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42.私なりの精一杯

side:深沢凛

送別会を終え、私は智君と共に歩く。

互いの目的及び、思考は異なっているが。


「鹿島先生のお知り合いって、どんな方なんでしょうかね」

「さあな。私も分かりかねる」


茅原君から貰った紙には、一応地図が描いてあった。

しかし、隅に『当然ウソ。告白ガンバ』と書いてある。

どうせなら事前に伝えて欲しかったのだが、まぁいい。

……下手したら、私がボロを出すことも考えられるし。


(では、そうなる前に伝えるか)


丁度、人通りが少なくなってきた辺りで。

智君の華奢な肩をそっと掴み、歩みを止める。


「んっ!? せ、先輩?」

「話がある」


……いきなり間違えたかもしれん。これだとただ怖いのでは。

だが、やってしまったものは仕方ない。やり通そう。


「えっと、何でしょうか……?」

「二つあるから、順に聞いてくれ。

 まずは一つ。鹿島先生の知り合いが近くにいるというのは嘘だ。

 当然、私に会いたいという話も存在しない」

「えっ……?」


困惑するのも当然だが、この後に続く話はなおのことだ。

だが、彼はこの程度で判断を誤る人間ではないということを、

私はよく知っている。


「この嘘の理由が二つ目だ。その前に聞きたいことがある」

「は、はい……分かりました」


覚悟は決まっているが、少しだけ前置きをしておこう。

私は覚えていても、彼は忘れているかもしれないし。


「昨年の7月、雷雨で停電が起きた時のことを覚えているか?」

「去年……あぁ、ありましたね」


どうやら無用な心配だったらしい。

らしくない姿を見せたという自覚はあるし、記憶には残りやすいか。

では、本題に移ろうか。


「あの時からずっと思っていた。そして、ようやく結論が出た。

 だから、こうして君と二人きりになれる機会を設けてもらった」

「……?」


不思議そうに小首を傾げる姿が何とも愛らしい。

そういった点にも惚れたが……それは主となる理由ではない。

私が智君に惚れた理由は、勿論。




「私は……心優しく、私を支えてくれた君のことが好きだ。

 どうか、私を君の恋人にして欲しい」




「……えっ」


困惑するのも無理はない。全てが唐突過ぎる。

だが、これで私の思いは伝わった。


(最後の青春を謳歌した、という点は満たしたが)


願わくば、私はこれからも智君に支えてもらいたい。

そして……一人の少女として、愛されたいんだ。


「……その、先輩。本気で言ってるんですか?」

「私は常に本気で生きているということを、君は知っているだろう?

 況して、想い人への告白を本気以外のどういう気ですればいい」


私は智君のことが大好きだが、それを当人に知られるのは今が初めて。

この性格もあり、気持ちや思考が漏れることはよくあったが、

こんな時に限って、そうはならなかったらしい。

なら、今ここで答えを聞くだけ。


「えっと……その、嬉しいです。僕、告白されるなんて初めてですし。

 しかも、それがまさか……深沢先輩、だなんて」


どうやら、私は少なくとも嫌われてはいないらしい。

だが、私は知っている。


「でも、ごめんなさい。僕も深沢先輩のことは好きですが、

 その意味は多分、先輩とは違っています」


『嫌いではない』と『好き』の間には大きな隔たりがある。

『LIKE』と『LOVE』には大きな違いがあるように。

今までまともに好意を出していなかったし、これも必定か。


「ありがとう。答えてくれて嬉しいよ。では、達者で……」

「待って下さい!」

「っ!?」


何故、私を呼び止める?

私に対して恋愛感情を持っていないのなら、その行為に意味は……


「僕がこう答えた理由はただ一つです。

 僕はまだ、会長として以外の先輩のことをちゃんと知ってはいません。

 だから、僕の答えにはまだ続きがあります」


それについては私も分かっている。

あの日を除き、私はずっと『生徒会長深沢凛』でありつづけた。

それ以外……水橋君の言うところの『普通の女の子の凛ちゃん』の部分は、

他の誰にも見せたことがない。


「僕は中途半端な気持ちで、先輩の彼氏になりたくありません。

 だから、僕はもっと先輩のことを知りたいんです。

 なので……友達から、始めませんか?」


……私の目は、間違っていなかったらしいな。

思った通り、智君はとても誠実な人間だ。


「……あぁ。これからは先輩も後輩も関係ない。

 友人として、宜しく頼む」


心の中で『今はな』と付け足しつつ。

私の恋は、どうやらここから始まるらしい。


「それではまず、今週末の計画を立てたい。

 この後、時間はあるか?」

「えぇ。初めてでも楽しい時間を過ごせる所を中心に選びます。

 こういうこと、得意ですから」

「知ってるよ。君の才は多岐に渡るからな」

「だといいんですけどね」


藤田君と水橋君には感謝せねばな。

最高の結果ではなかったが、十分な結果だ。

何より、これなら後悔など欠片もない。


(青春、万歳!)


大学が始まるまでは、色恋沙汰に現を抜かそう。

三年間も走り続けていたんだ。それぐらい許されるだろ。

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― 新着の感想 ―
[一言] 更新お疲れ様です(^_^ゞ 最近、深沢さんサイドの方が『ラノベのラブコメ』 っぽいですね✨ なんか雫さんと怜二は、もう私のなかでは 安定してます。好きです(о´∀`о) ますます目が離せま…
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