十、再開
展開が読めない…。
それなら、いっそのこと家に招いてしまいましょう!
(意味分からんw)
渚が部屋を出て行くと菜月は王に退室するように命じられ、玉座の間をあとにした。
菜月は城の中を早歩きで歩き、王城の正門まで歩くと一息ついた。
まだ、菜月の心臓は緊張でバクバクいっていた。
「良かったわね、菜月。結果的に処罰は受けずにすんだじゃない」
と声に出して、どうにか緊張を解こうとするくらいに。
「菜月、こっちだ」
正門よりも街にでたところで小さな声がした。
菜月は声のした方を向くと、その方向に歩き出した。
「渚」
「どうした?」
「心臓に悪いことしないで」
「何?裏切られるとでも思った?」
「思った。『高千穂公爵令嬢についての話』なんて聞いたときは卒倒しそうだった」
「それはすまなかったな。まあ、おかげで罰を受けずにすんだだろう?」
「まあ…。それで、どうしてきたの?」
「あれをカマール国王に言いにきただけだ」
「私をもらう許可?」
「ああ。それがないと付き合う事はできないからな。まあ、断る事はないとは思っていたがな」
「どうしてそういいきれるの?」
「リゼイン国とカマール国は同盟国だ。小国にとって、大国であるリゼインっこ国守ってもらえる同盟を小さな公爵令嬢で揺るがすほどカマール国王は馬鹿じゃない。それに臣下の争いもなくなるなら一石二鳥だしな」
「臣下が争うってどうして私に関係あるの」
「絶世の美女だったら誰だって自分のものにしたい。しかも公爵令嬢だ。美女じゃなくてもよってたかる無視は多い。だから、国王も頭がいたかっただろうな。何人もの臣下に『高千穂令嬢と自分の息子を結婚させたいので、陛下からも公爵様に進言していただけないでしょうか』って言われるんだから」
「なるほどね。ところで渚は今日帰るの?」
「いや、城の事は兄上に任せたが。明日にでも父上が帰ってくるから兄上もおかしな事はできないだろう」
「じゃあ、家にでも泊まっていく?」
「え…」
渚は思ってもみなかった申し出に目を白黒させた。
「私変なこと言った?」
「いや…そういうことは他の男には言うなよ」
「分かったけど?私あんま男の人に会わないし」
「そうか」
「それで、家に泊まってく?」
「…迷惑じゃなければ泊まる。樹利もいいか?」
「たぶんね。部屋は余るほどあるから。ちょっと待ってて。貴さんに話してくる」
菜月は軽い足取りで王城の正門付近に立っている貴子の方へ行った。
「貴さん、今日王子様を家で泊めてもいい?」
菜月は貴子の前では渚の事を王子様と呼ぶことにしていた。
そうしないと、怒られそうだからだ。
「いいですよ。奥様には私から話しておきます」
「ありがとう。夕食までには帰るから」
すぐに渚の方へ駆け出そうとした菜月を貴子が止めた。
「お嬢様、自分の服装を見てください」
「え?・・・ああ」
菜月は自分の豪華な衣装を見て納得の声をあげた。
「正装で遊ぶのは感心しません。着替えましょう。王子様も誘って、まずは家へかえりますよ。」
「はい」
菜月は渚を誘い、家に帰った。母が玄関先で迎えてくれていた。
母は渚が来ても驚いたり、取り乱したりせずに優雅に腰を折った。
「リゼイン国の王子様お久しぶりです」
「こちらこそ、お久ぶりです。いきなりおしかけてしまい申し訳ありません」
「そんなことはありません。王子様の服は菜月の部屋に用意しておきますが、何かご要望はありますか」
「動きやすくて、豪華すぎないものをお願いします」
「かしこまりました。菜月、王子様と一緒にお風呂に入ってきなさい」
母は言う事だけいうと使用人に指示を出して奥に行った。
菜月は自分の部屋から近い風呂場に渚を案内し、渚は男湯菜月は女湯に入った。(公爵家ほどの家には風呂場がいくつもある)
少しのぼせるぐらいになってからあがると、まだ渚はあがっていなかった。
菜月は髪を拭きながら渚を待った。
程なくして出てきた渚を見て菜月は息をのんだ。
筋肉がついたたくましい体に、まだ濡れている髪。いつもとは違う雰囲気をまとっている渚は、誰よりも美しい男だった。
「待たせてしまったか。いい湯加減だったとお母様に伝えといてくれ」
「・・・ええ」
「ん?どうした?」
不自然にとまっている菜月に渚が言った。
「なんでもない」
「そうか。菜月の部屋にでも行こうか。」
「うん、こっち」
菜月が部屋に入ると母の言った通り、ベットの上に菜月と渚の服が置いてあった。
菜月は一旦渚に出てもらって着替えると、渚が着替え終わるのを待った。
「菜月、この家の広さにしては使用人の数が少ないのではないか?」
二人で貴子と樹利を探しながら渚が言った。
「これもお母様のこだわり。量より質ってやつかな」
「それなら、ここにいる使用人は皆優秀なのか」
「そうじゃないかな。私もよく知らないけど」
「ふーん。なぁ、菜月」
「ん?」
「お腹すいた」
「へ?じゃあ、食堂にでも行く?」
「いや、町で何か食べたい」
「店にでも行くの?」
「食べ歩きはしたい」
「何それ?」
お嬢様の菜月には縁のない言葉だ。
「庶民はよくするそうなのだが、小さいものを町中で買って歩きながら食べる。で、次に食べるものを食べながら探すみたいな」
「よく分からないけど行く?私もあんまり行かないから町のこと分かんないけど」
「行こうと言いたいところだが、樹利に言わなかったらあとが怖い」
渚がやけに真剣な顔で言った。
そこへ、タイミングよく樹利と貴子が来た。
「渚様、これからのご予定は?」
「今からちょっと町に行く」
「そうですか、お供いたします」
「いや、いい」
「かしこまりました。夕食の時間には帰ってくるようにと、高千穂夫人からです」
「え?」
意外にも樹利はあっさり引き下がり、渚は拍子抜けした。
「なんですか?」
「いや、なんでもない」
渚は菜月の手をさりげなく握ると町に向かった。
次回、町に行きます。




