第十話 長き果てに国を見た。滅亡の国
本日二話目
「おーい! 誰かいませんかー!」
オレの声がむなしく砦跡地にこだました。
外壁も中身もボロボロですでに廃墟になっている砦跡地には人はいなかった。
人がいなくなってからだいぶ放置されていたのだろう、中は結構埃が積もっていた。
「モンスターに破られたのかな」
オレが入ってきた入口と思われる門は完全に破壊されていて出入り自由の状態だ。
何かドデカい衝撃を受けたのだろう。門扉と思われる巨石の塊が割れて転がっていた。
いくつかの部屋を見てみる。
そこには、確かに人が使っていたと思われる器具や家具が転がっていた。すべて石製だ。石材が主流だったのかもしれない。
やっぱりこの世界に人はいるようだと確信する。朽ちてはいるが人がいた形跡が色濃く残っている。
オレが睨んだ通り、モンスターの大移動は人の住む場所を目指していたのだろう予測が現実味を帯びてきたようだ。
砦の中心地。
そこに崩れていたが、元々はかなり豪華だったことが伺える部屋があった。
おそらく、司令官クラスが詰めていた部屋だと思う。
散乱したデスクやボロボロに崩れた国旗と思われる旗、これもすべて石で出来ている。
そして壁に書かれた文字がその証明だ。
《職業【シャタール国語翻訳者】を獲得しました》
文字を見つめていたら読めるようになった。ジョブさんグッジョブだ。
それによると、ここは司令官室でスタンピードを食い止めるための砦だったことが書いてあった。他には司令官たちの名前、着任した年月日、そして国王の言葉が長々と書いてある。
「魔物・暴走」
国王の言葉にも何回も登場するスタンピードの文字。
どうやらこの国はそのスタンピードの脅威を数年に渡って受け続けていたらしい。
励ましの言葉、希望の言葉などが多く綴ってあるが、最後は絶対に落とされてはならないと締めくくられていた。
廃墟になってしまった砦跡地を見る。こうなってしまった原因は、恐らくスタンピード、モンスターの暴走だ。この国の人たちはどうなってしまったのだろうか…。
「行くか。ここには、もう何も残されていないようだ」
モンスターは南へと進んでいた。
そして南には人が住んでいた痕跡があった。
「南に行こう」
南に何かがある。
人がいる可能性は、今回の事でほぼ確実になった。
スタンピードというモンスターの大侵攻に、大きな不安を覚えながら、オレは砦跡地を後にした。
それから八日後。
オレは滅びた国の首都と思われる場所に来ていた。
《職業【鑑定士】を獲得しました》
巨大な都市が滅びていた。
最初に砦跡地を見つけてから二つの砦跡地を発見し、そして滅びた大きな首都を発見したのが今日の朝の事だった。
すごい惨状だった。首都全体が瓦礫の山になっていたのだ。建造物の類は一つも無事なものは見当たらず、すべてが崩壊し焼け焦げていた。まるで隕石が降ってきたかのように中心地から放射状に破壊の波が広がっていた。いったい何があったんだ?
滅びた都市に入り、半日観察して回ると【鑑定士】のジョブが生えていた。
これにより、オレはここが“シャタール陽王国”首都“シンシタル”跡地であると知った。
【鑑定士】によると、滅びてからすでに20年も経っているらしく、もう人は住んでいないらしい。
やはりスタンピードによって大きな被害を受けたようだ。ただ、滅びた直接の原因は災害級の大魔法らしい。それが都市の中心地で発動。何もかもを滅ぼしたのだという。
この世界には都市を滅ぼすような恐ろしい魔法があるのか!?
それを見たときは心底驚いた。核爆弾みたいな奴だろうか?
【鑑定士】によれば“有害物質は確認されない”と出る。
それを聞いてほっとした。
しかし、そんな危険物が存在するという事実は大きい。
オレの【結界魔法士】で防げるだろうか? いやドラゴンが防げないなら無理だよな。
うーん。今の【結界魔法士】のレベルは48。ドラゴンと戦った時はレベル5だったからずいぶん育っている。魔法も初期魔法の『結界』の他に10個も使えるようになっている。しかし、もうちょっと気合い入れてレベル上げしたほうがいいのかもしれない。万が一に備えるのは大事だ。
他にはあまり得られるものは無いようなのでオレは翌朝には首都からまた南へと旅立つことにした。
いや、本当に収穫物が何も無かったのだ。衣服どころか布きれ一枚無いし、植物の類いは相変わらず無いし、果ては鉄を初めとする金属類すら軒並み無かった。あるのは焼け焦げた石だけだ。本当に過去何が起きたんだ?
南へ進んでいくと明らかにモンスターとの遭遇が増えた。
北の荒野では見渡せば疎らに居るくらいだったが、南ではかなりの数が目視で確認できた。集団で居る種も多い。
【隠密】も頑張っているけれどさすがにこの数ではマラソンしながら通り過ぎるのは無理なので、時々止まり、迂回路を模索しながら、大抵は諦めて戦闘に突入。レベル上げの貢献に協力してもらっている。ただ、持てなくて放置しなければいけない素材が残念で成らない。
【鑑定士】によりモンスターの素材について詳しくわかるので、役に立たなそうな素材は捨てるしか無いのだ。持てる量には限度があるのだから仕方ない。
ああ、アイテムボックスみたいな物を異空間に収納出来るジョブとか無いかなぁ。商人の職業とか生えたら使える様になるだろうか、しかし生えるために物を売り買いする相手が居ないしなぁ。
やっぱり人を見つけないと。
改めて人を見つける意欲を発見してしまったのでこれからも気合い入れて旅をしよう。
最近は旅をしていても苦になり難くなったなと思う。
水は魔法で生み出せるし、火だってそうだ。装備はドラゴン素材で作った完全装備で満足のいく出来だし、食べ物も肉だけしか食べてないが慣れてしまえばどうということはない。むしろ様々な肉に出会えるので次にどんな肉に出会えるのか楽しみなくらいだ。
最近では蹄を持つ魔物は美味く、肉球を持つ魔物は不味いと分かってきたほどだ。
住居も最初のかまくら型をベースに色々改造を施している。特に水場を充実させた。ドラゴンを倒すまではモンスターの脅威に怯え服を脱ぐことすら拒否していたが、【結界魔法士】のレベルが爆上がりして、自身の力に自信が付いたので風呂にも入れるようになった。
洗濯もするようにして、装備の手入れは万全だ。全部アーツ&魔法任せだから手軽だし簡単だ。本当職業様様だね。
旅の途中新たに【洗濯技師】【遊戯貴族】【湯銭工】【大工】【重装戦士】【風魔法士】が獲得できたのも大きい。
おかげで水場を含む拠点が三十分かからず完成してしまうし、重装備も動きは阻害せず着替えにも服並みの簡単さだ。通気性もあるため汗にもそれほど困らない。
最近は風呂場の天井に『結界』だけ張って夜空を楽しんだりしている。
長旅ってリラックスが大事だとしみじみ身に感じたよ。
そして“シャタール陽王国”首都“シンシタル”跡地を後にして32日後―――。
同じように滅びていた二つの国々を経由し、オレはとうとう人が住まう場所に到着した。
しかしそこは、スタンピードにより滅亡秒読みの国だった。
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作者、完結までがんばる所存ですが、皆様の応援があるとやる気が燃え上がります!




