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終わらないスタンピード  作者: ニシキギ・カエデ
第三章 託す希望と託された未来

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第二十九話 最期のフォルエン

読んでいただきありがとうございます(*- -)(*_ _)ペコリ

第三章もあと少しで終わりです。もう少しだけお付き合いくださいませ。



 ラーナはオレを元気づけてくれた後、移動城砦の起動に立ち会うべく着いてくることになった。

 どうもまだ心配させているらしい、しっかりしなくては…。

 シアは従者の方に介抱を任せてきたそうだ。


 また、バルコニーに立ち、新たなサンクチュアリを見渡しながら最終確認を行い、囁きに耳を傾けた。

 ――よし。どこにも異常は無いようだ。


「いよいよ出発なのですね」

「はい。世界神樹ユグドラシルに何が起こっているのかは分かりませんが、スタンピードを生み出し続けている原因が北にあることは間違いありません。それを止めなくては、永遠にスタンピードの津波が押し寄せてくる可能性が高いです。自分たちが、止めなければ行けません」

「はい。この終わらないスタンピードを終わらせに参りましょう」


 その言葉に深く頷く。

 終わらないスタンピードを終わらせるため、覚悟を持って移動城砦を起動した。


「――【移動術師】第十五の理術『拠点移動』!!」


 第十五以上の上位理術は、透き通る空色のエフェクトを生み出す。

 移動城砦都市サンクチュアリ全体が空色のエフェクトに包まれていき、理術が成功した事を教えてくれた。


 この五日間、何度も移動テストをしたため国民の反応も慣れたものだ。

 バルコニーの南側へ回ると、みんな外に出て空色のエフェクトにはしゃぐ姿が見える。


 楽しんでいるところ悪いのだけれど、少しだけ話をさせて貰おう。

 オレは『静聴』を発動し、国民全体に行き渡るようにして話し出す。

 やはりバルコニーから声が届かないと何かと不便なので少し微調整して声が届き、かつ住宅街の数カ所からは城が見えるようにしたのだ。


『国民の皆、少しの間だけ聞いて欲しい』


 すると、はしゃいでいた子どもたちがピタリと止まり皆が城に注目した。

 家にいた子も慌てて外に出て、皆一緒になって聞く態勢なる。

 ――え? なにこの統率力、ちょっと怖いんだけど?


 まるで軍人のように一瞬で聞く態勢になった子どもたちに、いったい何があったのかと引きつった顔をしていると、後ろでラーナがすまし顔で頷く気配を掴んだ。――子どもたちを調教したのは君かラーナ…。


 大方、子どもたちにオレの声が聞こえたらちゃんと聞くように教育を施してくれたと思うのだけど、これはちょっと行き過ぎな気がするよ? 後でラーナと話し合うとしようと心に決め、コホンと喉の調子を今一度整えてから話し出す。


『これから“サンクチュアリ”は“世界神樹ユグドラシル”の元へ出発する。長い旅になる。魔物も多くいると思う。少しだけ怖い旅になるかもしれない。だけど、皆はオレが守るよ。食べ物だってたくさん用意した。だから安心して日常を過ごしてほしい』


 子どもたちを安心させるため、しっかり守ると宣言する。

 サンクチュアリだけは、オレたちの国だけはスタンピードにやらせはしない。

 そう覚悟と決意を持って、国民に伝えていく。


 長話になると子どもたちに悪いので、ここまでにしよう。


『それでは出発しようか。“移動城砦都市サンクチュアリ”――発進!!』


 ――発進の声と共に移動城砦が動き出す。

 ゆっくりと静かに、揺れ無く動く。

 ともすれば、動いていないのではないかと思うような静けさで、移動城砦は発進した。




 移動城砦都市サンクチュアリに組み込まれた多脚は総数15万本にも及ぶ。

 その全てを調和させてここまで揺れなく動く完璧な移動を可能にしたのだ、いやあ大変だった。


 その代わり音はかなりうるさくなってしまったが、結界は音も遮断するので地響きや駆動音的な騒音は軒並みカットされている。国民の安らかな眠りを約束する素晴らしい移動城砦だ。


 バルコニーからは移動城砦がゆっくりと南東に進んで行く様子がよく見えた。


「まずはフォルエン王国に最後の報告へ行きます。移動城砦を国境まで近づけますので、ラーナたちはここに残ってください」

「…そうですね。わかりました、私はサンクチュアリの留守を守ることにしますわ。ですがシアとシアの従者は連れて行ってくださいませ」

「システリナ王女をですか……。そうですね、分かりました」


 もう二度と帰れないかもしれないのだ。

 ラーナの言うとおり連れて行こうと思う。


「ハヤト様、中に入りませんの?」

「ええ。城砦都市は能力で動かしていますから。障害物は無いと言ってもしばらく様子を見たいのです」

「でしたら私もお供いたしますわ。ハヤト様、紅茶を用意させていただいても構いませんか?」

「もちろんです。お茶を飲みながらでも運行は可能です」

「良かったですわ。ではちょっとだけお待ちくださいね」


 ラーナが城に戻っていくのを見送ると、オレはバルコニーに一人になる。


「ちょうど良いかな。ラーナが戻って来る前に小細工を進めておこう」


 それは先ほど思いついたフォルエンの負担が少なくなる小細工。

 スタンピードを軒並み殲滅は出来ないけれど、せめて手助けくらいはしてあげたい。フォルエンやそこに住む人々がスタンピードに呑み込まれないよう、オレは作業を開始した。




 しばらくして、紅茶の入ったティーセットを持ってラーナが戻ってきたので『空間(アイテ)収納(ムボッ)理術(クス)』からテーブルと椅子を出してお茶会をセッティングする。


「用意できました!」

「こちらもです。ささ、こちらにお座りください」


 お茶会なんてしていて良い状況なのか、とも思うが、この日常の光景こそ何より大切なことなのだと自分は学んだ。

 日常と平和は何より尊い。特にこの世界ではなおさらだ。


「味はどうですか?」

「はい。とても美味しいです」


 ラーナが入れてくれたお茶は本当に美味しい。

 この状況を甘受すると、不思議とやる気が漲るのだ。不安と緊張が緩和されて心が安らいでいく。ラーナとのお茶会はオレにとって何よりの助けだ。


 移動城砦は何のトラブルも無く進んでいく。

 ラーナとのお茶を楽しみ、心身共に癒やしを得て、つかの間の平穏を味わった。

 気力が漲り、これからの事に前向きな姿勢で取り組むことが出来そうだ。


「ごちそうさまです」

「お粗末様です。今度はセトルも加えて一緒にお茶会しましょうね」

「はは、セトルには悪いことをしてしまいました。もちろんですよ、セトルに嫌われてしまいますから今度は三人でお茶会しましょう」


 お茶会が終わる。

 フォルエン王国とシハ王国との国境はすぐそこだ。

 少し奥を見ればフォルエン要塞が確認出来る。


 名残惜しくもオレとラーナは立ち上がった。


「シアを連れてきますわ」

「では一階層の車庫へお連れしてください。そこから馬車で向かいます」

「わかりましたわ」


 休憩の時間は終わりだ。

 これから忙しくなる。



遠征に出る前に章タイ回収のためフォルエンに向かいます。遠征はもう少しお待ちください。


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作者、完結までがんばる所存ですが、皆様の応援があるとやる気が燃え上がります。

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