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二、渚

渚が初登場です。

公爵家のお屋敷 (菜月の部屋)


  「 なんであなたは大事な事を早く言わないのかしらね! 」

 学園でのお淑やかさは欠片も無く菜月は貴子を怒鳴りながら部屋へずしずしと入った。

 「お嬢様、 申し訳ございません。 春香様に口止めされておりましたものですから」

 貴子は菜月の怒りを抑えようとするがこれでは火に油だ。

 「貴さんは私よりもお姉様の方が大切なのかしら?」

 貴子は形だけの謝罪をする。

 「誠に申し訳ございません。 お嬢様のお機嫌が治りましたらお見合の詳細をお伝え致します。 」

 そう言って貴子は菜月の部屋から退出した。(菜月から逃げた)

 菜月は 「あー、今日はツイてない」 と呟きベッドにダイブした。

 菜月はそのまま寝てしまった。


 それから暫くたって菜月は目が覚めた。

 「お嬢様、 夜でもないのにお布団に入ってしまうとお布団が汚れてしまいます。 」

 と、 菜月が起きるとベッドの傍らに貴子がいた。

 「なんでいるの?」

 と菜月が聞いた。

 「お嬢様のお機嫌が治った様なのでお見合の詳細についてお伝え致そうと思いまして」

 「あっそ。 分かったから話して」

 「それではさっそく、

 お見合相手はリゼイン国王子渚様です。 日時は13日午後5時からです。 場所は高千穂公爵家の食堂で、 晩餐を一緒にする予定です。 」

 と、 貴子が簡潔に言った。

 「貴さん、 質問してもいい?」

 菜月がおどけた感じで手を挙げた。

 「どうぞ。 私に答えられることならお答えします」

 菜月は大きく息を吸うと一気にまくし立てた。

 「なんで今日言うのよ?! 貴さんは知らないかもしれないけど13日って明日なのよ! いくら口止めされていたとしても常識的に一ヵ月前には伝えるもんでしょ?!」

 「申し訳ございません。 ですが、 春香様は直前にお嬢様にお伝えすることでお嬢様が悪知恵を働かせる時間を無くそうとおっしゃっておりましたものですから、 私もそうさせていただきました」

 貴子は冷静に菜月の質問に答えた。

 実は貴子の言ったとおり菜月はお見合に関しては悪知恵が働くのだ。

 ある時は見張り番を買収してこっそり逃げたり、 またある時は前の晩に友達の家にに行って帰って来ない、 等など。 (これも、 高千穂夫人が仮病をすぐ見抜くからなのだが)

 しかし、 悪知恵をやるにも準備が必要なのだ。 (買収も当日にやるのは貴子がいるからできない)

