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JK4人の異世界暮らし!  作者: 綿あめ真
東の淫乱魔王とショタ勇者
89/100

悔しがる顔はいつみてもいいですね

 白の学ラン(女生徒用)が導入されてから数日。

 本日も生徒会の時間がやってきた。

 会長と呼ばれることに違和感を覚えつつも仕事をする。


「ユア会長。空中体操部から部費の申請が来ているよ」

「空中体操部ですか?」

「ああ。…そういえばユア会長たちはまだ初等部だったね。優秀だから忘れていたよ」

「ありがとうございまし!」

「うん。それで部活についての説明だけれど…この学校では中等部から部活というものに参加できるようになる。放課後に自分の体験してみたい活動を同じ志を持つ生徒同士で楽しむものだね」

「面白そうですね!」

「うん。その中の1つが空中体操部だね」


 中等部から部活ができるようになるんだ!楽しみ。

 メアちゃんが手を挙げて質問する。


「部費とは何のことでしょうか」

「うん。各部活にはお金が掛からないものもあればどうしても費用が掛かってしまうものもある。例えば…料理研究部があるんだけど、食材を買うにはどうしてもお金が掛かってしまうだろう?」

「そうですね」

「しかし、ここは学校だ。そういった費用を学校が負担しているのさ。それが各部活に与えられている部費だ。この部費の範囲内で部員たちはやりくりしているのさ」


 なるほど。生徒間同士でお金を出し合うと問題が起こりそうだし、いい考えだと思う。


「つまり、その空中体操部は現在貰っている部費は少ないから増やしてほしいと私たちに言っているということでしょうか」

「その通り。流石はメア副会長」

「…」

「なんでボクは睨まれているんだろう?」


 指パッチンしつつメアちゃんを褒めると睨まれるキイロ先輩。

 メアちゃんと相性悪いなぁ。


「こほん。それで話を戻すけど…そういった部費の管理は生徒会が行っている。だからこれから空中体操部へ交渉に行こうか」

「部活を見に行けるんですか!楽しみです!」

「みんなで行くかい?」

「私は行きます!会長ですから!」

「ユアが行くなら私も行く」

「わたくしも部活を見てみたいですわ!」

「みんなが行くなら僕も行こうかな。1人で生徒会室にいても寂しいし」

「では行こうか。場所はボクがわかるから。ついてきてくれ」


 どんな部活なんだろうね!楽しみ!




 グラウンドに向かうと、たくさんの生徒たちが運動をしていた。

 私たちは授業が終わったらすぐに帰っていたから知らなかったけど、こんなに放課後残っている人がいたんだね。


 その中でもかなり特殊な…体操服に白い翼を身に着けた中等部の先輩たちのほうに向かう私たち。


 私たちが近づいてくることに気づいた部員さんがざわざわしている。


「キイロ様だわ」

「ユア会長とメア副会長もいるわ」

「というか生徒会メンバー全員集合しているわ!」


 凄いキャーキャー言われてる…

 そんな話しかけづらい空気を無視してキイロさんが話し出す。


「君たちが空中体操部だね」

「「「「「ひゃい!」」」」」

「部費の増額申請について話したいのだが…部長はいるかな?」

「わ、私です!」

「ちょっとあっちで話そうか。部長借りるね」

「「「「どうぞどうぞ」」」」

「じゃあ行こうか」


 部長さんと一緒に少し離れた椅子があるところに座る私たち。


「さて。改めて副会長のキイロだ」

「会長のユアです!」

「副会長のメア」

「総務のアーシャですわ!」

「書記のマコトだよ」

「空中体操部部長のエイリースです!」

「ではエイリース。部費についての話をしよう。今までの部費では足りなかったのかな?」

「ええと。実は天使の羽が壊れてしまって…それに新入生も入ったので数も足りなくなってしまい、練習に支障が出ているのです…」

「天使の羽…ですか?」


 さっき部員さんたちが体操服に着けていたものかな?


「はい。天使の羽は空を飛ぶことができるようになる魔具です。その数が今10個しかなくて…部員は12人いるのですけど」

「確か空中体操は全員で連携して取り組むものだったね。確かに数が揃っていないと楽しみも半減だ」

「ちなみにその天使の羽のお値段は?」

「これは作れる人がかなり少ないみたいで…あのルコアシリーズの1つなんです。だからお値段も張っていて…1つ金貨10枚です…」

「金貨10枚!高いね!」

「そうですの?それくらいどうってことないですわ」

「アーシャは黙ってようね」

「なんですってぇ!?」

「それであと2つは欲しいから、金貨20枚かー。キイロ先輩。その部費ってどれくらい出せるんですか?」

「他の部活の部費は大体年で金貨1枚~10枚だね」

「そうですかー」


 だとしたら他の部活より倍以上かかっちゃうのか。

 それはどうなんだろう?う~ん。

 ん?ルコアシリーズ?


