一、菜月の本性?
あまり、自信がありません。がんばります。
毎週日曜日更新予定です。
眠い。
「お嬢様、 起きて下さい」
菜月の執事である菱川貴子(菜月は貴さんと呼んでいる) が何度目であろうか同じことを布団にまるまって動かない菜月に言tった。
「貴さーん、 今日くらいいいでしょ? もう少し寝かせてよ。 」
断固として動かない菜月に貴子は渋々といった様子で
「分かりました。 奥様にはお嬢様は朝食をお食べにならないとお伝えします。」
と言った。 部屋を出ていこうとした ――出ていくふりをした――貴子を菜月は 「待って!」 と止めた。
「起きるからお母様には言わないで!」
と菜月は言うとさっきまで包まっていた布団から飛び起きると急いで着替え始めた。
菜月の本名は高千穂菜月。 高千穂公爵の次女で、 公爵令嬢だ。
高千穂公爵は自分の領地を広げようと今も奮闘しており、 家にいない。 つまり、 今この家のドンは菜月の母なのだ。
菜月の母は優しいが、 怒ると恐い。 この前寝坊したら1週間外出禁止になってしまうだけでなく、 反省文まで書かされた。
1度目だからあれで済んだが、 次はどうなるか分からない。
15分でナイトドレスから制服に着替えた菜月は鏡の前に座り貴子に髪をセットいてもらった。
菜月は母譲りの顔で美人、 そしてスタイルも抜群。 なので、 髪をセットし、 薄化粧をするだけでまるで人形のような美少女になるのだ。
菜月は貴子従えて食堂に行った。
「おはよう、 菜月」
食堂に行くと菜月の母は菜月に一番に挨拶をする。
「おはようございます、 お母様」
菜月は今朝布団に包まっていたことを微塵も感じさせないほど優雅に挨拶をし、 ナイフとフォークを使って朝食を食べ始めた。
「ごきげんよう」
「ごきげんよう」
優雅な挨拶が響く。
ここは、 天花女学園。 別名天使の学園。 広大な敷地に広がるお城のような学園の校舎。 1歩中に入れば上品な空気に包まれる。 誰もが憧れる学園は、 伯爵令嬢以上でいなければ入学ができない。
(貴族にも階級というものがあり、 上から、
公爵 (Duke) 侯爵 (Marquess)
伯爵 (Earl) 子爵 (Viscount) 男爵 (Baron)
となっている)
「ごきげんよう、 菜月」
菜月に声をかけてきたのは真紀、 早苗、 理沙だった。 いつの時代も女子はグループで行動するもので、 高等部になってからはいつもこの3人と菜月は行動している。
「ごきげんよう。 早く教室に行きましょう」
と菜月が言った。
「ええ。 」
理沙が応え4人は教室へ向かった。
お昼の時間のカフェテリア。
春香が菜月に声をかけた。
春香は生徒会長もしていて、 生徒の憧れ、 そして菜月の姉だ。
「ごきげんよう。 菜月、 少しいいかしら?」
「はい 」
と菜月が応え、 席を立った。
菜月は姉が苦手だ。 母譲りなのか小言が多い。
春香が菜月を連れ出した先は生徒会室だった。
「お姉様、 どうされましたか?」
「菜月、 前回の試験はどうだった?」
菜月は (また、 小言…) と思いながらも
「まあまあのできでしたわ」
と応えた。
「まあまあってどのくらいですの?」
「順位は5位です」
尚も聞いてくる春香に、 菜月はぶっきらぼうに答えた。
春香はそれに気づかない振りをして話題を変えた。
「菜月、 あなたにお見合いの話が入ってるわ。 相手は…」
春香を遮って菜月は言った。
「お姉様、 私のお見合いの話は学園を卒業してからという話ではありませんか。 それはお姉様もご存知のはずです。 」
「ええ。 もちろん知っているわ」
菜月は再度春香の話を遮り、
「だったら何故お見合いの話が出てくるのですか」
と怒りを露わにした。 それにも春香は動じずにゆっくりと言った。
「菜月の言っていることも分かるわ。 だけど、 今回のお見合相手がリゼイン国の王子様なの。 だから、 お父様も断れないでしょう?」
春香の言葉に絶句する菜月。
「…リゼイン国の王子様…?」
リゼイン国は大国でカーマルほど豊かな自然はないが産業国として栄えた国だ。 そしてリゼイン国の王子は美貌の持ち主として有名なのだ。
そんな大国の王子が自分と見合いをしたいなど菜月は驚きを隠せない。
春香は菜月の驚きを察しずに先を続けた。
「高千穂公爵家の面目を潰さないように必ず出席するように、 とお父様からも言われていることですからお受け致しますよ?」
春香の生徒会長の威厳か公爵令嬢の血なのか有無を言わせない口調で春香は言った。
菜月は何も言い返せず渋々といった様子で首を縦に振った。
「では、 お見合の詳細は菱川さんに伝えておきますわね」
という言葉を残して春香は優雅に生徒会室から出ていった。
今回は初回なので、いっぺんに二話更新します。