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9.極上のジャンクフード

学生パックの3ゲームを終え、貸し靴を返却。

渡されたスコアシートを確認する。


『フジタ』と書かれた紙のスコアは、147→152→157、アベレージ152。

『ミズハシ』と書かれた紙のスコアは、204→183→176、アベレージ188。

とても分かりやすく、凡人と天才の差が出ることとなった。


「俺、筋力以外で運動系勝てる気がしねぇ」

「持久力もあるよ。ボクはゲームの度にスコア落ちてるけど、

 怜二君はゲームごとに上がってるし」

「その上でこの差だ。参った」


普段と比較すると、今日はわりかし調子いい方だった。

もっとも、調子どうこうでひっくり返せるようなレベル差ではなかったが。


「本当だったらそれ、俺が獲ってプレゼントしたかったんだが……」

「その気持ちが嬉しいよ」


キャンペーンをやっていたらしく、ターキーで賞品がもらえるとか。

雫が決めたターキーは4回。キーホルダーにぬいぐるみを二つずつ獲得。

俺もせめて1回はと思っていたが、ダメだった。


「一旦休も。どこがいいかな?」

「候補がいくつかあるから、希望言ってくれ」

「それじゃ、ファーストフードでお願い」

「となると、ハンバーガーで大丈夫か?」

「むしろ大歓迎」

「了解。それじゃ、あそこ行くか」


俺と雫でハンバーガーショップに行くとなれば、選択肢は一つ。

初めて遊びに行った時と同じ店しかあるまい。




「ダブルチーズバーガーセット、ドリンクはオレンジで」

「てり焼きバーガーセット、ドリンク一緒で」

「かしこまりました」


あの頃に思いを馳せ、同じメニューを注文。

しっかりデートという状況であるのにも関わらず、

お洒落なカフェとかよりこういうとこを希望するのが雫。

気を使ってる……ということはないはず。

自称わがまま、他称純粋な雫は、変に気を使ったりしない。


「はい、ボクの分」

「いや、ここは俺に持たせてくれ」


奢るつもりでいたから、トレイには二人分の合計料金を置いた。

それとほぼ同時に、雫は自分の注文分のお金を俺に渡そうとした。

いい彼女だな、本当に。


(俺にはもったいないぐらい、と続く所だが)


そんな感じで自分を卑下する俺は閉店済。

相応しい男になる為の努力は続けてるんだ。それはそれで認めよう。

自意識過剰にならない程度の自己肯定感は必要だ。


「こういうことはちゃんとしたいんだ。

 それに、二人で分け合った方がもっとたくさんデートできるし」

「そうか……もしかして、こういうカッコつけは嫌だったりするか?」

「嫌いって訳じゃないけど、あんまり好きでもないかな。

 初めての時に同じ事をしたボクが言うのもなんだけど」

「分かった。じゃ、受け取る」


経済的な余裕はあるが、プレゼント以外は分け合っていくか。

雫は何かと分かち合うのが好きだし、そこは俺も一緒だ。


「身体動かした後のご飯って美味しいよね」

「腹減ってるからな。だが、それは些細な理由だ。本当は……」

「ボクと一緒に食べてるから?」

「大正解。にしても随分自信あるな」

「少なくともボクは怜二君と一緒に食べると何でも美味しいし、

 怜二君も同じ気持ちになってたら嬉しいなって思って」

「超・大正解。全くもって同じ気持ちだ」

「ふふっ、嬉しいし美味しい♪」

「あぁ」


誰かと一緒に食べる食事は美味しい。相手が雫なら尚更。

格安のハンバーガーだろうが、雫と一緒なら高級ステーキより上。

……いつかは、本当に高級ステーキを雫に食べさせてみたい。


「今年ももうすぐ終わりだね」

「だな。色々あった一年だった」

「ねー」


思いがけない頼みから始まり、透の真の姿が見え始め、

つながりのある女子の悩みや問題を解決していく内に変化が訪れ、

最後に透は完全に消え、俺は雫と恋仲に。

間違いなく、今年は俺の人生のターニングポイントとなった。


「夢みたいだけど、夢じゃないんだよね。

 ボクに友達ができたことも、怜二君が彼氏になってくれたことも」

「紛れもなく現実だ。今は夢を見てるんじゃない。叶えたんだ」

「嬉しい。本当に、嬉しい」


そして、雫にとってもそれは同じだろう。

優等生の仮面が外れ、お茶目な普通のJKになって、何人もの友達ができた。

孤立に怯えていた頃からは想像もできない、笑顔が素敵な美少女。

今は友達と遊びに行ったり、誕生日を祝ってもらったりだってできる。


「怜二君。今年を漢字一文字で表現するとしたら何?」

「そうだな……『切』かな。雫の電話は『切』っ掛けになったし、

 透との腐れ縁も『切』れたし、新しいスタートを『切』れた」

「なるほど。あと、皆にも親『切』だしね」

「そう、なるのかな」

「そうにしかならないよ。今年だけで何人助けたと思ってるの?」

「……4人ぐらい?」

「まずボクでしょ、お兄ちゃんの頼みも聞いてくれたし、

 お父さんとお母さんも助かってるからここでもう4人。

 それから穂積さんに門倉さんに古川先輩に八乙女さんもだし、

 深沢先輩も色々手伝ってもらったって聞いてるよ?」

「軽く書類の整理したぐらいなんだが……」

「それがなかったら、生徒会が回らなかったって言ってた。

 それに、男の子も二人三脚で橋田君の代わりに出たし、

 夏の海の家でも色々と。ほら、両手じゃ足りないよ」


全ての指を閉じ、グーになった手をパッと開く。

そこまでのことはしてないが、人数だけで言えば確かに。


「今年は色々あったからな。たまたま重なっただけだ」

「それを全部どうにかしちゃうんだもん。もっと誇ってよ」


自己肯定感は昔よりずっと高まったが、未だ慣れない。

でも、雫がここまで言ってくれたんだ。多少は認めねば。


「少しは誇ることにするよ」

「本当に謙虚なんだから……」

「それはそうとして、雫は何になると思う?

 今年一年間を漢字で表すとしたら」

「えっとね、真実の『真』。『真』のボクが出せるようになったし、

 色々と『真』剣に考えた。そしたら、『真』の愛をもらえた」

「『真』っ直ぐに頑張ったからな」

「怜二君がボクを大『切』にしてくれたからね。これからも宜しく!」

「あぁ。『切』磋琢磨していこうぜ」

「勿論! ど『真』ん中進んで行くよー!」


密度の高い一年はもうすぐ終わるが、来年には新たな始まりが来る。

その時まで、そしてそれからも全力で雫を愛そう。

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