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僕達が、展望台に着く頃には、空の雲は、もうすっかりと無くなっていた。
あるのはまっすぐと夜空に広がる海。
するとまた、動物の大きな鳴き声が聞こえて来た。
ヒューウゥーンッ!
ヒューウゥーン!
鳴き声は、何かと共鳴するように、夜の街空に響き渡り、そして近づいてくる。
そんな時、海の中から大きく胸鰭と、両端は尖った尻尾を動かして来た鯨が、向こうの世界から、こちらの世界にやってきた。
水しぶきを飛ばし、この世界の空を、自由に泳ぐ鯨。
展望台に立つ彼女は、僕に向かってニコッと笑顔で、手を差し伸ばす。
「湊君、向こうの世界へ一緒に行こっ!」
僕はその小さくて柔らかい手を掴んで。
「うん……」とうなずいた。
僕はその時、もう一度、彼女のことを好きになった。