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39.やらない後悔よりやる後悔

「……という訳で、私は彼に恋慕の情を抱いている」


天下無双の生徒会長も、恋の前では普通の女の子。

織部というのがどんな奴かは知らんが、俺より数段しっかりしてるな。


「で、俺は忘れ物を取りに生徒会室に戻ろうとした所、

 停電が起きてどうするかと思ったら、二人がその、な」

「あぁ、そこで知ったんですね」

「知られたことは恥ずかしいが、ある意味助かった。

 数少ない相談相手になってくれたからな」


このことをサルは知っているんだろうか。

とはいえ学校に殆ど人がいない時のことまでは分からんだろうし、

何の噂にもなってない辺り、流石に無理か。


「時に深沢。結局どうするんだ? まだ言ってないんだろ?」

「……悩みに悩んで、まもなく卒業式だ。

 文化祭準備やその後の件などで色々立て込んだというのもあるが、

 結局は結論を先延ばしにしていただけ。

 この気持ちを伝えるべきか否か、迷っているんだ」


深沢先輩に告白されて断る男なんて殆どいないと思うんだが。

あるとしたら、自分とは釣り合っていないと思って下がるか、

既に付き合っている相手がいるか。


「仮に告白が成功したとしても、しばらくは距離ができてしまう。

 智君の高校生活は始まったばかりだ。

 恋人らしいこともまともにできないというのに、

 彼の彼女というものになっていいのか、という気持ちもある」

(……ふむ)