「ちょっとすみません。ルコアシリーズってなんですか?」

「ん?ルコアシリーズを知らないのかい?ルコアシリーズは、伝説の魔具職人が作っている魔具の総称だね。たまに街に現れては大量の魔具を売りに来て、食料と交換していく人らしい。その品質、技術力、独創性どれもが最高クラスでどのシリーズも高値で売られている。でもたまにしか現れないから伝説になっているね。噂では仙人だとか、魔女だとか、銀髪の美女だとかいろいろ言われている」

「へえー」


 魔具職人で銀髪の美女でルコアシリーズって…

 これもしかして西の魔王のルコアさんのことなんじゃないの?


 もしルコアさんが作っているんだとしたら何とかなるかもしれない。


「あの…」

「なんだい?ユア会長」

「部費を上げなくても、天使の羽が手に入れば問題は解決しますよね」

「はい!それを買うのが目的ですから!」

「でしたら、部費の話は一旦おいてもらってもいいですか?安く仕入れることができないか探りたいので」

「はぁ…」

「何かいい案でもあるのかい?」

「もしかしたら安く手に入るかも…?」

「ふむ。流石はユア会長。ではエイリース。少し時間を貰ってもいいかな?我らが会長がなんとか出来るかもしれないと仰っているからね」

「はい!待ってます!」

「ユアにプレッシャーを掛けないで」

「はは。ごめん。ではこれでボクたちは失礼するよ」

「はい!いつでもいらしてください!」


 というわけで本日の生徒会の仕事は一旦保留になって帰ることに。

 帰り道にメアちゃんが心配そうに私を見てくる。


「ユア。あんなこと言って大丈夫なの?かなり高価なものみたいだけど」

「そのことなんだけど、さっきの天使の羽ってもしかしたらルコアさんが作ったものなんじゃないかなって思ったの」

「あ。ルコアシリーズ…気づかなかった」

「それなら、葵さんに頼めばルコアさんのところに行けるでしょ?そこで直談判しようと思って」

「うん。試してみる価値はある」

「よかった!それじゃあ帰ったらママたちに相談しよ!」

「ん」


 そして家に帰り、居間にママたちとフェル君リルちゃんが揃っていたので早速話してみる。


「「ただいま!」」

「あら。お帰りなさい」

「おかえりー」

「あのね。今日こんなことがあったんだけど…」


 ママたちに今日の生徒会の活動について話す。


「へぇ。天使の羽ね。確かにルコアシリーズはルコアさんが作った魔具のことだね」

「本当!?」

「ええ。私たちも何度か制作に携わったことがあるわ」

「実は天使の羽も芽衣のアイディアだよね」

「芽衣母さんが」

「そうだね~。空を飛びたいなぁ~って夢の人は多いと思うから。この世界ならそれも実現できるかもって思ったの」

「さすが芽衣母さん」

「えへへ~」

「じゃあじゃあ!ルコアさんのところに行きたい!」

「最近遊びに行ってなかったし、いい機会かもね」

「それじゃあ夕食はルコアさんのところの魔王城で食べましょうか」

「お!ルコア姉貴のところか!あそこは広くて好きだぜ!」

「ルコアお姉さまに粗相のないようにしないと…」


 フェル君とリルちゃんは一度ルコアさんと手合わせしてからその恐ろしさに姉さん呼びになっているらしい。私とメアちゃんにはとっても優しい魔王さんなんだけどね。


「じゃあ飛ぶ」

「お願い葵」





 葵さんの転移でルコアさんの城まで移動する。

 移動するといつものように将棋を指しているルコアさんとダハクさんが。


「王手」

「むむう…ちょっと待ってくれ姫!少し前に戻らせてくれ!」

「あほですか?戦場で過去に戻れるなんて甘い考えは捨てることです」

「むむう…あの手がなければまだわからなかったのだが…」

「もっと精進なさい。…おや。誰かと思えば朝日たちではありませんか」

「おお!久しいな!元気にしてたか!?」

「はい!それはもう」

「今日はどういったようでしょう?」

「実はこの子たちがルコアさんに用があるんですよー。ほら。2人とも」


 朝日ママに押し出される。


「えっと。実は…ルコアさんに魔具を作ってほしくて来ました!」

「私の魔具ですか」

「はい」


 ルコアさんに天使の羽についての説明をする。


「ふふ。ええ。確かにそれなら作ることができますね」

「いいんですか?」

「ええ。ですが…タダではあげませんよ?うふふ」


 ルコアさんの目つきが鋭くなる。

 おわぁ…この圧倒的存在感!かっこいいなー!


「なにをすればいいですか!」

「うふふ。元気でよろしい。ではそうですね…私と将棋を指して、勝てばその魔具をあげましょう」

「ルコアさんにですか!それは…」

「ふふ。安心していいですよ。8枚落ちで指しますから。それに2人のうちどちらかが勝てばいいです。受けますか?」

「朝日ママ。8枚落ちって?」

「王と金と歩だけで戦うってことだねー。これは負けられないよ!ユア。メアちゃん!」


 王と金と歩だけ!?それって勝負になるのかな?


