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終わらないスタンピード  作者: ニシキギ・カエデ
第一章 子どもたちの聖域

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第十一話 現地人発見。そして人助け

本日一話目

 昨日スタンピードを目撃した。

 二足歩行の獣系、鎧系、鬼系など、人型のモンスターを中心とした構成の大群だった。

 数は、【鑑定士】によれば二十万はくだらないらしい。

 奴らはオレが最初に見つけたときと同じく北から南下していた。


 すさまじい数だ。

 【斥候】の第五のアーツ『長距離探知』に引っかかって確かめに来てみれば大当たりだ。

 もう二ヶ月近く前、オレが南へ向かった理由はスタンピードを追いかけるためだった。

 スタンピードの向かう先に、人が居るかもしれないと何も手がかりが無いなか、唯一と言っていい手がかりがコレだった。


 しかし、南に人が住むのはほぼ決定的だと思っている。

 何しろこれまで三つの滅びた国々を経由してきた、それぞれ最初に見つけた“シャタール陽王国”は20年前に滅び、次に立ち寄った“エイシスシスタ英雄王国”は16年前に、そして最後に立ち寄った“レイオン公国”はわずか7年前に滅んでいた。

 【鑑定士】によれば全てスタンピードが滅亡の大きな理由になっていた。


 南に行けば行くほど滅びた年数が最近になるというのなら、まだ滅亡していない国が南にあるということだ。

 そして見つけたスタンピード。

 これはもう決定的だろう。

 この世界初、現地人との接触の時は近い!


 スタンピードから離れて、焦る気持ちを落ち着けて就寝した翌朝。

 その日の空はどんよりとした曇り空だった。何となく、嫌な予感がする。


 オレは完全装備に着替え、持ち物のチェックをして準備を整えていた。

 “幼緑竜完全体一式”と名付けた鎧、ヘルム、グリーブ、ブーツ、籠手、マントを着て、両手には“竜牙槍”と“竜頭楯”、解体用の包丁。そしてサブウェポンの短槍を背中に装着する。あれからグリーブと籠手を新たに作成した。どれも自信作だ。

 今回リュックなど他の持ち物は拠点に置いておく。現地人と合流し落ち着いたら取りに来ようと思う。竜素材とかトラブルの予感しかしない。念のためにね。

 準備が整い、オレは『長距離探知』でスタンピードを補足しながら南下していった。


 スタンピードの行き着く先に現地人の住む国があるのだろう。

 何故このようなスタンピードが発生しているのか、何故国を襲うのかなど二の次だ。

 まずは何にしても現地人接触を最優先したかった。


 そして昼頃、オレはその国を見つけた。

 人を見つけた。

 滅びていない国を見つけた。


 この世界に来て二ヶ月足らず、ようやく現地人を見つけることが出来た。


 しかし、それはオレが予想した中でも最悪に近い出会いだったようだ。




 その国は滅亡寸前だった。

 モンスター・スタンピードを幾度も退けたであろう分厚く高い三重の城壁は大きく崩れ、今まさにモンスターが町の内部を蹂躙している最中だったのだ。

 補足していた二足歩行系の部隊はどうやら第二波だったらしい。追い抜いて先に到着したと思っていたが・・・。

 すでに第一波は城壁を食い破っていた、この後二十万のモンスターが押し寄せてくるのだ。


 人が居た。遠いが間違いない。

 数は少ないが町の中で戦っている人たちがいた。


 誰が見てもわかる。この町は終わりだ。

 とても助かりそうに無い。

 滅亡秒読みに入っている。

 これまで見てきた国々のように今日、滅びるのだろう。


 しかし、そうはさせるか!

 やっとだ。

 訳のわからないままこの世界に連れて行かれて、苦節二ヶ月足らず。

 やっと見つけた現地人。


 何度も思った。この世界はもう滅びていて人類なんて居ないんじゃ無いか。

 だが、まだ、まだ滅びていないなら。


 むざむざ滅びさせるわけには、行かない!


 感情の奔流の中、気づけばオレは走り出していた。

 【走者】のレベルは97。この二ヶ月とにかく走ってきた。オレの持つ職業の中でもトップレベルを誇る。

 そのスピード、生き物の限界を突破する。


 右手の“竜頭楯”を構えた。

 【大楯士】第十五のアーツ『突撃(チャージ)城塞(キャッスル)』を発動。

 “竜頭楯”から上位アーツ特有の緋色のエフェクトが生まれ包まれていく。


 町の崩れた城塞部分には数万のモンスターが犇めいていた。

 オレに気がついたモンスターたちが警戒しているがもう遅すぎる。

 集団で固まっているモンスターにアーツを纏って突っ込んだ。


 すさまじい轟音と肉がはじける音と共にモンスターたちがボーリングのピンのように吹き飛んだ。

 『突撃(チャージ)城塞(キャッスル)』は【大楯士】レベル85で覚えた攻撃と防御の両方を併せ持つ強力なアーツだ。

 並大抵のモンスターは楯に当たれば弾けて死ぬし、楯に当たらなくても衝撃で吹っ飛び簡単に致命傷になる。見た目突撃しているだけのように見えるが実は強力な範囲攻撃なのだ。直線上に居たモンスターは死屍累々。万の軍隊はオレが通り抜けた場所が道のように両断されていた。


