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食の都クッキン3

「ここにグアンナが......」


俺とプタハは天の牛、グアンナがいると言う洞窟までやってきた。


プタハからの情報によると、この洞窟はそう長いものではなく、一本道の先に大きく膨らんだ空間があるだけだと言う。


洞窟に足を踏み入れてみると、奥から低い唸り声が洞窟内に響く。


その声にグアンナの存在を確信した俺たちは、気付かれないように息を殺し、洞窟の奥へと向かう。


「なっ!!」


思わず言葉が漏れてしまった。しかし、俺が驚いたのも仕方が無いだろう。目の前にいるのは青玉石で出来た二本の角を持ち、背中に翼の生えた、人間の何倍もの大きさをした牛がいるのだから。


幸いグアンナは深い眠りについているようで、体を横にして寝息を立てており、俺達には気が付いていないようだ。


「どうするんだ? こんな桁違いの大きさだなんて聞いてないぞ」


グアンナが起きないように小声で話す俺の言葉に、プタハは腕を組み考える素振りを見せる。だが、


「狩りはアタシの専門外でね......」


そう言うと、チラリと視線を俺に向ける。


どうやらここに来てノープランのようだ。つまりは丸投げと言うやつだ。仕方がない、何とかしてみるしかないな。


「プタハ、武創(ぶそう)で鎖や足枷は作れるか? まずはアイツの動きを止めないと。あの大きさで暴れられたら一溜りもないだろう」


「わかった。やってみよう」


プタハは先端に輪っかの付いた鎖を四本生成することに成功した。


鎖をグアンナの周辺にある大きめの岩に固定する。そして、反対側をグアンナに取り付けて完成なのだが、


「取り付ける時に起きられたらヤバいな……。プタハ、もしもの為に戦闘準備を済ませといてくれ」


俺の言葉に素直に従うプタハは、武創(ぶそう)を使い、四角箱に六本の長く丸い筒が取り付けられた鉄の塊を生成した。


「それはなんだ?」


見た事がない形状に武器としての性能に疑問を感じ、質問を投げ掛ける。


「こいつかい? こいつはミニガンって言う銃器さ。この六本の筒が回り、銃弾を発射させる優れ物さ」


女性のプタハには似合わない大きなミニガンと呼ばれる銃器に違和感を覚える。


「そんな大きな武器大丈夫なのか?」


「大丈夫、こう見えて案外アタシは力持ちなのさ。それよりも……」


ミニガンを両手で持つプタハは問題ないことを証明する為なのか笑顔を見せる。そして、視線をグアンナの方へ移すと真剣な表情へ変わる。


俺は岩に括り付けた鎖のうちの二本を手に持ち、グアンナの背後へと物音を立てないように静かに近づく。


手の届く距離まで近づくと、グアンナを起こさないようにそっと後ろ足に一本ずつ鎖を取り付けた。


これは生きた心地がしないな……。


一先ず二本の鎖を取り付けた俺は耐え難い緊張感を感じているせいか、安堵の息が漏れる。


「クロウ!! 前!」


プタハの声で咄嗟に視線を正面に向けると、先程まで地面に着いていた頭が持ち上がり、その視線はしっかりと俺を見詰めていた。


グアンナの後ろ足は鎖に繋がれてはいたが、近くにいた俺を蹴り上げるには十分な可動域があり、曲げていた足を真っ直ぐ俺に向かって伸ばした。


「なっ!!」


俺は咄嗟に超人化し、顔を守るように両腕を上げ、交差させる。しかし、その衝撃は到底受け止め切れるものではなく、体ごと後方へと飛ばされる。


「大丈夫か!?」


岩の壁に衝突した俺を気遣うプタハに、ゆっくりと立ち上がり、無事を証明する。


それを見たプタハは視線をグアンナに向け、手に持っているミニガンの引き金を引く。それと同時に、重い金属的な衝撃音が幾度となく鳴り響く。


これがミニガンの威力か! これ程までとは……。俺いらなかったんじゃないか?


