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終わらないスタンピード  作者: ニシキギ・カエデ
第三章 託す希望と託された未来

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第二十七話 移動城砦都市サンクチュアリ起動

読んでいただきありがとうございます(*- -)(*_ _)ペコリ



 地平線を埋め尽くす大量のスタンピードの情報は、サンクチュアリの幹部を震撼させるには十分なインパクトを秘めていた。

 すぐさま集められた幹部が出席する緊急会議にて情報を共有すると、会議室がざわめきで支配される。


「軽く見積もっても数千万のスタンピードですって……」


 システリナ王女が呆然とした表情で呟いた、その顔色は血の気が失せている。


「ハヤト様でも、倒せないのですか?」


 ラーナの問いかけに会議室にいた全員の視線が集まるが、正直に首を振った。


「どうにもなりません。相手は大陸を埋め尽くすほどのスタンピードです。試しに十万ほど屠りましたがまったくと言っていいほど影響はありませんでした」


 あれは言わば津波だ。大陸が海に沈んでいると表現すればわかりやすいか。

 大陸が沈むのだから迫り来る海をいくら押し出してもやがては海に埋もれてしまう。大陸が沈むのだからそこに住む生き物たちもまた海に沈むだろう。


 会議室に重苦しい空気が流れる。


「しかし、手が無いことはありません」

「え? ですが…」

「ええ。討滅することはまず不可能です。自分がいかに全力を出し切ろうと、防ぎきれるものでもないでしょう。ただ、生き残ることだけを考えるなら、遠征用に作っていた例の装置が役に立つはずです」


 オレの言葉に全員がハッとし、重苦しい空気が晴れていく。


 みんなも、オレがこの二ヶ月間大きなものを創作していたのは知っていた。

 本当なら世界神樹ユグドラシルへ向かうための遠征用に作っていた装置だ。

 まだ一部調整中だが、基本は完成している。動かすくらいなら問題ない。


 大陸が海に沈むのなら船を用意すればいい。

 それはオレが居た世界でノアの箱舟という逸話の話。


 オレがサンクチュアリから離れられないのなら、サンクチュアリごと移動すればいい。

 サンクチュアリを箱舟に改造してやればいい。

 つまり、そういうことだ。


 オレは会議室のみんなに宣言する。


「―――“移動城砦都市サンクチュアリ”を起動します」


 アニメーションなんかでたまに見る動く町。

 時には亀の背中に町があったり、時にはハ○ルの動く城だったり、時には天空の城だったりした。

 その映像を参考に作ったのが“移動城砦都市サンクチュアリ”だ。






「これより、“移動城砦都市サンクチュアリ”を起動する。危ないので住民は住居から決して外に出ないように! 繰り返す――」


 会議から三時間後。

 城のバルコニーから『清聴』を使いサンクチュアリ中に声を届ける。

 元々、住民には“移動城砦都市サンクチュアリ”の話はしてあったため、スムーズに避難を終えることが出来た。『長距離探知』にも住居以外に生命反応は引っかからない。


 それを確認した後、後ろに控えるラーナを見て、システリナ王女を見る。

 二人が頷いたのを見て、オレはそれを発動した。


「――【移動術師】第十五の理術『拠点移動』!!」


 発動と同時にサンクチュアリ中に地響きが起こった。


「きゃっ!」

「ラーナ、危ないですから掴まっていてください」

「ちょっと。わたくしも掴まらせてくださいまし」


 思ったより強い揺れに二人がバランスを崩しかけたので腰に手をやって支える。


 この理術は文字通り、拠点を動かすことの出来る付与術だ。

 理術が生えたときは一瞬何そのチートと驚愕したが、しかし囁きを得てみるとこの理術だけで動かせるというわけではないらしい。実は拠点を動かすにはちゃんとしたシステムというか、動力が必要になってくるようだ。


 人間ならば足だ。足に【移動術師】の理術を付与すれば新幹線並みのスピードで走ることは可能だ、だが逆に言えば足を動かさなければ移動できない。


 それと同じで、拠点にも何か動くための動力システムがないと動けない仕様だった。

 ――おい、拠点に足は無いぞ普通。

 そうツッコんだところ”無いなら作ればいいじゃない“と囁きが帰ってきたのだ。

 ――マジで?


