10.見た目はJK、頭脳はチャラ男
ハンバーガーを食べながら、色々と聞いてみる。
今や俺が何かを支援する意味も必要もないから、単純な興味。
「日下部と随分仲良くなってたけど、修旅で何かあった?」
「特にこれっていうのはなかったけど、いつの間にか。
多分、穂積さんとの繋がりで仲良くなったのかな。
色々いじられたりはするけど、いい人だよ」
(前島翔+岡地勝)÷2×性別変換=日下部梓。
そう考えると、大体のことに当たりがつく。
「実は、今日のデートのアドバイスも貰ってて」
「めっちゃ言ってそう。何て言われた?」
「色々なテクニックとか。でも、実践するつもりはないかな。
ボーリングは軽めのボールで可愛さアピールできるって言われたけど、
あんまり嘘はつきたくないし、ボクの体力はバレてるし」
内容も案の定というか。
どこから拾ってきた情報なのかは知らんが、全くいらん。
「もしかして、ワザと下手なフリしろとかも言われた?」
「うん。けど、怜二君はそういう演技って好きじゃないでしょ?」
「ご名答。例え負けたとしても、本気でやってくれて、
本気で楽しんでくれた方がずっと嬉しい」
「だと思ったから、日下部さんには悪いけど普通にやった」
雫は俺の性格をよく分かっている。
デート用の顔なんて必要ない。ありのままであって欲しい。
既に脱げた仮面をもう一回被るなんてことがあってはならない。
「でも、日下部さんも悪気があった訳じゃないから。
ボクと怜二君のことを思ってのことだろうし」
「それはな。あいつも別に性悪って訳じゃないし」
かといって性格いい訳でもないが。翔と同じく『いい性格してる』タイプ。
だが、得てしてそういうタイプはクラスカースト上位に位置するもので。
周りをグイグイ引っ張っていく存在であるが故に、中心人物になるんだろう。
「それにね、服装のアドバイスは結構参考にしたんだ。
怜二君の好みに合うかどうか分からないけど、女の子らしくしたくて」
「なるほどな。ということで今日は可愛い系だった訳か」
「うん。怜二君と初めて出会った時はボーイッシュ系だったから、
違う面も出していきたいなーって」
「それを間近で見られるのは、彼氏の特権だな」
「えへへ。そして喜んでくれる怜二君を見られるのは彼女特権!」
(いちいち可愛いなこの野郎)
一秒一緒にいる度に、一言言葉を交わす度に好きになる。
つくづく、俺は幸せ者だな……と思っていたら、
雫が少し俯いていることに気づいた。
「……ただ、日下部さんには一個だけやめて欲しいことあるんだよね」
「ふむ、何だ?」
「その、たまになんだけど、その……」
「……あー、うん。OK。そこまでで大丈夫」
「うん……」
手を置いた部分を見て、察しがついた。
雫の魅力の一つであり、最大のコンプレックスである、豊かな胸。
そこに日下部の性格を掛け合わせると……まぁ、そういうことだろ。
「流石に男の子が見てる前ではやらないけどさ。
ボクだけじゃなくて怜二君もいい気分しないだろうし」
「そりゃな。その辺の分別ついてないようだったら手が出てた。
何だったら俺から釘刺しとく?」
「ううん。その、やめて欲しくはあるんだけど、
いつも楽しそうにしてるから、嬉しくもあって……」
「そうか……本当に嫌な時は言っとけよ?」
「うん。日下部さんもやめてって言ったら大体やめてくれるから」
「……大体?」
「……許容範囲だけどね」
友達は、友達としての関係があるだけでは成り立たない。
どういう付き合い方をして、どんなことをしていくかが重要。
益者、損者三友……とまでは堅苦しく考える必要はないが、
ある程度は友達にする人間は選んだ方がいい。
……アレと幼馴染やってた俺が言った所で、説得力皆無だけども。
「男の子の視線だけ我慢してればいいかなって思ってたけど、
まさか女の子からもこうされるとは思ってなかった。
友達って楽しいけど、こういうこともあるんだね」
「完璧な人間なんていないからな。どこかは許す必要はある。
とはいえ、許しすぎても問題ではあるがな」
「怜二君は経験してるからね」
「本当にありがとな、俺を救ってくれて」
「どういたしまして。そして、ボクからもありがとう。
怜二君が変わってくれて嬉しいよ」
思えば、仮面を脱いで素の自分でいたいということと同時に、
俺が変わるということも、半ば雫の望みだった。
そう考えると……恩義ありすぎるな。全然返せてもねぇ。
(これからも頑張らないとな)
雫を惹きつけ、好きでいてもらえる俺であり続ける。
現状維持で満足してたまるか。もっと、カッコいい男になってやる。
そこまでやって、漸く雫の隣に立つのに相応しい男になれるんだ。
「あ、でも怜二君ならいつでもいいよ?」
「何が?」
「怜二君ならいくらでもボクの胸見てもいいし、
二人っきりだったら触っても大丈……」
「この場で言うんじゃねぇ!」
……こういうブッ込みをどうするかという難題がある訳だが。
まぁ……追々で、か。