 そのまま止まらず崩れた城門を突破。

 町の中に入ることに成功すると、オレはアーツの使用をやめ振り返る。

 【槍戦士】第十四のアーツ『大千(だいせん)(そう)』を発動。

 左手の“竜牙槍”から緋色のエフェクトが生まれ溢れていく。

 残った打ち漏らしや城壁付近で固まっていたモンスター共に向かって千の槍を叩き込んだ。


 超スピードで穿たれる連続の千の刺突は衝撃でモンスター共をまるで薙ぎ払うように穿ち尽くした。城門前は扇形に空白地帯が出来ている。

 二つのアーツだけで千匹は倒しただろう。すさまじい勢いでログが流れていく。


 突然の強襲にモンスターの大群は大混乱しているらしい。

 オレはその隙に町へと入った。城門跡地には【火魔法士】第十一の魔法『紅蓮百火』でモンスターの侵入を足止めさせておく。


 町の入口付近に人はいなかった。

 オレがさっき確認した人は町の中心地に近い場所にいる。

 『長距離探知』にはモンスターと戦う二十人の人が町の中央に進んでいる様子を捉えていた。

 他に町にいる人はいないようだ。すでに避難済みなのかもしれない。


 ならば、まずモンスターと戦っている人間の元へと急ぐ。


 【走者】第十のアーツ『超疾走』で町の中心地に五分で到着する。

 そこは、モンスターを阻むために置かれたであろうバリケードが崩れ瓦解し、金属鎧に身を包んだ兵隊のような人たちがモンスターと乱戦になっていた。

 五分前に二十人いたはずなのに十八人に減っている。


 まずい、と判断。“竜牙槍”から緋色のエフェクトを生み出しながら乱戦に突入した。

 『竜激槍』という破壊力と派手さが売りの強攻撃を放ち、囲っているモンスターの一部を薙ぎ払う。


「——#$‘@ΘΨ!!?」


《職業【シハ国語翻訳者】を獲得しました》


「——何者だ!」


 一瞬聞きなれない言葉を聞いた瞬間ジョブが生え、理解できる言葉に切り替わる。

 野太い声の主はこの乱戦の中でも一際目立つ兵士だった。一人だけ金色のフルプレートを装備し、同じく金色に輝く剣でモンスターを相手に善戦している。それに庇うようにして女の子を守っていた。おそらくこの人が部隊長だろう。


 さて、なんて答えよう。

 話がしたい? いやいや戦闘中だ。

 まずは怪しいものじゃないってことを説明しないと。いやだから戦闘中だって。

 兵隊たちは善戦しているがモンスターの数はその数十倍だ。助けるにはモンスターのすべてを倒さなくては、逃げ出すこともできない。

 ならば、詳しい説明は後回しだ。


「オレの名はハヤト! 助太刀する!」

「何!? バカな! なぜ避難しなかった!」


 言葉が通じる!

 そしてやはり町の人たちは避難していたようだ。

 部隊長と思われる人が鋭い目を向けてきた。

 まあ確かに向こうからすると町の人の避難のために決死の覚悟で残ったのに無碍にされたと思うのかもしれない。

 でも宣言通り助けるからあまり睨まないでほしいな。メンタル弱ってるんだよ。


 部隊長の言葉と視線を黙殺し、乱戦中のモンスターにアーツを使う。

 【英雄】第四のアーツ『英雄はここにいる』を発動。

 『英雄はここにいる』は挑発系のアーツだ。槍を掲げアピールし、モンスター共の注目を集める。

 さらに【大楯士】第十三のアーツ『衝撃反射』を発動。

 緋色のエフェクトが生み出され、それを見た兵隊たちの動揺が聞こえた。


「なっ! 緋色のアーツだと!」

「上位職業の中でも一握りの達人にのみ発現する上位アーツではないか!」

「何故こんなところに超越者が!」


 なんか色々言われているが後回しだ。

 『英雄はここにいる』で吸い込まれるように襲ってきたモンスターたちに丁寧に“竜頭楯”を当てて弾き返していく。こんな大量のモンスターとやりあうのは初めてなため集中して楯を当てていく。

 第十三の名は伊達では無く、直接攻撃の全てをはじき返す。魔法攻撃も何のその、楯に当てさえすればその威力のまま弾いたり返したりすることが可能だ。


 今も獣系モンスターが噛みついてきたが首が変な方向に曲がって沈黙した。鎧系モンスターが掴みかかってきたが、腕がもげて吹っ飛んでいった。

 緋色のエフェクトが発生する第十三のアーツ以降は全てが強力なアーツで構成されている。多用しすぎるとスタミナがごっそり無くなるので注意が必要だが、効果は非常に高い。


 少々兵隊から引き離したら『大千槍』で一掃。

 大きく戦力を減らす。


「何をぼさっとしている! それでも精鋭の近衛兵か!」


 部隊長の言葉にハっと我に返った兵士たちがモンスターに隊列を組みなおして対処に当たる。

 ヘイトをコントロールしながら『衝撃反射』でモンスターを崩し、モンスターに連携を取らせない。

 時々大技アーツで駆逐していく。

 そして数分でモンスターたちは動かなくなった。

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作者、完結までがんばる所存ですが、皆様の応援があるとやる気が燃え上がります!

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