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45.温泉談義 in 男湯

かけ湯をしてから、ゆっくりと浸かる。

結構熱いな。あまり長くは入れないか。


「藤田君。頭に水で濡らした手ぬぐいを置くとのぼせにくいぞ」

「あぁ、それじゃちょっと」


早速、有益な助言が貰えた。

アレって雰囲気とは別の理由もあったんだな。


「ワシみたいなジジイになると風呂も命懸けじゃ。

 一人暮らしじゃし、ちょっとした事故でくたばりかねん」

「お察しします」

「死ぬ時は布団の上で婆さんに迎えに来てもらうと決めとる。

 風呂場なんぞで死んだら笑われるわい」

「冬場は特に危ないですからね」

「ということで、うちの民宿の脱衣所は常に暖かくしておるんじゃ」

 

宿泊環境の整備はバッチリ。夏場でも結構過ごしやすかったし。

その辺の配慮も行き届いてるんだな。


「じゃが、婆さんはまだワシを迎えに行きたくないらしい」

「そりゃそうですよ。長生きしてもらいたいと思ってるんじゃ?」

「実はな、君らが帰った日の夢に婆さんが出てきたんじゃ。

 『起きたらすぐ、人間ドックに行きなさい』と言われてな。

 予定もなかったし、行ってみたんじゃ」

「人間ドックですか」

「婆さんには助けられたよ。癌が見つかった」

「癌……!?」


こんな場で重大な病気の名前を聞くことになるとは。

でも、シゲ爺の奥さんに助けられた、ということは……?


「医者曰く『癌になった人にこんなことを言うのもおかしいですが、

 今日人間ドックに来たのは本当にラッキーですよ』とのことじゃ。

 早期中の早期の発見故、100%治せるらしい」

「ということは、今は」

「無事に切除したよ。本当に精密検査じゃないと見つからんサイズでの。

 手術を終えた日の夢はドヤ顔した婆さんが出おったわい」


年甲斐の無いところもあるが、長生きして欲しい人だと思ってる。

九死に一生……という程ではないかもしれないが、無事で何よりだ。


「君は大丈夫だと思うが、身体には気をつけるんじゃぞ。

 健康維持は勿論、まずいと思ったらすぐに医者に行け。

 違和感を無視したら大事になったということもあるからの」

「はい、気をつけます」

「よし。じゃ、本題に入るか」

「本題ですか」


これだけ大事の話からだと本題もクソもないと思うが。

一体何の話なのだろうか。


「君のコレの水橋君とは、どういう流れで結ばれた?」

「あぁ、そういう……」


あの時と同じく、ニヤついた顔で小指を立てて。

……こういうところがあるのが、健康の秘訣か。


「夏休みの後に、テスト勉強する為に家に呼ばれまして。

 その時に告白したんですけど、保留ということになって」

「ほうほう、水橋君としても悩みどころだったのか」

「『恋』というものをはっきりとは分かってなかったみたいで。

 考える時間が必要だったんだと思います」


関連したものは、中学の時にあった二回の告白だけ。

しかもその内一回はロリコン教師から。

判断基準がないのも無理はない。


「ということは、水橋君から答えを貰った訳か」

「ほぼそうですね。意思を示してもらったんで、もう一回告白して」

「カップル成立ということか」


決め手となった修学旅行の件は、流石に話せない。

もしかしたらサル経由で伝わってるかもしれんが。


「いやー、めでたいの。来年の夏はこっちに来るか?

 二人部屋、安くしとくぞ?」

「受験勉強もあるんで微妙ですね」

「そうか、君らは春から三年生じゃったの。

 とはいえ、息抜きも必要じゃろ?」

「じゃ、余裕があったらで」


果たして海に行くことはあるのだろうか。

雫のコンプレックスの問題もあるから、無理強いはしないが。

……最近のことを考えると、積極的なんだけども。


「他の皆はどうしている?」

「穂積はあの時とほぼ同じと思っていいですよ」

「あの明るさは看板娘にピッタリじゃ。

 惚れてる男の方はどうなんじゃ?」

「あー……」


別に言ってもいいんだが、どう話そう。

あんまり、いや全く明るい話題ではないからな。

短くまとめて、サラっと話すか。


「色々やらかして不登校です」

「不登校……それはまた。彼も苦労したのか」

「いえ、言ってしまえば自爆ですよ」

「自爆? どういうことじゃ?」

「俺に関してあることないこと……いや、ないこと吹聴しまして。

 そのせいで俺、一時期いじめに遭ってたんですよ」

「なんと……」

「で、それがバレてクラスから総スカン喰らいまして。

 惚れてた女子も全員キープ扱いしてたことも露呈して、

 学校に居場所が無くなった、と」

「……とんだろくでなしもいたもんじゃの。

 勝も縁は切ったのか?」

「当然。あいつ曰く今は保健室登校中だそうです」

「正解じゃな。……あの時のみならず、か」


海の家でも透は足を引っ張りまくり、損害さえも出した。

にもかかわらず、それでもヘラヘラしていた。

それをずっと続けていた末路が今ということで。


「すまん、いらぬことを聞いたな」

「構いませんよ。今は幸せですし」

「じゃろうな。……何事も、早くに見つけるのが大事じゃな。

 癌にしろ、友人にしろ」


見つけるのに17年かかったが、今は完全に切れた。

そして、失った日々の元は一瞬で取れた。

……いや、正確には『与えてくれた』ってとこだな。


「水橋君も風呂かの? 今なら矢沢君もいるはずじゃが」

「風呂ですね。向こうも話してるんですかね」


矢沢さんはいい人だし、楽しい入浴になるだろ。

客室の風呂もあるし、ぼちぼち上がろうかね。

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― 新着の感想 ―
[一言] 女湯サイドが気になりますねー♪
[一言] 更新お疲れ様です(*`・ω・*)ゞ シゲ爺さん、ほんと良い大人ですね( *´︶`*) こういうご老人には、 ぜひ長生きしてほしいものです✨ 次の投稿も、楽しみにしています!!!!!!
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