生徒会長戦!その①
王都で最終章になだれ込む前に…
書きたかった学園編を少し盛り込みたいと思います。
なのでしばらく朝日の娘のユア視点でお送りしますのでよろしくお願いします。
時系列的にはシャトールブドーを採りに行くより前からのスタートです。
ユア視点
魔王城への遠征から数年経ち、私たちはよくわからないけどSクラスという新しいクラスに変わった。
でも変わったのは名前だけで、メンバーは1人も変わっていない。
私とメアちゃん。
お嬢様のアーシャとボーイッシュなマコト、ポジティブなアスとネガティブなリブの双子。
いつも寝ているスーちゃん。
この7人でいつも楽しく授業を受けている。
「みんなおはよー」
「おはようございますですわ」
「おはよう。ユア。メア」
「( ˘ω˘)スヤァ」
「あ、またスーちゃん寝てる」
「登校時間はなぜか早いんだけどね」
「噂では学校に住んでいるみたいですわよ」
「それなら納得」
あと来てないのはアスとリブか。いつも通りだね。
あの2人はいつもチャイムギリギリ。早起きすればいいのに。
案の定ユイカ先生が来る直前のタイミングで走ってくる2人。
「セーフ!」
「はあ。疲れた…死ぬかと思った」
「またそうやってリブは大げさなこと言う」
「アスが起きないのが全部悪い」
ギャーギャー騒ぎながら席に着く双子。
本当に顔はそっくりなのにどうしてあんなに性格が違うんだろう?
不思議だ。あ、ユイカ先生。
「全員席に着け。ホームルーム始めるぞ」
「はーい」
「今日は大事な話がある」
なんだろう?
「もうそろそろ生徒会長を決める時期がやってくる。我が白百合学園では生徒会長はその年の学園最強が就任するしきたりなのはみんな知っていることだと思う」
「生徒会長になれば将来白百合騎士団に入団した際に隊長以上の役職が約束されるんですよね?」
「そうだ。そして本来なら高等部の主席が生徒会長に選ばれるのが基本なのだが…今年はSクラスが導入され、そのトップのユア。君が生徒会長にふさわしいのではとの声も上がっている」
「おお!」
「マジすか!」
え?私?
「そこでだ。シンプルに強いほうを生徒会長に任せることになった。高等部の主席であるキイロには了承してもらっている。あとはユアが承諾してくれれば来週にでも会長戦を行うのだが…どうだ?」
そんな急に言われても…?
「ユイカ先生。突然そんなこと言われてもユアが困るだけです」
「む。そうか。すまん。確かにいきなりすぎたか…もちろん断ることもできる。そうすれば通年通り学園主席のキイロが生徒会長になるだけだ。時間はまだあるからちょっと考えてみてくれ」
「わかりました」
「では今日の授業を始める。教科書200P開いて…」
生徒会長かぁ。そもそも何するんだろ?
その日の授業はあまり集中できなかった。
そして放課後。みんなが私の席に集まってくる。
「すごいじゃないですのユア!この学校の生徒会長はとても名誉あるものなんですのよ!」
「全生徒の憧れの象徴だからね。モテるよ」
「あはは。モテたいわけじゃないんだけどね…」
「ユアには私がいるからモテる必要はない。むしろ要らない」
「まぁSクラスになってから僕たちは初等部で大人気だけどね!はっはっは。昨日も子猫ちゃんに告白されてしまったよ」
「猫に?マコトは猫と会話できるの???」
「いや…それは例えで…」
「なんで例えたの?」
「いや…えーと…ほら!スー!もう起きないと!学校終わったよ!」
「( ˘ω˘)スヤァ」
「ねえねえなんで?」
「もうやめたげてよアス…」
「そんなことよりユアは今朝の生徒会長の話受けるの?」
「勿論受けるよね!ユア!こんなチャンス滅多にないよ!」
「う~ん。どうしよう?」
「悩んでいるなら受けるべきだと思うな。僕は」
「ユアのしたいようにすればいい」
「そうだね。考えてみる」
それからお家に帰って、夕食の時間まで悶々と考えてみたけどいまいち答えは出ない。
ぱくぱく。夕陽ママのご飯うまー。
「どうしたのユア?何か考え事?」
夕陽ママが心配そうな目で私を見てくれる。
「うん。今日学校でユイカ先生に生徒会長をやってみないかって言われて…」
「あら。そうなの」
「うん」
「朝日が中学生の時、生徒会長だったわよ」
「え!?そうなの!?」
「そだよー。ちなみに夕陽が副会長」
「懐かしいわね」
「その話詳しく聞きたい!」
ママたちが子供だった頃生徒会長だったなんて!知らなかった!
「いいわよ。と言っても理由は参考にならないと思うわ。朝日が突然生徒会長になるって言いだしただけだから」
「ふふ。朝日ママらしいね」
「当時は生徒会の漫画がたくさんあってね。面白そうだったんだよね」
「朝日はこう見えて優秀で外面もよかったからね。生徒会選挙も圧勝だったわね」
「なんか言い方に悪意あるんですけど!」
「それでそれで、生徒会長はどんなことするの?」
「それがねー。思ってたのとは違ったんだよねー。やることは…行事の時の挨拶とか、ゴミ拾いとか?あとは学校で改善してほしい要望を聞いて直せるなら直したりね」
「そうなんだ!」
「あとはあれだね!一般生徒が生徒会室に来たら生徒会役員は強キャラ感出すごっこ!」
「それは朝日が就任している間だけよ…」
「ぷぷ。なにそれ~」
「就任して生徒会室で最初に言ったことがそれね。かなり恥ずかしかったわ」
「どんなことしてたの~?」
「朝日は人が来るたびに机に肘を置いて手に顎乗せてたわね」
「その私の後ろで目を瞑って佇む夕陽…あはは!」
「朝日がやれって言ったんでしょ」
「強そう」
「他には他には~?」
それからもママたちは楽しそうに生徒会の思い出を話してくれた。
それを聞きながら私は決めた!
