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24.変わらない想いと、変わった気持ち

1月2日、正月明け。

この日にやることは決まっている。


「おはよう」

「おはよう。お前の分の年賀状置いといたぞ」

「サンキュ」


年賀状の整理。今年は確実に増えた。

ちょくちょく住所聞かれたりもしたしな。


「ひい、ふう、みい……11枚か」


俺が送った枚数とほぼ同じだな。

じゃ、見ていくか。


(男子連中は特徴出てんなー)


陽司のは『謹賀新年』と書かれたシンプルな構成で、

翔のはやたらデカい『あけおめ』の文字が飛び込んできた。

サルのはよう分からん絵が描いてあるが、これは干支か。

でもって秀雅は『HAPPY NEW YEAR!』と来て……


(……スクラッチ?)


『消しゴムで宜しく!』という文字の下には、銀色の何か。

こんな所にもゲーム性を入れてくる辺りは流石鉄人。

5つあるが、とりあえず真ん中を選んでみるか。


「……お」


『大』という文字が出てきた。これはおみくじか。

さてさて、この後に出るのは吉か、それとも凶か。


「……は?」


答えはそのどちらでもなく『根』。

結果、『大根』。この時期は甘みのある、鍋の主役兼脇役。

こういうボケに走ってくるとはな……いや、待てよ。


(他のはどうなってる?)


ボケに走ってるのはこれだけで、他はまともかもしれない。

新年早々、そんなにボケはポンポンと……


(……『大豆』『大名』『大河』『大人』)


全部『大』から始まる言葉で、おみくじ的なものは皆無。

やるとしたら翔かサル辺りだと思ってたんだが、秀雅とは。


(登校日の話題が早速できたな)


他の連中にも同じようなのを送ってるのだろうか。

まぁ、声に出して笑う程ではないけど面白かったよ。

さて、それじゃここからは女子の年賀状か。


(これもまたイメージ通りな)


穂積のは『あけましておめでとう!』がカラフルな文字で書かれていて、

門倉のは『謹賀新年』から定型文が。これはパソコンで作ったか。

古川先輩のもほぼ同じだが、筆ペンで書かれている。

八乙女のコレは……イモ判にあぶりだしか。凝ったな。

そして、雫の年賀状は。


(うん、いいな)


ハートの中に『Happy New Year!』。そして可愛らしい干支の絵。

下半分には『今年もよろしく。大好きだよ』と。……素直に嬉しい。


(俺もこういうこと、書くべきだったかな)


俺が送った年賀状は、どれもこれもシンプルで無難な感じ。

来年は少しは凝ってみるか。……雫のに関しては、文を特に。


(あと二枚だな)


残った年賀状の内、一人は俺からも年賀状を出した。

もう一人は……来るとは思わなかったな。

俺が許可したから、サルから聞けたんだろうけど。


(白崎か……)


俺を本気で好きになってくれた、サッカー部マネージャーの一年生。

あれからもマネージャーは続けているらしいが、どうしてんだろ。

にしても、随分長文の年賀状だな。


『あけましておめでとうございます。先輩のことなので、

 きっと今年も色々と忙しくなるかもしれません。

 らくな気持ちになることも大切なので、誰かの為に

 めくばりや気配りをしたり、色々と悩んだりせず、

 まっすぐなままでいて下さい。

 せんぱいが送る新しい一年が楽しいものであり、不あ

 んや不幸がないことを心よりお祈りします。』


誰かの為に何かをすることは、人として当然のことだ。

だが、俺はその『何か』をし過ぎていたし、その相手も間違えていた。

これからは気をつけ……あっ。


(あいつ……)


文の内容や改行に違和感があるなと思ったら、そういうことか。

これは、そのまま読むものではない。

白崎が本当に俺に伝えたかったことは、多分七文字だけだ。


(まだ、伝わってないからな……)


その一途さは俺以外に向けてくれ。

その方がずっと、幸せになれるはずだから。


(で、最後は)


まさか、深沢先輩からも来るとはな。そして達筆なことよ。

イラストや写真の類の一切無い年賀状の字は、最早習字のお手本レベル。

あの人に弱点は存在しないのか。


(もうすぐセンター試験だし、頑張ってもらいたいな)


ケアレスミスさえなければ9割、いや9.5割は余裕だろうけど。

俺もあと1年しかない訳だし、頑張らなければな。




学生の長期休暇の中では、冬休みは最も短い。

正月から一週間もすれば登校日だ。


「あけおめー」

「あけおめ。秀雅、アレはどういうつもりだ?」

「リア充に大吉なんぞ与えてたまるか!」

「藤やん安心しろ。俺んとこも多分同じ」

「俺は『大豆』だったわ。こちとらたんぱく質は肉派だっての」


やいのやいのと騒ぎつつ、新年の挨拶が飛び交う。

俺と雫みたいなことがなければ、新年最初にクラスメイトと会うのは学校。

もしかしたら、初詣辺りでニアミスしたかもしれないが。


(……で、透は来ないか)


門倉が未だに気にかけてはいるみたいだが、進級できるのかね。

元々成績いい方じゃないし、相当に厳しいだろう。

今となってはクソ程にどうでもいいことだが。


「あけましておめでとう! 雫ちゃん、年賀状ありがとう!」


この明るい声も久しぶり。

そして、今となっては女友達の輪の中には雫もいるし、

新年の挨拶を交わすことぐらい……




「あけましておめでとう、『鞠ちゃん』」




(おぉっ!?)


それどころじゃなかった。

本人が推奨してるから呼びやすいとはいえ、雫が穂積を名前で呼んだ。


「……雫ちゃん!」

「うん……これからは、鞠ちゃんって呼ぶ」

「ありがとう! 嬉しい!」

「わわっ」


雫を抱きしめ、喜ぶ顔には僅かに涙が。

友達としての付き合いは勉強会からだし、喜びも一入(ひとしお)だろう。


(新年を期に、ってとこか)


文句なしの、幸先のいいスタート。

去年とはあらゆることが変わった一年は、楽しくなりそうだ。

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― 新着の感想 ―
[良い点] それぞれの個性が出ている、 ナイスな年賀状ですね✨ [気になる点] 先生が体調を崩されていないかが心配です。 先生がおいくつで、 どういったお立場にあるのかは存じませんが、 無理なく執筆を…
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