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7.25日34時

2学期が終われば、訪れるのは冬休み。

期末テストの結果も上々だったし、しっかり休める。

とはいえ、ゆっくり休むつもりはない。


「怜二君、クリスマスって空いてる?」


冬休みが始まってすぐ、恋人の祭典であるクリスマスが来る。

当然、雫と一緒の時間を過ごしたい……の、だが。


「……本当に悪いんだけどさ、ちょっと危ないかもしれん。

 他のメンツも予定あるっぽくて、微妙な感じになってる」


ここ最近、テストだったり雫とのデートや誕生日会だったりで、

シフトにあまり入らなかった皺寄せがここに来ている。

受験もあるから少しずつシフトを減らしてはおいたのだが、

なまじ役職が高いこともあって、呼ばれることは多い。


「あー、結構無理言ってたんだっけ?」

「それなりに。けど、何とかして誰か口説くわ。

 他店からの応援とかも組み合わせれば、どうにかならんこともない」

「分かった。けど無理はしないでね。

 当日をズラして26日とかっていう手もあるし」

「気遣いありがとな。何とかする」

「恋人はお互いに思いやりがあってこそ。じゃ、予定決まったら宜しくね」


『仕事と私のどっちが大切なの!?』ならぬ、

『バイトとボクのどっちが大切なの!?』ということを言わないのがありがたい。

だが、その優しさに甘える訳にはいかない。

加えて所詮はバイトだ。最悪バックれ……るのはなしだな、うん。

デートやプレゼントに使うお金の収入源はここだし、色々と恩義もある。

雫が大切なのは確かだが、それを理由にんな無責任な真似をしてはならん。

雫をダシにした侮辱とすら言えるし、そんなことをしてオフを作ったとしても、

雫が喜ぶ訳がないだろう。


(となれば、正攻法でどうにかする!)


こちとら便利屋押し付けられつつあるサブトレーナーじゃ。

ヤバい状況を何回切り抜けて、何人口説いてシフトに入れてきた?

俺ならできる! 俺自身を信じろ!




「……ということで、26日で頼むわ」


……ここで決められないのが、俺が主人公になりきれない所以であり。

早期に休みを依頼していた他メンバーのことを考えると、

俺がイブ含めたクリスマス当日のシフトに入るしかなかった。


「分かった。仕方ないよね」

「本当にごめん。初めてのクリスマスだってのに……」

「大丈夫だよ。クリスマスは神様の誕生日ってだけでしょ?

 怜二君とデートができる日は、いつだって記念日だから」

「雫……」

「もっと言うなら、怜二君と付き合ってからは毎日がエブリデイだし♪」

「何でちょっとボケた」

「ちょっとでも気持ち、軽くなるかなって。それに強ちボケた訳でもないよ。

 春先のボクにとっては、当たり前の毎日が遠かったもん」

「……なるほどな」


タイプは違うが、俺が今までの学校生活を脇役仕事で無駄にしていたのと近い。

神格化されたイメージを無理に維持しようとして、好きなことを我慢し、

優等生と女神様の仮面を被り続けていた雫にとって、

『当たり前の毎日』というものは、何よりも大切で、欲しかったもの。


(それじゃ、そこにそっと華を添えさせてもらうか)


素朴な一品料理に、季節のあしらいを。

クリスマス当日にしたかったことを、できる範囲でやっていこう。




迎えた冬休み、そしてクリスマスの次の日。

いつもの待ち合わせ場所、大通り西口。

白い息を指先に吹きかけていたら、待ち人が訪れる。


「お待たせ」


薄いベージュのボアジャケットに、赤と黒のチェックスカート。

脚には黒タイツ、頭には俺がプレゼントしたニット帽。

防寒バッチリ、もこもこモードの雫。

ボーイッシュなファッションが似合う雫だが、

こういった柔らかなコーデも最高に可愛らしい。


「今日も可愛いな。あったかそうな感じで」

「怜二君もカッコいいよ。じゃ、心も温めてくれる?」

「ほら、どうぞ」

「ありがとっ♪」


腕を差し出し、そのまま組む。

手袋が必要な季節の基本スタイル。

これがクリスマス当日だったら、なおのことよかったんだが……


「本当にごめんな。完全に歳末の雰囲気だし」

「謝らないの。怜二君が頑張ったおかげで、色々とできた人がいる。

 それに、今日はボクと怜二君だけのクリスマスでしょ?」

「……そっか」


雫は自分のことを相当なわがままっ子だと思っているらしいが、

こういう所に関しては、むしろかなり控えめな方。

付き合ってから初めてのクリスマスデートのチャンスが消えたのに、

嫌な顔一つしない。


「ある意味、クリスマスじゃなくてよかったかも。

 初デートに誕生日と来て、クリスマスデートまでできちゃったら、

 ドキドキで壊れちゃいそう」

「これで壊れてたらもたないぞ。これからもドキドキさせるつもりだし」

「うん……ボク、がんばる」


強く抱きしめたら、壊れてしまいそうなほどに儚い少女。

なのに孤高の存在になって、寂しさに苛まれていた。

けど……それも今となっては、過去の話。


(絶対に、大切にする)


今現在とこれからは、雫の隣には俺がいる。

となれば、俺が何をするべきかははっきりしている。

今日も一日、彼氏としての務めを果たしていこう。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] クリスマスは神様の誕生日ではなくてキリスト教の教祖であるイエス・キリストの誕生日ですね。 クリスマスは英語で「Christmas」Christ(キリスト)-mas(祭)
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