そう思う程、絶え間なく続く銃弾の雨がグアンナを襲う。元々料理人であり、戦闘スキルを身に付けていないプタハには大きな巨体に無尽蔵に銃弾を撃つスタイルがあっているようだ。


数打ちゃ当たるってやつか。


ひとしきり撃ち終わった頃、辺りは砂埃が舞い、グアンナの姿を目視で確認出来ない状況であった。


俺とプタハは祈るようにグアンナの方を見詰める。


俺たちの祈りは虚しく、グアンナは四本の足でしっかりと、体を持ち上げていた。プタハの攻撃はグアンナの体に幾らかの出血をさせる程度の効果しかなかったようだ。


あれ程の銃弾を食らってこの程度なのか……。


グアンナは低い唸り声を上げ、視線をプタハへと向け、前足で何度か地面を蹴る素振りを見せる。


いけない!


俺はすぐさまプタハの元へと急ぐ。プタハは驚きの表情を浮かべたまま、立ち尽くしていた。


繋がれていた鎖のおかげで、幾秒か時間を稼ぐ事ができたため、危機一髪の所でプタハを抱き抱え、グアンナの突進を交わす。


鎖は引きちぎられ、グアンナが突進した岩壁には角の後であろう二つの穴が空いており、その威力の凄まじさを物語っていた。


あんなの食らったら一溜りもないな……。


「すまない、侮っていた。グアンナがこれ程の魔物だったなんて……」


プタハは一連の出来事で気力を失いかけている。プタハを入ってきた一本道の方に座れせ、今一度グアンナへと視線を向ける。


これは素直に返してくれそうにないな。


怒りを露わにするグアンナは体勢を整えて、今にも向かってきそう形相だ。


「プタハはここで待っていろ」


「しかし……」


「いいから俺に任せな」


俺は刀に手を掛け、グアンナの元へと駆け出す。


「こっちだ、バカ牛!」


グアンナは真っ直ぐに俺へと突進する。それを紙一重で交わす。すれ違いざまに刀を抜き、横っ腹に斬撃を与える。


硬い!!


流石の刀でもグアンナの体を真っ二つにする事は困難なようで、なんとか切傷を付ける程度であった。


小さな傷ではあったが、グアンナの意識を俺に向けるには十分だったようだ。


超人化した俺にとってはグアンナの突進を避け続ける事はそれほど難しくはないが、このままでは埒が明かない。時間が限られている中、そう悠長にもしていられないが現状である。


一度試してみるか……。


再度刀を鞘に収めた俺は、グアンナの正面に立ち、足に力を込める。グアンナは荒い息を吐きながら俺に向かって走り出す。


グアンナが目前まで迫った時、どこからともなく一発の銃声が響き、グアンナの注意が逸れた。


今だ!


俺は足に込めた力で高く上へと飛び上がる。そして、グアンナに飛び乗り角を掴む。すかさずグアンナの頭と角の間に刀を突き刺す。


体の皮膚に比べて、頭はそれほど硬くなく、刀でも十分に突き刺すことができた。


グアンナは悲鳴のような声を上げ、その場に倒れ込んだ。


「倒したのか……?」


グアンナから飛び降りた俺を不安そうな表情でプタハが迎える。


「任せろって言ったろ?」


俺はにこやかな笑顔をプタハに向けた。賭けではあったが、なんとかグアンナを狩ることに成功したのだ。


「さっきはありがとうな」


「えっ?」


「最後グアンナが突進してきた時に銃を撃ってくれただろ? あれでグアンナの注意を逸らせれたんだ。助かったよ」


俺が感謝を伝えてると、プタハは困惑した表情を浮かべる。


「それアタシじゃないぞ?」


「はぁ? いや、ここには俺たち二人しか居ないんだぞ!? 他に誰が……」


「分からない。けど、今はそんな話をしている時間はあまりないね。さっさとコイツを解体しないと」


時計がないので、正確な時間を把握することは出来ないが、午後三時を回ったあたりだろうか。ここから街まで俺の神技を使っても一時間はかかる。午後五時までに戻るためには残された時間はけして長くはない。


「時間が無い、一先ず必要な材料だけ取るよ! まずは頭、角の中には格別な油が入っているらしい。後は腰の付根の方の部位ここが幻の牛肉と呼ばれる部位さ」


「これが幻の牛肉……」


俺はプタハの指示の元、刀を振るいグアンナを解体する。解体した部位をケースの中に収納し、急いで街へと向かった。


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