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14.一の姉と二の弟

コーヒーを飲み、タイマーを20分にセットして寝る。

カフェインが効いてきた辺りでアラームが鳴るから、スッと起きられる。

これが、俺的には最適な仮眠の取り方。


(雫はどうやってるんだろ)


クレープの全部盛りで事故ったりしない限り、コーヒーは飲まないはず。

仮眠の為に無理に飲むってこともどうかと思うが、

寝起きの悪さは中々にアレだからな……


(必要なら電話入れるか)


寝過ごさなければ、初日の出には間に合う。

それじゃ、20分間は全力で寝……


「たっだいまー!」


響く快活な声は一階から。一瞬で眠気が覚めた。

その理由は声が元気だったからじゃない。……知ってる声だから。


(今年は早ぇな……)


1階へと下り、その存在を目視完了。

実に1年ぶりの対面となる。


「久しぶり、姉貴」

「やぁ弟くん! あけおめっ!」


セミロングの茶髪を揺らしながら、くっきり二重をさらに開いて。

文系学科の大学二年生、俺の姉貴は元日に帰省してきた。


「デカくなったねー。ま、男子三日会わざれば刮目して見よと言うし、

 一年会わなかったらそりゃ変わるか」

「そりゃな。いつ帰ってきたん?」

「ついさっき。ネカフェで適当に時間潰して今に至る。

 今回も無事完売、戦利品も十分!」

「よかったな。で、いつまでいるん?」

「とりあえず4日まではバイトの休み貰ったけど、ノリ次第?

 戦利品の整理とサークルページの更新もしなきゃだし」


大学生も大学生で忙しいのだろう。

姉貴の場合、色々とギリギリでどうにかなってるらしいから、

また違った意味の忙しさなのかもしれんが。


「ところで弟くんや。聞きたいことがある」


手荷物を全てリビングに置いたタイミングで、問いかけが来た。

雰囲気からして、多分去年の時と同じ質問だろう。


「………………」


真顔。一見深刻そうだが、弟である俺は知っている。

こうなった時の姉貴はロクなことを言わない。


「彼女できた?」

「あぁ」

「そうだよね、今年も無事いない歴……へ?」


芝居がかったポーズのまま、停止。

そりゃ驚くだろうよ。地味な弟に彼女ができたなんて聞いたら。


「そうか、遂に弟くんも二次元の世界に」

「俺の彼女は三次元にしかいねぇよ。言っとくがフィギュアでもないぞ」

「……あ、今日は4月の1日か」

「1月の1日。元日だ」

「日付変更線が90周ほどズレて……」

「ボケに地球を巻き込むな」


このままツッコミ続けていたら初日の出に間に合わない。

じゃ、スマホで証拠を見せるか。


「これで分かるだろ?」

「……まさか、二次元からキャラを引っ張り出せる力を!?」

「んなもんあってたまるか」


そう言うのも分からんでもないけど。

容姿端麗、才色兼備、天真爛漫、全部可愛い。

理想のさらに上を具現化した女の子、水橋雫が俺の彼女。

美女と野獣どころじゃない。女神様と石ころぐらいの差があった。

今でこそ、ある程度は隣に立つ男としての自信を持ってるけど。


「うはー、まずこんな二次元めいた美少女が存在することが驚きだし、

 それがどういう因果か、弟君の彼女だなんて」

「色々とあったからな」

「その『色々』を端折らないでもらえるかな。

 挨拶回りもしなきゃだし、昨年のことを洗いざらい吐いてもらおうか!」

「……あぁ、そうだな」


その挨拶周り、一軒増えて一軒減ったんだよ。

その辺についても話しておくか。




「ということで、それから見かけてねぇ」

「なるほどねぇ……思ったよりもディープだったわ……」


両親が就寝した後、リビングで今までのことを話す。

幼馴染の姉ということでそこそこ仲良かったから、驚くのも当然。

今思えば、透は姉貴さえも狙っていたのかもしれない。


「何はともあれ、お疲れしもつかれ」

「しもつかれって何だ」

「栃木県の郷土料理だそうで。なんかゲロっぽい料理」

「県民に喧嘩売ってんのか?」

「それが県民でもわりと通称らしいのよ。ソースは私の友達」


姉貴の言うことだから話半分にはしておくが、栃木の皆さんごめんなさい。

こいつは結構スルっと悪口言えてしまうタイプなんです。


「弟くんもずいぶんカッコよくなったもんだね。

 雫ちゃんにとったら、モロに白馬に乗った王子様じゃないのさ」

「そんな洒落たもんじゃねぇよ」

「確かに似合いそうなのは三輪車だけど」

「せめて二輪か四輪にしてもらえねぇかな」


免許持ってないから、乗れるとしたら自転車だが。

そして路面が凍ってる季節に二人乗りは危ないし怖い。


「それじゃ、幸せのお裾分けにお年玉などもらえたり」

「弟にたかるな。そもそも姉貴は二十歳だろ?

 貰えると思ってんのか?」

「そっか。お姉ちゃんの場合はお年賀って言うのか」

「生まれてこの方、姉貴を目上だと思ったことはねぇよ」

「なんと。我、弟より3歳年上の姉ぞ?」

「年上と目上は違うっての。姉貴は俺の年の頃何してた?」

「腐女子とか夢女子とかしながらいない歴=年齢同士で傷の舐め合い」

「それを踏まえて?」

「完敗です本当にありがとうございました」


何でうちの姉貴はこうも面倒なのだろうか。

別に悪い奴って訳じゃないんだけどさ。

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― 新着の感想 ―
[一言] しもつかれはホントにゲロみたいな料理デスヨ~
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