話を聞く中で疑問が生まれた。多分、雫も同じことを考えてるだろう。

先輩にこんな口を利いていいのかという思いもあるが、ここは一つ。


「深沢先輩。それって『告白しないのは仕方ない』と思う為に、

 理由を探してるだけじゃないですか?」

「なっ!? そっ、そんな訳……」

「青春第一、直情径行、そして単刀直入。有り体に言えばらしくないです。

 勿論、これはとても繊細なお話だとは理解していますけど、

 結局は諦める為の合理化をしてるんじゃ?」

「そんなことは、決して……」

「あー、そういうことか。俺の感じてた違和感それだわ。

 深沢、普段のお前だったら堂々告白してるだろ?」


どうやら茅原先輩も感じていたらしい。

深沢先輩の性格からして、すぐに行動に移さないのはおかしいって。


「たとえどんな結果になったとしても、告白するべきだと思います。

 ボクもずっと臆病なままでいたら……怜二君の隣には居れませんでした」

「そうは言っても、私は彼の恋人として相応しく……」

「それはお相手が決めることじゃないですか。自信持って下さいよ。

 後悔だけはしてもらいたくありません」


逃げ回る深沢先輩の心を、雫は静かに追い詰めていく。

分かっているはずなんだ。実際の所は踏ん切りがつかないだけ。

……本当は、きっと。


「……君達には、敵わないな」

「ということは?」

「私の青春の最後の1ページに、智君への告白を残そうと思う。

 送別会を企画してもらっているようでな、その終わりになら呼べるだろう。

 そこで全てを伝える」


心残りがあるまま終わる方がずっと辛い。だが、自信が持てない。

かつての俺と似た気持ちを、この天下無双の前生徒会長も持っていた。

周りから見たら甚だしいぐらいに杞憂だし、仮に失恋したとしても、

自分の中で決着がつけられれば、また新たなスタートが切れる。


「決まりだな。じゃ、当日は他の奴連れながら上手く消えるわ。

 そこから先はきっちりやってくれよ」

「あぁ。……皆、ありがとう」


相手の織部とやらは、先輩の想いにどれだけ気づいているんだろうか。

全生徒の憧れの存在から、恋の意味での好意を向けられるなんて。

間違いなく、この世で二番目に幸せな男だろう。


「考えてみると、彼は藤田君に似ているな。

 有能かつ勤勉で、人に寄り添うことができる人間という点で同じだ。

 藤田君が生徒会に入っていたら、私は君に恋したのかもしれんな」

「……怜二君は渡しませんよ!」

「安心しろ。俺はあくまで雫の彼氏だ。

 ということで、生憎そうなった場合は失恋で終わりますよ。

 俺が好きなのは雫だけですから」

「ははっ、違いない。……じゃ、私は私の恋の結論を出しに行く。

 背中を押してくれて、ありがとう」

「うー……」

「むくれんなって。……ほら」

「……ん」


ま、俺を超えることはできないだろうけどな。

女神様の寵愛を一身に受け、やきもちまで焼かれる。

そして、最早人前でも躊躇無く抱きつかれる。

不思議なことに、そんな世界一の幸せ者になれたから。


「弟の言ってたことが分かったわ……マジでバカップルだな」

「それだけ幸せなのだろう。羨ましいものだ」

「どっちも事実ですよ。バカップル上等だし、幸せですし」


呆れながらも苦笑する茅原先輩に、温かい眼差しを送る深沢先輩。

そんな感じで見られるだろうなとは思ってたが、知ったことか。

やきもち焼きな彼女を抱きしめるのは、彼氏として当然だ。


「じゃ、この辺で失礼しますね」

「待った。一つ話したいことがあるんだ。時間はとらせない」

「そうなんですか? ではもう少し……」

「あ、いや……その、水橋君と二人で話したいことなんだ」

「雫とですか?」


相手に雫を指名したということは、女子同士の会話か。

となると詮索は無用だな。茅原先輩も席外すみたいだし。


「ボクは大丈夫ですよ。怜二君は?」

「勿論。じゃ、俺は教室で待ってるな」

「うん」


女子二人で、内緒のおしゃべりか。

気になりはするが、盗み聞きなんて不躾なことはしない。

ゆっくりと待つことにしよう。




――――――――――――――――――――――――――――――




深沢先輩から恋バナが聞けるとは思ってなかった。

けど、ボクと二人で話したいことがあるとはもっと思ってなかった。

一体何の話なんだろう。


「お話って何ですか?」

「彼に告白して、それが成功した場合は必要になる。

 だから、事前に聞いておきたいことがあるんだ」


告白が成功したら、深沢先輩には彼氏ができる。

そうなった時に必要になることか。

デートコースとかは大体怜二君に任せてるし、ボクの趣味は偏ってる。

ロマンチックなスポットとか何一つ浮かばない。

そういうことを聞かれると困るな……それ以外でありますように。


「その……いや、率直に聞こう。

 水橋君、バストアップの為には何をすればいいと思う?」

「えっ!?」


『それ以外』ではあったけど、これは予想外過ぎる!

鞠ちゃんや日下部さんならともかく、深沢先輩がそんなの聞く!?


「男性は胸の大きい女性を好むと聞いたことがあるだろう?

 全員が全員そうであるとは限らないし、

 これでも私はボディラインに一定の自信を持っている。

 だが……ここに関してはご覧の通りだ」


長身でスレンダーなモデル体型。非の打ち所の無いスタイル。

だけど、手を置いた場所は……着物がとても似合う感じで。


「そこで、君の力を借りたい」

「なるほど……」


確かにこれは怜二君や茅原先輩の前では話せないな。

ボクもボクでコンプレックスではあるんだけども、

深沢先輩も違った方向でか……


(これといって何もやってないんだけど……)


ほぼほぼ遺伝だからね。

それ以外だと……あ、そういえば宮崎さんに言われたっけ。


「先輩も恋をしてますから、その内大きくなると思いますよ。

 ホルモンの分泌が起これば自然とそうなりますから」


成就してからはなおのこと。規則正しい生活習慣は勿論、

大好きな彼氏がいると、女の子は自然と可愛くなる。

深沢先輩も、きっと。


「そうか……初期値と成長曲線に大きく差があるが、

 私も人並み程度にはなるだろうか」

「なりますよ。あとは豆乳飲んだりとかはいかがですか?

 勿論、バランスのいい食事をするのが前提ですけど」

「元より生活習慣はきちんとしてるよ。それでこの様だがな」


自分にとってのコンプレックスが武器になるのはよくあること。

恋は女の子を素敵に変えちゃう魔法だからね。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 深沢さん、キミ壁だったのか… 属性多くない? [一言] 更新お疲れ様です(^_^ゞ なんでだろう、深沢さんのほうがヒロインしてる… まあ裏を返すと、それだけ雫と怜次がラブラブ、 ってこ…
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