハンミリア商会の会長、ミリアナさんです」
「御初にお目にかかりますライナスリィル陛下。このたびハヤト陛下のご好意の下、シハヤトーナ聖王国へ出店させていただけるようになったハンミリア商会の会長を務めております、ミリアナと申します」
自分のミスなんて微塵も感じさせないよう振る舞いミリアナ会長を紹介する。
すかさずミリアナ会長がカーテシーをしながら礼を執り頭を下げる。
彼女には予めラーナの特徴を話してあったし、こちらに来る際会話を聞いていたようなので相手が国王だとわかっていた様子だ。
「なるほど、あなたが――。歓迎するわ、よく来てくれたわね」
ラーナも、いつもサンクチュアリのために物を仕入れてくれるハンミリア商会に感謝していたし快く迎える。
ラーナの事もミリアナ会長に紹介し、一通り挨拶が終わったタイミングでラーナに断ってその場を離れる。
「すみませんラーナ、ハンミリア商会と今後の打ち合わせを済ませてきます」
「わかりましたわ。私は城に戻りますね、ハヤト様もご無理をしないように、これから大変なのですから休めるときにはしっかりと休んでくださいね。私、ハヤト様がいつでも帰って休めるように部屋の準備をしておきますから」
「はは。ありがとうございます。では、さっさと済ませて休みに行きますね」
スタンピードがシハヤトーナとフォルエンの国境であるここにたどり着くのはおそらく明日の朝頃。
それまでにやるべきことをすべて終わらせて、たくさん休んでおかないとね。
ラーナと約束を交わし、ミリアナ会長の意外そうな視線を受けながらオレは仕事に戻った。
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