5.不意打ち
フライドチキンにかぶりつき、味の染み込んだパエリアを食べる。
流石は渚さんだ。どれもこれもめちゃくちゃ美味しい。
「渚さん、パエリアのレシピって教えてもらえませんか?
今度、料理研究会で作ってみたいです」
「勿論! 学校でも作って頂戴」
こういうスペックの高さがあるから、本気で嫌われたりしない。
雫にとっては、それ故に複雑な気持ちを抱いてしまうんだろうけど。
「ところで古川先輩、冬の小説コンテストの調子はいかがですか?」
「今回はね、恋愛小説に挑戦してみようかなって思ってるんだ。
その……丁度、雫さんと藤田くんみたいなカップルの」
「んふっ!?」
俺と雫をモデルにした恋愛小説!?
え、そんなん書こうと思ってたんですか!?
「ゲホッ、ゲホ、ゲホッ!」
「藤田くん!?」
「いや、ちょっと……驚いて」
「うん……ごめんね? だけど、二人って素敵なカップルだから、
冬に合うあったかい小説が書けそうって思って……」
謝ることではないんですが、驚きますって。
雫も驚いて……いや、この表情は違うな。満更でもないって感じ。
「完成したら、是非読ませて下さい。
まぁ、どう書かれてもボクと怜二君そのものの方が素敵ですが!」
「雫!?」
「それは私も思うよ。幸せそうだもん」
「先輩!?」
「二人ともお似合いだからね♪」
「鞠!?」
「文句なしの校内ナンバーワンカップルです!」
「八乙女!?」
集中砲火が! 集中砲火が過ぎる!
女三人寄れば姦しいとはよく言ったものだが、全部俺にキてる!
正確には俺と雫にだけど、雫はめっちゃ楽しんでる!
実質4対1! めっちゃくちゃ恥ずかしい!
「そりゃ、ウチの雫をオトした男だもの!」
「怜二君には頼りがいがある。雫を任せるには十分だ」
「シスコン兄ちゃんとしても合格点だってばよ」
「ちょっ!?」
7対1になった! そっちまで乗ってくんの!?
あぁもう、こうなったら仕方ねぇな!
「皆ありがとな! 俺もそう思ってる! 雫の隣に立つ男は俺だ!
この場で宣言する! 俺はずっと最高の彼氏であり続ける!
雫! 絶対に離さないからな!」
いっそのこと、この場にいる全員を証人にしてしまえ!
俺は一生をかけて、全力で雫を愛する!
「うん! ボクも絶対に怜二君を離さないから!」
「最高ー! やっぱり婚姻届取りに行くわよ!」
「落ち着け。……娘を、宜しく頼むぞ」
「親父、それ完全に結婚の挨拶に来られた時の答え」
雫の誕生日会だってのに、なんかおかしなことになったな!
だが、この気持ちに嘘偽りは一切ない!
絶対に、絶対に、絶対に俺は雫を愛し続け、
雫に大好きでいてもらえる俺であり続ける!
これが俺の決意だ!
会話を楽しみ、美食に舌鼓を打つ中、ケーキが登場。
……だが、ここで一つの疑問が浮上した。
「ケーキ様のおなーりー!
雫の希望通り、いちごたっぷりで焼きましたー!」
(……ん?)
ということは、これは渚さんのお手製。
あれ、それじゃ源治さんと海が取りに行ったケーキは一体……?
「んじゃローソク立ててね。もう一個持ってくるから」
「うん、お願い。……ふふっ」
雫はこのこと知ってるっぽいけど、何の意図があるんだろ。
渚さん手作りのと、店売りので2種類食べたかったのか?
スイーツが好きなことは知ってるから、無くはない話だが。
「はい、怜君」
運ばれてきたケーキは、至って普通のホールケーキ。
渚さんが、それを俺の前に置いた瞬間。
「「「「誕生おめでとう、怜二(藤田)君(先輩)!」」」」」
「……は?」
何故か、誕生日……いや、『誕生』を祝う声が俺に。
困惑しながら視線を落とすと、そこには文字が書かれたチョコレート。
(Happy Birthday、怜二君……?)
え……これ、どういうことなんだ?




