第二十三話 職業覚醒の異変
読んでいただきありがとうございます(*- -)(*_ _)ペコリ
「職業が消えた!?」
それは会議から一週間後、いやな予感に突き動かされ遠征の準備をしていた時、システリナ王女が血相変えて報告に来たのが始まりだった。
「はい。職人街に勤める子ども3名が突然アーツを使えなくなったと。調べたところ、職業覚醒者としての肉体の性能も落ちて一般人になっている様子です」
「すぐに案内して欲しい。自分が直接調べに行きます」
通常では未覚醒者が職業覚醒者に成る事はあっても未覚醒者に戻ることはありえない。
覚醒したら一生覚醒したままだ。
それが未覚醒になったということは、何かとてつもない異常事態が発生しているということだ。しかも複数人、すぐに確認する必要があった。
システリナ王女に『体力回復』を使って再び走ってもらい、数分で現場の工房に到着する。
「工房は、複数あります。今は詳細を省きますが、とりあえず全員を“ポンズキ”の像の工房に集めています」
「了解です」
“ポンズキ”の像の工房は“衣類工房通り”だ。中に入ると7歳の子が三人いた。
怯えさせないように子どもの目線に合わせるようしゃがみ、話を聞く。
「ハヤトしゃま、糸紡ぎ出来なくなったの」
「身体重い~」
「ふ、ふえ~ん」
「よしよし大丈夫大丈夫」
三人ともワンワン泣きながら抱きついてきたので頭を撫でつつ落ち着くのを待って話を聞いた。
どうやら、本当に突然、何の前触れも無くアーツが使えなくなり、身体が重くなったのだという。身体が重くなったのはおそらく職業が未覚醒に戻り、身体能力がダウンした影響だろう。
「三人とも、ちょっと身体見せてね」
そう断ってから『魔眼』で三人のステータスを見る。すると、
“職業なし 経験値45”
“職業なし 経験値46”
“職業なし 経験値44”
と出た。
やはり、職業がなくなっている。この子達はそれぞれ【裁縫見習い】【調理見習い】【造形見習い】の職業にそれぞれ覚醒していたはずだ。
しかし何故、急に職業が消えた?
三人の子どもたちを見る。怯えさせないよう頭を撫でて慰めながら考える。
共通点といえば歳が同じ7歳くらい、あと性別が女の子なくらいだろうか? それならこのサンクチュアリにたくさんいる。システリナ王女に他にこのような事例はあったかと聞くと。彼女も予想していたのだろう。
「いえ、他の子は問題なく扱えるようです」
との答えが返ってきた。つまり今のところ未覚醒になってしまったのはこの子達だけだということだ。
ずっと抱きしめて慰めていたおかげで泣き止んだ三人を連れて、一旦城に戻ることにした。
彼女たちのことが外部に漏れるのは不味い。
《職業システムが凍結されました》となぞの声から宣言を受けて一週間、職業覚醒者だった子が未覚醒者になったなんて事が広まったらサンクチュアリはとんでもない混乱に見舞われるだろう。特に、サンクチュアリはオレが『職業覚醒』で増やしたせいで職業覚醒者が大勢いる。
能力を失うかもしれない混乱はとても大きいものになることは想像に難くない。
振り向くと、後ろを付いてくるシステリナ王女の顔色もかなり悪い。
職業が喪失したのを確かに確認してしまったのだ、無理も無い。特に彼女が持っているのは中級職。どれほどの苦難の果てにそこまで育てたのか想像に余りある。それが失うかもしれないと考えるだけでとてつもない恐怖を感じているのだろう。
城に着いてから、オレはすぐに原因を調査した。
まず職業がなくなってしまった彼女たちには、また職業を再獲得できないかと実験してみる。
いつも通り、魔物を解体して経験値を獲得。その後職業獲得、という流れだ。
“ポンズキ”の解体を終わらせた彼女たちのステータスを“魔眼”で見てみると、それぞれ7ポイントだけ経験値が増えていた。
大体5回魔物を解体すれば職業に覚醒できるはずなので、彼女たちの経験値は覚醒できるレベルを超えている気がする。
とはいえ『職業覚醒』は一日一回しか発動できないのでちゃんと5回解体させてから発動するつもりだ。
しかし、子どもたちにはもう一つだけ問題があった。
「解体、苦手にゃの」
「血、嫌い」
「ふ、ふえ~ん」
この子たちはどうも解体がダメなようだ。
サンクチュアリの子たちは強い子が多いとはいえこの子達はまだ7歳だ、仕方ない。
何とか一体解体したところで三人ともギブアップした。
経験値的には足りているはずなので、その場で『職業覚醒』を試してみた。しかし、結果職業は戻らず。
職業の覚醒システムが凍結されているらしいので、おそらくだが一度未覚醒状態になったら再覚醒は出来ないのだと考えられる。
「で、ではハヤト様。あの子達は一生このままなのですか!? 職業が無くなれば、もう覚醒することも無く、ずっと変わらないのですか!?」
場所を変えて三人に聞こえないところで結果を話したらシステリナ王女が声を荒げた。
「――『沈静』」
「ふぐっ!」
「落ち着いてくださいシステリナ王女」
すぐに『沈静』を発動し、元の彼女に戻す。彼女が深呼吸して心を落ち着かせているのを確認すると、話を進めた。
「とにかく今は未覚醒状態になってしまったらどうしようもありません。『職業覚醒』が出来ない以上、今は“どうすれば未覚醒状態にならないのか”を探すほかありませんよ」
「しかし、共通点はほとんど無い子達ですよ。いえ正確にはありますが、住民多くが該当する共通点です。どうやって探されるおつもりですか?」
「そうですね…」
システリナ王女の最もな質問にオレは考える。
共通点。
システリナ王女の言う共通点。未覚醒状態になる共通した条件。それはなんだ?
彼女たちは全員が7歳、性別は女の子、職業覚醒者。しかし、覚醒している職業はどれもバラバラ。でも、未覚醒状態になった時期が一致する。
そして彼女たち以外にはまだ未覚醒状態になった子はいない。
何が原因で彼女たちは未覚醒状態になった?
同い年の女の子で職業覚醒者の子たちと、あの三人で何が違う?
そう考えたとき、ふと先ほどの解体の様子が思い浮かぶ。
「そういえば、三人とも解体がダメなほど苦手だったな…」
解体。
解体で得られるものは、――経験値だ。
「そうか。経験値だ」
彼女たちを“魔眼”で見たとき三人とも“経験値45”前後だった。
システリナ王女が見つけられない共通するものは、もしかしたらこれかもしれない。
「システリナ王女。付いてきてください」
「? 何か思いつかれたのですか?」
「ええ。ですがまだ確証はありませんので、まずは“裁縫工房通り”に向かい、他の子とあの三人の差異について調べます」
そう言ってシステリナ王女を連れ足早に“裁縫工房通り”に向かった。
誤字報告ありがとうございます! ルビ修正しました!
ルビふるやり方はいくつかあるのですが私のやり方ではエビルキングドラゴンのルビが上手くいかないことがあるので今後は別のふり方に変更いたします。ご迷惑おかけいたしました<(_ _)>