「メアちゃん。あとでお話があるの。一緒にお風呂入る時に話すね」
「わかった」
ご飯を食べ終わって、お風呂の準備をしてメアちゃんと一緒に入る。
洗いっこしてから湯船に浸かり、相談する。
「メアちゃん。私生徒会長の話受けてみようと思う」
「…うん」
「高等部のキイロ先輩?に勝てるかはわからないけど…もし私が勝ったら、メアちゃんを副会長に指名してもいい?」
「勿論」
「ありがとう!メアちゃん大好き!」
「私も」
よし!明日ユイカ先生に伝えないと!
「本当か!ユア!先生も嬉しいぞ!」
ユイカ先生に話すと喜んでくれた。
「生徒会長戦は1週間後だからな。その前にキイロと話してみるといい。そうだな…早いほうがいいし、今日の放課後会って話してみるか?」
「わかりました!」
「じゃあちょっとキイロと話しつけてくる」
高等部のキイロ先輩…どんな人なんだろう?
クラスのみんなに聞いても情報は無かった。
そもそも初等部と高等部は距離的にちょっと離れているから直接の交流は滅多にない。たまに行われる全校集会くらいでしか見たことない。
そしてそのまま放課後に。
「キイロは生徒会室で待っているみたいだから、行ってみるといい。場所はわかるか?」
「ええと。わかんないです。あとメアちゃんも一緒でいいですか?」
「構わないぞ。では私についてきてくれ」
ユイカ先生にメアちゃんと一緒についていく。
「ユイカ先生。キイロ先輩はどんな人なんですか?」
「キイロか?あいつは…そうだなぁ。一言でいえばユアやメアと同じ天才型か。ただなぁ…かなり学校をさぼっているから、生徒会長にふさわしいかはわからんな。性格は…マコトに近いな」
「マコトちゃんに」
ボーイッシュな感じなのかな?
「中世的な顔をしているから、生徒には人気だ…ここだ」
ここが生徒会室。
高等部の廊下を通らないといけないからちょっと緊張しちゃうな。
さっきも来る途中で注目を集めちゃってたみたいだし。
「それじゃあ後は3人で話してくれ。それじゃあな」
「先生さよならー」
「さようなら」
「うむ。また明日な」
ユイカ先生が後ろを向きながら手を振ってくれる。かっこいい。
「入ろうか。ユア」
「うん。失礼しまーす」
「どうぞ」
扉を開けると一瞬男の子かと間違うような女の人が座っていた。
確かに人気でそう。短髪で可愛いというよりかっこいい人だ。
笑顔で出迎えてくれる。
「こんにちは。ユアちゃんとメアちゃんで合ってるかな?」
「はい。えと、キイロ先輩ですか?」
「うん。初めまして。ボクの名前はキイロ。高等部の5年生だよ。よろしく」
「初等部5年生のユアです!」
「初等部5年生のメアです」
「君たちのうわさは何度も耳にしているよ。どうぞ座って」
「「はい」」
キイロ先輩と反対側の席に着く。
「それで、今日は顔合わせだよね。確認だけど、ユアちゃんは生徒会長になりたいんだよね」
「はい!まだ初等部の私が変かもしれないですけど…生徒会長になってみたいです!」
「そうかそうか。ボクはね…実はあんまりなりたいとは思ってないんだよね」
「え?そうなんですか?」
意外だ。てっきりキイロ先輩は乗り気なのかと勝手に考えていた。
「うん。一応主席だけどこの話が来て面倒だな~って思ってたんだけどね、ボク以外にも候補者がいるって聞いて正直嬉しかったよ」
「そうだったんですね」
「で、どんな人が候補者なのか聞いたらまだ初等部だって言うじゃないか!それに君たちは高等部でもかなり噂になっててね、いろんな話を聞いて、ボクは君たちのファンになったよ!」
そう言いながらずいっと顔を近づけてくるキイロ先輩。
「入学していきなり先生を倒したって本当かい?あと魔王討伐の遠征にも参加したそうじゃないか!ぜひ話を聞いてみたいな」
「わ、わかりました」
キイロ先輩の初めのカッコよさはどこへ?
今は目をキラキラさせながら私たちの話に耳を傾けてくれる。
それが嬉しくて私たちもすっかり話し込んでしまった。
「おっと。もうこんな時間か。そろそろ部屋を出ないと怒られるかもしれないね」
「今日はお話しできて楽しかったです!」
「うん。ボクもだよ。それで、最初の生徒会長戦の話に戻るけど…最初は辞退しようと思ってたんだけどね。気が変わったよ。是非ユアちゃんと戦ってみたくなった」
「ええ!?」
「まあ理由はいくつかあるんだけど…やっぱり初等部の子が生徒会長をするってなると今の高等部の子で快く思わない子が少なからずいると思うんだよね。実際何人かの子に応援もされたし」
「そう…ですね」
この学園の生徒会長は最強でないといけないらしい。それなのに何も知らない初等部の子がなっても納得してくれない人もいるかもしれない。
「ボクはみんなにユアちゃんを生徒会長として認めてほしいんだよね。そのためにはボクと戦うのが一番手っ取り早いと思う」
「なるほど」
「それに個人的にもさっきの話を聞いて是非手合わせしてみたくなったしね。どうだい?」
「はい!よろしくお願いします!」
「うん。当日はよろしくね!」
「はい!」
結局キイロ先輩とは戦うことになったけど、これが生徒会長になる近道だと私も思う。
だから精一杯頑張ろう!