「うふふ。遊びですから」

「私から行きます!」

「それじゃあ私は晩御飯の準備するわね。ルコアさん。台所借りるわ」

「どうぞ」

「ダハクの旦那!俺たちまた強くなったぜ!」

「新技開発したよ!」

「ほほう。どれ。見せてみよ!」


 よーし!がんばるぞー!

 ルコアさんの向かいに座る。その両端に朝日ママとメアちゃんが。

 残りのメンバーはご飯を作ったり、模擬戦をしたりするようだ。


「よろしく願いします!」

「はい。よろしくお願いします」


 ものすごいハンデを貰ったんだから、負けるわけにはいかない!


 作戦としては、最初から飛車角を使ってビシバシ攻めてどんどん駒を増やして勝つ!

 そのために広々戦えるように歩は相手に渡してもいい気持ちで攻めよう!


「ふふ。大胆ですね」

「どんどん行きますよ!」


 ルコアさんは駒が少ないから真ん中に集中して戦いたいみたい。

 だったら私はどんどん両端を攻めるよ!


 でも攻めすぎたのか、取られた歩をうまく使われて桂馬を取られてしまう。


「あ!」

「うふふ」


 それからはなぜかあっという間に金銀、角まで取られていつの間にか形勢が逆転していた。


 あ、あれー!?おかしいな…


「うふふ。王手」

「ふえっ!?」


 ど、どうしてこうなった…


「ま、負けました…」

「あらあら。勝ってしまいましたね」

「とか言ってルコアさんめっちゃうれしそうじゃーん!」

「うふふ。勝てると思っている相手をコテンパンにするこの快感…!たまりませんわね」


 うぐぐぐぐぐぐ…くやしーーーーーーーー!!!!!


「メアちゃん。ユアも。作戦会議しようか」

「はい」

「ぐぬぬぬぬぬーーー!」


 どんどん悔しい気持ちが溢れてくる!


「まぁまぁ。ユア落ち着いて。…敗因は何だと思う?」

「いつの間にか負けてたから何が何だか…」

「うんうん。メアちゃんは?」

「中盤で桂馬を取られたこと」

「そうだね。序盤のユアの動きは良かったよ。飛車角を動けるようにして、左右から攻め立てる。これはルコアさんにしてみればかなり厄介。でもユアは攻めすぎたね。桂馬は下げることができないからね。攻めるときは相手の駒の配置をしっかり確認しようね!…それでメアちゃんにアドバイスだけど、飛車角を成り込めつつ他の金銀で上手く攻めて、桂馬で睨みを利かせれば勝てるよ。あとは焦らないこと!相手が何をしたいのか考えること!攻め方はユアみたいでいいと思うよ」

「わかりました」

「うん。頑張っておいで」

「私の仇を取って!!」

「ん」


 メアちゃんがゆっくりと立ち上がりルコアさんの対面に座る。


「うふふ。勝機は見えましたか?」

「絶対に勝ちます」

「楽しみましょうね」


 こうして私の弔い合戦が静かに幕を開けた。




「あらあら。ユアと同じ動きでいいんですか?」

「これはユアの魂(?)」


 なんと序盤は私と全く同じ動きで攻めるメアちゃん。

 メ、メアちゃん!


 でも中盤からは流石に動きを変えてルコアさんのと金(歩を成らせること)を上手く阻止しつつ、王を追い詰めていき…


「参りました」

「はい」


 見事メアちゃんの勝利!


「おめでとうメアちゃん!」

「ありがとう」

「ふふ。負けてしまいましたか。ですが2人とも、たまには将棋も楽しかったでしょう?」

「はい!たくさん考えることがあって難しかったけど面白かったです!」

「うん」

「数手先を読んだり、相手が何をしたいのか考えることは生きる上でも大切なことです。あなたたちはまだ小さいですが…たくさん考えながら生きるんですよ」

「「はい」」

「うふふ。おや。いい匂いがしてきましたね」

「ご飯できたわよー」


 夕陽ママが大量の肉料理を運んでくる。


 それからはいつものみんなに加えてルコアさんとダハクさんと一緒に晩御飯を食べることができて、とっても楽しかった!


 それから夜遅くなって帰る時間になり、ルコアさんが天使の羽を持ってきてくれる。


「とりあえず3つ用意しました。また足りなくなったら遊びに来てください」

「ありがとうございます!」

「ユア。今度は私に勝ってくださいね」

「うー!がんばります…」


 朝日ママとこっそり特訓しよう。

 そう心に決めた。




 それから次の日の放課後。

 空中体操部の皆さんに天使の羽を渡しに行った。


「え!?もう用意できたんですか!?」

「はい。ちょっと伝手があって」

「ユア生徒会長!ずっとついていきます!」

「サインください!」

「握手してください!」

「わぁ!?」


 最後はわちゃわちゃにされたけど…

 人に感謝されるのって凄い嬉しい!


 その日から生徒会長は伝説の魔具職人の友達なのでは…?と学園で噂されることになる。


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ポンコツお姫様姉妹と巡る異世界譚
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