 そこで今回用意したのは総数百万近い多脚だ。城砦都市サンクチュアリの地下に大量の、蟹の足のような見た目の多脚がセッティングされ、それに『拠点移動』を付与し動かしている。


 つまり“移動城砦都市サンクチュアリ”とはオレの理術『拠点移動』を前提に作られた、文字通り歩く拠点だった。



 ズドドドドッ! と起動音と共に、ゆっくりと“移動城砦都市サンクチュアリ”が動き出した。

 予め用意してあったなだらかな斜面を登り始め、その多脚が地下より脱出を果たして地上の大地を踏みしめた。


「第一起動、試運転、姿勢制御。――成功ですね」


 バルコニーからは、今まで城塞都市サンクチュアリがあった場所に巨大な穴が開いている様子が見える。

 あの場所から抜け出てきたのだ。


 今の“移動城砦都市サンクチュアリ”を外から見ると巨大な都市から無数の多脚が地面を踏みしめている様子が映るだろう。

 ちょっと見栄えが悪いので後で目隠し用に緩衝装置でも取り付けようと思う。


 坂を上る時の傾きが心配だったがそれも無事うまくいってよかったよ。


 動作確認を終えたため『拠点移動』を解除して“移動城砦都市サンクチュアリ”を止めた。


「これから、長期移動用に城塞都市を変形させます。準備はしてあったのでそんなに掛からないとは思いますが、その間は危ないので部屋でジッとしていてください」

「わかりましたわ。ハヤト様、ご無理をなさらないでくださいね」

「お気をつけて」

「はい。では、いってきます」


 バルコニーから飛び出し、二人に見送られながらオレはサンクチュアリの外壁へ向かった。

 これから城塞都市サンクチュアリを変形させる。


 今の広大な土地のままだと長期移動に不向きだ。負担が掛かった部分に亀裂が走り、分解してしまわないとも限らない。

 なので移動用にコンパクトに変形させるのである。


 やり方はシンプルである。

 【空間運搬理術師】第十三の理術『建造物空間収納理術ハウス・ザ・アイテムボックス』を使い、ボックス状の巨大プランターに改造した()を収納。外壁を収納。その他もろもろを収納していく。


 【土木大匠理術師・建築属】を使いながら『大地(ザ・グ)掌握(ランデ)』で補強し、横に大きく広がった土地を削っていく。

 住宅街まで土地を削ったら、その住宅街の上に収納したプランターや土地を出し、積み上げる。

 補強して、増築して。住宅街の上に新しい土地が作りあがった。


 こうして次々と住宅街の上に二階が出来上がっていく。


 つまり変形とは、広がった土地を積みなおして重ねる、といった改造の事だ。


 え? 人力で変形するのか、って?

 そうだよ。ボタン一つでお手軽に変形みたいなアニメみたいなものは無理。

 全部人力、組み立て式の変形です。


 これにより、城塞都市サンクチュアリはその姿を大きく変え、住宅地や職人街を一階層とし、二階層に教会、結婚式場ステージ北側広場など他もろもろ、三階層は屋上で畑や牧場などが配置された三階建ての巨大な建築物に変形を遂げた。


 元々変形の準備や計画を綿密に練っていたためものの数時間で変形は完了した。


 あとは再び動作確認をした後、出発となる。



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作者、完結までがんばる所存ですが、皆様の応援があるとやる気が燃え上がります。

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― 新着の感想 ―
[良い点] その発想は抜けてたな。 ただ、農業系はやり直しか…。
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