つまり、 悪知恵を働かせないように前日に伝えると。

 「なんでこうなるの!?」

 打つ手なしとなった菜月は叫んだ。

 「では、 了承して頂いたということで宜しいでしょうか。 」

 「いいわよ! その場で断れば結婚しなくてもいいし。 」

 菜月は投げやりになった。

 「ありがとうございます。 では、 明日の服装はどう致しましょうか。 」

 貴子は事務的な態度を崩さずに言った。

 「リゼイン国の王子だからカーマル国が恥をかかないような清楚な感じの」

 菜月はぶっきらぼうに言った。

 「かしこまりました。 では白のワンピースでよろしいでしょうか。 」

 「お好きなように」

 「では、 失礼致します。 」

 貴子は菜月の部屋から退出した。


 7月13日 午後5時

 「本日はよろしくお願いします。 」

 リゼイン国王子は高千穂公爵家の食堂で高千穂公爵へ優雅に腰を折った。

 食堂と言っても豪華なことこの上ない。

 木製の大きな楕円形のテーブルに、 背もたれが高い椅子。 テーブルの上には白いテーブルクロスに銀色の燭台、 すぐ近くに一流シェフもいる厨房など…。

 王城にも劣らない、 清楚な美しさがある食堂だ。

「お越しいただき光栄です。 菜月はもう少ししたら準備が整うのでお掛けになってお待ちください。 」

 と、 高千穂公爵が言った。

 王子が椅子に掛けて程なくしてから菜月がドアをノックする音が聞こえた。

 「失礼致します。 」

 食堂に入ってきた菜月は王子にも負けないくら優雅な仕草で腰を折った。

 白いワンピースを着た菜月はさながら妖精のようだった。

 王子は菜月の美しさに目を丸くした。

 「これは…美しいな 」

 「お褒めいただき光栄です 」

 菜月は王子 (渚) の美貌にも驚いたが、 自分の容姿を褒めたことに驚いた。 リゼイン国の王子ならば、 『俺の見合いの相手なのだから美しい女に決まっている』 と思っていても不思議ではない。

 「王子様、 お口に合うかは分かりませんが家のシェフが腕によりをかけて作らせていただきました。 」

 高千穂公爵の言葉を合図に王子が料理に手をつけた。

 「……美味しいな」

 王子は思わず顔がほころんだ。

 その表情で何人の女が堕ちたのか。 そんなことを考えさせるほどの破壊力がある顔だ。

 「食べないのか?」

 王子の笑顔で固まっていた公爵家の面々は王子の一言で我に返りコース料理を食べ始めた。

 それなりに会話も弾み、 デザートも食べ終えると、

  「高千穂公爵、 しばらく2人にしてもらえますか?」と王子が言った。

  「もちろんです」

 高千穂公爵達が食堂を後にした。

 メイドが紅茶を二人に持ってきて、 一礼をしていなくなると、 食堂には二人だけになった。

 王子が紅茶を一口飲み、 息をつくと話し出した。

 「噂以上にお美しいですね」

 「王子様には及びません。 」

 「いえ、 菜月様の方が美しい」

 「王子様、 私に様付はお辞めください」

 「そうか、そういえばお前ははおてんば姫なんだろう?」

 唐突の王子の変わよう、 そして王子の雰囲気に菜月は驚きをとうりこして呆気にとられた。

 「……」

 「おい、 聞いているのか?」

 「…は、 はい。 あの…、 王子様?」

 「なんだ?」

 「これが、 王子様の…その・・・本性ですか?」

 「本性というか、まあ、隠しているように見えるか」

 「あんな綺麗な笑顔がよそ行き…」

 菜月は驚きで思考が停止した。

 「おい、 聞いてるのか?」

 「あ、 はい。 王子様はどうして私がおてんば姫だと思いました?」

 「行動がな」

 「行動?」

 「お前の部屋の見張りを買収した」

 菜月の顔が恥ずかしさで赤面する。

 「見張りから…」

 「聞いた 」

 菜月は赤面から青くなった。

 全部ということは菜月が大声を出していることや、 専属の執事を貴さんと呼んでいることも全部だろう。

 「お前、 朝寝坊は日常茶飯事で執事には怒鳴り散らす。 なのに今はお淑やかな美少女」

 王子は嫌味たらしく言った。

 「これで公爵令嬢なんだろう?」

 「・・・っ」

 菜月の顔が怒りと恥ずかしさで赤くなった。

 「私はお淑やかな人が」

 菜月はその言葉を最後まで聞かずに

 「じゃあ、 なんで私とお見合いなんかしたの! 私の本性を知ったら断れば良かったじゃないのよ!」

 怒りに任せて怒鳴り__逆切れ__した。

 「 せっかくの顔が台無しだな。 」

 菜月はさらに馬鹿にされ、 感情が爆発してしまい

 「それなら早く出ていって! 」

 と言ってまだ一口も飲んでいない紅茶を王子にかけて食堂から出て行った。 扉が”ドンッ”という音をたてて閉まった。

 菜月は部屋でワンピースのままベッドにダイブした。

ご意見、ご要望、不備などがありましたら、教えてください。


次回、菜月はリゼイン国に行きます。

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